“脱Excel”か“活Excel”か
古参Excelユーザーほど新しい関数を知らない? 便利な新関数をおさらい
「Office 365」の普及が進めば、最新バージョンの「Microsoft Excel」利用者も増える。そうなれば「互換性のために古い機能を使う」場面は減る。「Excel 2007」以降に追加された代表的な関数をおさらいしよう。
「Excel 2007」以降は大きな変化のないMicrosoft Excel
「Microsoft Excel」(以下、Excel)は、1985年の登場以降、何度もバージョンアップを重ねています。直近では2018年10月ごろ(国や地域によって異なる)にサブスクリプション型の「Office 365」を契約しているユーザーに対して「Excel 2019」の提供が始まり、2019年1月には国内向けにパッケージ版も発売されました。
Excelが企業で本格的に使用され始めたのは、1995年に「Windows 95」と同時発売となった「Excel 95」からでしょう。Excel 95からExcel 2019までに何度もバージョンアップをしています。この中で特筆すべきは「Excel 2003」から「Excel 2007」へのバージョンアップで、過去最大ともいえる変更が加わりました。まずExcelファイルの保存形式が「XLS」(拡張子:. xls)から「XLSX」(拡張子:.xlsx)に変更されました。さらに、Excel 2003は最大で6万5535行までのデータまでしか扱えませんでしたが、Excel 2007は一気に100万行以上のデータを扱えるようになりました。画面の外観も劇的に変化し、Excel 2019まで使用され続けている「リボンUI」が採用されました。
一方で他のバージョンアップは、さまざまな改良が加わったり機能が追加されたりしているものの、Excel 2003からExcel 2007へのバージョンアップほどの変化はありません。そのため、われわれユーザーは、Excelのバージョンが変わっても、操作性や機能の変更にそれほど困ることなく新しいバージョンのExcelを使用できます。ところが、困らずに利用できてしまうが故に、新しく追加された機能の使用に消極的になることがあります。Excelは長年使用されてきたからこそ、ユーザーそれぞれが自分に合った使用方法を習慣として身に付けてしまっており、それも新しい機能の使用には消極的になる要因となります。
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関数はバージョンアップごとに追加されている
とはいえ、バージョンアップで追加された機能は、さまざまなユーザーからのフィードバックを基にしてExcelに実装されたはずです。使用することで業務が効率的になることも多いのです。特に関数は、バージョンアップのたびに新しいものが追加されています。例えばExcel 2007では10個以上、「Excel 2010」では20個以上の関数が追加されました。
これだけ追加された関数があると、全ての関数の機能を覚えて使いこなすのはかなり大変です。ただし、追加された関数の中には、専門家が使うような統計関連の関数や、エンジニア向けの関数も数多く含まれています。そこで一般に使用頻度が高いと考えられる、代表的な関数に限定すると、以下のようになります(表1)。
| バージョン | 関数名 | カテゴリー | 代替可能な関数 | 使用用途 |
|---|---|---|---|---|
| Excel 2007 | COUNTIFS | 統計 | COUNTIF | 複数の検索条件に一致するデータの個数を計算する |
| AVERAGEIF | 統計 | AVERAGE | 指定した検索条件に一致するデータの平均を計算する | |
| AVERAGEIFS | 統計 | AVERAGE | 複数の検索条件に一致するデータの平均を計算する | |
| SUMIFS | 数学・三角 | SUMIF | 複数の検索条件に一致するデータの合計を計算する | |
| IFERROR | 論理 | ISERROR | 条件式の結果がエラーとなる場合、指定の値を返す | |
| Excel 2010 | AGGREGATE | 数学・三角 | SUBTOTAL | 指定した集計方法でデータを集計した値を返す |
| Excel 2013 | FORMULATEXT | 検索・行列 | なし | セルに記述された数式を文字列として表示する |
| IFNA | 論理 | ISNA | 条件式の結果がエラー「#N/A」となる場合、指定の値を返す | |
