“無関心の経営者”をITに振り向かせる2つのアプローチITを生かす中小企業の組織づくり【第2回】

期待した通りのIT導入効果を出す上で、最も大きな阻害要因となるもの。それは「経営トップの無関心」だ。戦略的IT化を推進する組織づくりの鍵となる経営者を、ITに関与させるにはどうすればいいのか。

2010年07月27日 08時00分 公開
[増岡直二郎,nao IT研究所]

 大きな効果を期待して導入するITシステムだから、できるだけ早い時点からその運用を軌道に乗せ、所期の効果を上げたいと願うのは、企業としては当然のことである。特に中堅・中小企業にとっては、IT投資を寸分たりともムダにしたくない。

 ところが、せっかく導入したシステムが十分稼働せず、所期効果を出し切れていない場合が多過ぎるのが実態だ。そうしたことは、IT導入後に分かっても無意味である。IT導入を考えた時点から、導入効果の実現を阻害する要因を取り除き、成功のための要因を押さえておくべきだ。

小規模企業ほどITを生かし切れていない実態

 ITを生かし切っていない中小企業の実態は、まず諸統計から垣間見ることができる。ITシステムを導入したが、企業規模が小さくなるほどITを生かし切っていないことが、例えば中小企業白書の情報システムの社内外連携状況から見ても分かる(下表を参照)。

情報システムの連携状況(単位:% 社外連携ができている/できていない企業の割合、カッコ内は社内連携を実施する企業の割合)
企業規模\連携状況 大部分連携 一部連携 連携せず ITを導入していない
20人以下 4.6(10.1) 22.2(19.1) 20.7(21.1) 52.6(49.8)
21〜50人 4.9(19.3) 35.5(33.8) 32.6(25.9) 26.9(21.0)
51〜100人 7.2(26.8) 41.1(39.5) 33.2(19.8) 18.5(13.9)
101〜300人 6.4(38.6) 52.6(41.2) 30.1(14.8) 10.9(5.3)
300人以上 10.2(61.9) 60.8(31.1) 24.7(5.7) 4.2(1.2)
(出典:「中小企業白書2008年版」中小企業庁編、記事中のデータはすべて同様)

 一方、中小企業に対して「IT活用の目的と効果」をアンケート調査した結果によると(複数回答)、「十分な効果があった」「やや効果があった」の合計で第1、2位が「業務の迅速化」の81.6%、「社内情報の共有化」の71.4%だった。ただ、肝心の「人員削減」効果については「十分効果があった」のが3.3%で、「やや効果があった」を加えても24.5%と、いずれも回答項目中最下位だ。これは、IT導入による定性的効果は認めるが、定量的効果はないということを意味する。だが中小企業は、業績に結び付く定量的効果こそ期待しているのではないだろうか。

 さらにリポートを読んでいくと、「利用しているシステムが業務の要望を十分に取り入れたものであるか」については「十分に取り入れている」がわずか16.6%、対して「十分とはいえないが取り入れている」が67.1%に上り、従業員規模が小さい企業ほど取り組みが不十分ということも示されている。これでは、IT導入効果を期待できるわけがない。

 アンケート調査から中小企業ではIT導入効果が不十分であることが分かったが、それではIT導入効果を十分に期待できる要件は何か。調査では「IT化成功要件」として、次の3点が挙げられている。

  1. 経営戦略に基づくIT化企画の立案(現実には「経営計画で明確に予算付けられ、計画的に投資」している企業はわずか6.5%、していない企業は89.3%にも上る)
  2. 経営者のリーダーシップと推進体制の構築(現実には「情報化の責任を現場の責任者に任せている」が34.6%もあり、IT部門を設置する企業はわずか15.9%)
  3. ITガバナンスの醸成(IT化計画を立てていない企業が約70%、ITサービス基準を作成していない企業が80%強もある)

 一方、IT化を経営の最重要課題としているとITの効果があり(ありとする企業は89.7%)、業績も向上する(売上高増の企業は45.9%、経常利益増の企業は28.9%)傾向にある。しかしIT化を経営の重要課題とする企業は、従業員20人以下の企業で42.1%、301人以上の企業では83.1%と、規模が小さいほどIT化を重要視する度合いが低くなる傾向にあるデータも示されている。

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