「今度こそ脱Excel」を狙った業務ツールは、コスパで選んではいけない“脱Excel”か“活Excel”か

「Microsoft Excel」で作った独自ツールをやめる代わりに別の業務ツールを導入しよう――そうしてシステム選定を始めるとき、投資対効果を優先して選ぶと失敗のもとです。その理由は?

2019年02月25日 05時00分 公開
[村山 聡]

投資対効果の基本的な考え方

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 企業の持つリソースは「ヒト、モノ、カネ」です。企業経営において、これらのリソースをいかに最適に配分して企業を維持し、成長させていくかが、企業の経営戦略の根幹ともいえます。企業を維持するために、現在企業に所属するヒトや、所有するモノを維持していくには、カネが必要です。一方で、企業を成長させていくためには、新たなヒトの採用やモノの購入が必要であり、当然ながら、こちらにもカネが必要です。つまりヒト、モノ、カネの中でも、ヒトとモノを最適に活用するために、カネをいかに配分するかが最も重要になってきます。とはいえカネは無制限に出せる訳ではありません。従って、カネの配分を決定する経営層にとって、企業を維持するために使用するカネはできるだけ抑えたいと考えますし、企業の成長に使用するカネはどれだけの売り上げと利益を得ることができるかを重視します。

 維持費用を抑えるためには、適用範囲が大きく、その効果の大きい施策が優先されます。なぜなら、実際に費用を削減できるかどうかが、投資前からほぼ判断可能であるからです。一方で企業の成長については、経営層の方針に大きく左右されます。どれだけ事前に調査を実施、緻密に計画を立てたとしても、計画通りになるとは限らないからです。成長速度より、安定を重視する経営方針であれば、投資に慎重になり、投資額を抑える傾向が強くなります。逆に成長速度を重視するようであれば、投資に積極的になり、投資額を増加させる傾向が強くなります。

 もちろんIT設備に関しても、カネの配分については上記のような傾向が当てはまります。ただしITの進歩の速さに起因するIT業界ならではの特徴もあります。

 1つ目は、IT業界のトレンドに追随することが投資の目的になりやすいことです。例えば近年は、人工知能(AI)技術がIT業界のトレンドになっています。ただしAI技術によって自社のビジネスをどのように成長させられるのか、またはどのぐらい維持費用を削減できるのかを十分に予測できるわけではありません。AI技術のビジネス活用は、まだ始まったばかりだからです。当然、投資に対して十分な効果が得られる可能性は決して高くないでしょう。にもかかわらず「ITのトレンドに乗り遅れたくない」という心理によって投資をしてしまうことは、決して少なくありません。

 2つ目は、十分に成熟した製品やサービスについては、新たなデファクトスタンダードとなる製品やサービスが登場するまで、投資が抑制されがちになることです。ベンダーは定期的に新しいバージョンの製品を投入し、以前の製品のサポートを一定期間で終了するなどの施策を実施することで、買い替えを促します。製品の登場当時はまだ荒削りなため、バージョンが上がるにつれて不具合や不便さが解消されたり、今までできなかったことが可能になったりするなど、具体的なメリットを実感しやすいはずです。一方でバージョンアップを重ねて成熟すると、目新しい改善点や新機能がだんだんと少なくなり、バージョンアップに意味を見いだしにくくなります。こうなるとユーザーは、新バージョンによる機能強化よりも維持費用を抑えたいという心理が強く働くため、強化された機能よりも価格を重視しがちになります。

脱Excelの目的とは何か

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