| Excel 2016、2019(注) | IFS | 論理 | IF | 複数の条件式を順に評価し、評価の結果を指定した値で返す |
| SWITCH | 論理 | IF、CHOOSE | 値を複数の条件で評価し、評価の結果を指定した値で返す | |
| TEXTJOIN | 文字列操作 | CONCATENATE | 区切り記号を入れながら、複数の文字列をつなげる | |
| CONCAT | 文字列操作 | CONCATENATE | 範囲を指定して、文字列をつなげる |
※注:Excel 2016ではOffice 365版のみで提供。Excel 2019からパッケージ版でも使用可能。
バージョンアップで追加された関数の概要
前述の表2を見ると、追加された関数はおおむね次のように分類できます。
- 「COUNT」「AVERAGE」「SUM」「SUBTOTAL・AGGREGATE」といった、データを集計する関数の機能を拡張したもの
- 「IF」の機能を拡張したもの
- 文字列をつなげる関数を拡張したもの
それぞれどのような変更なのか、従来の関数とともに詳しく見ていきましょう。
COUNT系
- COUNT
- 選択した範囲のセルの内、数値が含まれているセルの個数を集計する
- COUNTA
- 選択した範囲のセルの内、空白を除いたセルの個数を集計する
- COUNTBLANK
- 選択した範囲のセルの内、空白のセルの個数を集計する
- COUNTIF
- 選択した範囲のセルの内、指定した検索条件に当てはまるセルの個数を集計する
- COUNTIFS(Excel 2007で追加)
- 選択した範囲のセルの内、指定した複数の検索条件に当てはまるセルの個数を集計する
Excel 2007で「COUNTIFS」が追加され、複数の検索条件を同時に集計できるようになりました。例えば社員データから「男性で、かつ45歳以上の社員数」を集計する場合、基本的にはCOUNTIF関数を使うことはできません。COUNTIFS関数であれば、以下のように記述すれば集計できます。
COUNTIFS(性別データ,"男性",年齢データ,">=45")
変更履歴(2019年8月7日11時00分)
掲載当初、COUNTIFの集計結果とCOUNTIFSの集計結果が一致する例を説明していましたが、集計対象のデータによっては双方の集計結果が一致しませんでした。おわびするとともにこの例を削除し、COUNTIFSの他の使用例を記載しました。本文は修正済みです。
AVERAGE系
- AVERAGE
- 選択した範囲のセルの内、数値が含まれているセルを対象として平均を計算する
- AVERAGEA
- 選択した範囲のセルの内、数値以外の値のセルも対象として平均を計算する
- AVERAGEIF(Excel 2007で追加)
- 選択した範囲のセルの内、数値が含まれているセルを対象として、指定した検索条件に当てはまるセルの数値の平均を計算する
- AVERAGEIFS(Excel 2007で追加)
- 選択した範囲のセルの内、数値が含まれているセルを対象として、指定した複数の検索条件に当てはまるセルの数値の平均を計算する
Excel 2007で「AVERAGEIF」と「AVERAGEIFS」が追加され、検索条件を指定して平均を集計できるようになりました。
SUM系
- SUM
- 選択した範囲のセルの内、数値が含まれているセルを対象として合計を計算する
- SUMIF
- 選択した範囲のセルの内、数値が含まれているセルを対象として、指定した検索条件に当てはまるセルの数値の合計を計算する
- SUMIFS(Excel 2007で追加)
- 選択した範囲のセルの内、数値が含まれているセルを対象として、指定した複数の検索条件に当てはまるセルの数値の合計を計算する
Excel 2007で「SUMIFS」が追加され、複数の検索条件を同時に適用して集計できるようになりました。
SUBTOTAL・AGGREGATE
- SUBTOTAL
- 選択した範囲のセル内の数値を、指定した計算方法で計算する
- AGGREGATE(Excel 2010で追加)選択した範囲のセル内の数値を、指定した計算方法と除外条件で計算する
SUBTOTALは、「SUBTOTAL(集計方法,データ範囲)」といった関数式で記載します。集計方法は1~11の番号で記入し、1は平均、2は個数のカウント、9は合計などとなっています。データ範囲にSUBTOTALがあると、その値を除外して集計します。売り上げデータの集計時に部門や製品別の小計を入れる場合がありますが、SUBTOTALを使用すれば小計の値を気にすることなく合計を計算できます。
