WAN経由のバックアップのようなジョブは、夜間に設定しても夜のうちに終わるかどうかは分からない。こうした場合には、トラフィックをスカベンジャークラスに設定すれば、ユーザーの双方向トラフィックに影響を与えないで済む。
現在ではほとんどの企業が、QoS(Quality of Service)でVoIPトラフィックをサポートするように設定している。多くの場合、こうした設定はかなり前から使用されており、その基になっているQoS戦略は、以前の世代のネットワークハードウェアやWAN技術の機能によって制約されている。比較的新しい機器を持っている企業や、古いルータやスイッチをアップグレードする新しいハードウェアを評価している企業は、QoSの新しい動向を押さえておくのが得策だ。そうした動向の中でも最も注目されているものの1つが、「スカベンジャー(くず拾い)クラス」の利用だ。
スカベンジャークラスは、CBWFQ(Class-Based Weighted Fair Queuing)で使われる任意のクラスの1つで、その呼び名は目的に由来している。「スカベンジャー」は実は技術用語ではなく、ベンダーのコマンドラインインタフェースでこの語が使われることはないだろう。スカベンジャークラスは実際には、ルータやスイッチで実装されるQoS戦略の要素にすぎない。
スカベンジャークラスの基本的な考え方は、トラフィックのプロファイリングを行って「正常な」流量を把握し、その正常値を超えるトラフィックをマーキングして、輻輳(ふくそう)が発生した場合に破棄できるようにするというものだ。スカベンジャークラスは、主にワームやそのほかのDDoS(分散サービス妨害)攻撃への対策として利用されるが、用途はそれだけにとどまらない。
また、スカベンジャークラスは、「ベストエフォート以下」などと呼ばれるクラスの例でもある。ご存じかもしれないが、ネットワークの世界では、「ベストエフォート」は「ベスト」というよりも「ワースト」に近い意味の用語だ。つまり、ベストエフォートクラスのパケットは、配送される保証がない。ベストエフォートクラスは一般的に、優先度が最も低いクラスなのだ。このため、それ以下のクラスという概念は、最初は分かりにくいかもしれない。
「スカベンジャークラスを使うと、デフォルトクラスの優先度が最低ではなくなる」と考える方がいいかもしれない。ただし、これは厳密には正しくない。通常、CBWFQ方式では、トラフィックには優先度よりもむしろ重みを設定するからだ。ベストエフォート以下のスカベンジャークラスについて実際に行われるのは、割り当てる帯域の割合を最小限にすることだ。例えば、CiscoはIOSベースシステムに関して、CBWFQで1%をスカベンジャークラスに割り当てることを推奨している。もちろん、帯域の配分方針や、スカベンジャークラスに設定するトラフィックの種類によっては、より多くの帯域を割り当てるケースもあるだろう。
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