高額なアプリケーションメンテナンス料を求めてくるベンダー。予算が限られる企業が、リスクや余計な苦労を避けつつメンテナンスの費用を削減する3つの方法を紹介する。
米市場調査会社Forrester Researchのアナリストらによると、大手ソフトウェアベンダー各社に対して、アプリケーションのメンテナンス価格の引き下げ圧力が強まっている。その背景には、景気悪化のせいで顧客が高額なメンテナンス料金への抵抗を示していることがある。ソフトウェアメンテナンス契約をキャンセルするケースもあるという。あなたの会社と契約しているソフトウェアベンダーがメンテナンス価格に関して柔軟な姿勢を見せないのであれば、そろそろ強気に出てもいいころかもしれない。
経費節減を迫られているCIOたちは、ベンダーとのメンテナンス契約を解約するか、あるいは低価格のサードパーティープロバイダーに乗り換えてもよいと考えるようになってきた。ミッションクリティカルシステムも聖域ではない。SaaS(Software as a Service)などの新しいソフトウェア提供形態が登場したこともあり、メンテナンス料金に対するベンダー各社の従来の硬直的な姿勢は、過去の遺物になりつつある。
アプリケーションのメンテナンスとサポートに関する限り、CIOたちがこれまでソフトウェアベンダーの言いなりになってきたのは周知の事実だ。大抵のベンダーはソフトウェアのアップグレードをサポート契約の中に含めているため、顧客がサードパーティーベンダーの安価なメンテナンスに乗り換えるのは難しい。また、大手ベンダーの多くは、使われていないソフトウェアや一部しか導入していないソフトウェア(いわゆる「シェルフウェア)に対してもメンテナンス料金の支払いを顧客に要求する。こういった余分なライセンスがあればライセンス価格の値引き幅の拡大を要求できる可能性があり、ベンダーとの交渉材料になる。
ベンダーによるメンテナンスのコストを削減する方法として、Forresterのアナリスト、ダンカン・ジョーンズ氏は次のような作戦を紹介している。
重要でないメンテナンス契約を解除し、あなたが“本気”であることをほかのベンダーに示す。この契約解除自体も経費の節減にもなる。契約解除に際しては、5年以内にアップグレードする予定がないので、サポートの必要がないことを明確に伝えておくこと。
「メンテナンス契約を解除したからといって、アップグレードが一切できなくなるわけではない」とジョーンズ氏は話す。それどころか、解除することで、後から新バージョンの新規ライセンスの購入を決めたときに優位に立つことができ、有利な条件の契約につながる可能性もある。「ただし、新バージョンへの切り替えが間近であっても、短期間はサポートなしでソフトウェアを運用できるような態勢を整えておく必要がある」と同氏はアドバイスする。
メンテナンス契約を終了しても問題がないケースとしては、ソフトウェアを社内標準に統一する計画や、レガシー製品を最先端の製品に移行する計画などを進めている場合が挙げられる。実際、ベンダーのメンテナンス契約に柔軟性がないという理由で移行を前倒ししようとしているCIOもいる。あるCIOは、メンテナンス価格を値上げしようとしたベンダーについて「彼らとは基本的に縁を切ることにした」と不満をぶちまけている。
メンテナンスプログラムを徹底的に見直し、節約につながるような柔軟性がないか調べる。具体的には、以下の点をチェックする。
シェルフウェアをメンテナンスの対象外にすることをベンダーが認めてくれるかどうか確認する。ジョーンズ氏によると、それを認めるベンダーもあれば、ライセンスの返却を求めるベンダーもあるという。後者の場合、ライセンス数が減少することで当初の割引率の適用を受けられなくなる可能性もあるが、未使用のライセンスを返却してメンテナンス費用を抑えることで、より大きな経費節減を実現できるかもしれない。
ベンダーが複数のサポートレベルを用意しているのであれば、対象製品のメンテナンス記録を分析し、下位レベルのサポートに移行しても問題がないかどうか確認する。下位レベルのサポートの方が安上がりだ。
各部署がそれぞれ独自にベンダーとメンテナンス契約を結んでいるのであれば、全社的なメンテナンスプログラムに切り替えることによってスケールメリットが得られるかどうか調べる。ベンダーにとっては各契約について個別にサービスを提供し、請求書を作成するのはコストが掛かるため、そのコストを不要にするプログラムに切り替えれば、メンテナンス費用を節約できる可能性がある。
自社で充実したトレーニングを実施し、従業員の教育が行き届いており、作業標準も確立されているのであれば、サポートの問い合わせが少ないことをベンダーに示すことによって、ベンダーからリベートを受けられるようにする。
長期的な見返りをベンダーに約束することによって、ベンダーの契約規定に対する例外を認めさせる。自社の長期的技術戦略がベンダーの技術戦略と強く結び付いていることを示すことは、契約規定の例外を要求する上で有力な主張になる可能性がある(ジョーンズ氏によると、資金不足を訴えても効果がなく、また、1番目のアドバイスと矛盾するように思えるかもしれないが、ベンダーを脅してもあまり効果がないという)。
「例えば、IBM、Oracle、SAPの各社はこの2年間でBI(ビジネスインテリジェンス)製品を獲得し、自社製品の既存ユーザーにこれらのBI製品を売り込むのに躍起になっている」とジョーンズ氏は説明する。ベンダーが新たに獲得した製品を購入する、あるいはそれに移行する意思がある場合、それは「ベンダーの戦略を受け入れる」ということであり、その点をアピールすることによって、メンテナンス契約で有利な条件を期待できる。
また、有名な企業であれば、自社による推薦もベンダーに提供できる見返りとなる。自社のネームブランドを利用して、推薦企業や導入事例になるのを条件にメンテナンス価格の割引を求めるのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
トランプ大統領にすり寄ってMetaが期待する「ごほうび」とは?
Metaが米国内でファクトチェックを廃止し、コミュニティノート方式へ移行する。その背景...
「ファクトチェック廃止」の波紋 Metaにこれから起きること
Metaがファクトチェックの廃止など、コンテンツに関するいくつかの重要なルール変更を行...
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年1月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...