AGGRIGATEは、SUBTOTALの上位機能版ともいえる関数です。まず集計方法が、SUBTOTALと比較して8種類ほど増えています。集計方法が増えただけでなく、集計対象からの除外条件を指定できるようにもなりました。利用中のバージョンがExcel 2010以降ならば、SUBTOTALを使用するような場面ではAGGRIGATEを使用した方がよいでしょう。
IF系
- IF
- 条件式の結果に対して、指定した値や計算結果を返す
- IFERROR(Excel 2007で追加)
- 条件式の結果がエラーになった場合に、指定した値や計算結果を返す
- IFNA(Excel 2013で追加)
- 条件式の結果がN/Aエラーになった場合に、指定した値や計算結果を返す
- IFS(Excel 2016/2019で追加)
- 複数の条件式の結果に対して指定した値や計算結果を返す
- SWITCH(Excel 2016/2019で追加)
- 値を複数の条件で評価し、評価の結果を指定した値で返す
「IFERROR」と「IFNA」はそれぞれ、「ISERROR」と「ISNA」の上位機能版ともいえる関数です。ISERRORとISNAは、セルの値が対応するエラーだった場合にTRUE、そうでない場合はFALSEを返します。従って、返した値に応じて、IF関数で表示する値を設定する必要があります。IFERRORとIFNAは、この表示する値の設定まで実施可能なため、関数式を簡略化できます。
「IFS」と「SWITCH」は、IFではできなかった複数の条件を一度に指定できます。IFをネスト(入れ子)して実現していた複数の条件による分岐を簡略化できます。
文字列結合
- CONCATENATE
- 複数の文字列をつなげて1つの文字列にする
- TEXTJOIN(Excel 2016・2019で追加)
- 区切り記号を入れながら、複数の文字列をつなげて1つの文字列にする
- CONCAT(Excel 2016・2019で追加)
- 範囲を指定して文字列をつなげる
「CONCAT」と「TEXTJOIN」は、文字列をつなげる「CONCATENATE」の機能を拡張した関数です。例えば文字列にカンマを挿入しながらつなげたい場合、CONCATENATEの場合は、つなげる文字としてカンマを文字列の間ごとに入れる必要がありました。TEXTJOINは、一度カンマを指定すれば自動的に文字列の間にカンマを挿入して文字列をつなげてくれます。
一方CONCATは、つなげたい文字列をセルの範囲で指定することができます。例えばA1、B1、C1のセルをつなげたいとき、CONCATENATEは「CONCATENATE(A1,B1,C1)」と書きますが、CONCATは「CONCAT(A1:C1)」と記載できます。
チェックを欠かさず積極的に新しい関数を活用することが重要
このようにバージョンアップするたびに、Excelには便利な関数が増えます。最近はOffice 365が企業に普及しつつあるため、旧バージョンのExcelを利用中の取引先企業に配慮して「あえて新しい機能を使用しない」といった対処をする必然性も少なくなってきています。せっかく追加された新機能ですから、バージョンアップ時にどんな関数があるかチェックして、積極的に使用していくとよいでしょう。
このコラムについて
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。
このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介します。
村山 聡(むらやま・さとし)
1971年愛知県生まれ、名古屋大学経済学部卒、中小企業診断士。IT企業在職中に、単一業種においてキャリアを積んでいくことに疑問を感じ、どんな業界、職種でも通用する知識を得るべく中小企業診断士を取得。複数社を経て、現在の勤め先にて、コンサルタントとして、データを活用した業務効率改善に取り組む。
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“脱Excel”か“活Excel”か
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」(以下、Excel)。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。 このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介していきます。
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