“脱Excel”か“活Excel”か
Excelがあまり得意でない中堅社員が、明日からでもExcelを学ぶことに意味はあるか?
職種によってはMicrosoft Excelの業務利用は必須ではなく、中堅社員でもそれは同様です。それでもExcelの学習は無駄にはなりません。特にVBAによるプログラミングは、IT導入に関与するとき大いに役立ちます。
組織によって年齢構成はさまざまですが、いわゆる年齢構成グラフの形状が「ピラミッド型」(年齢層が高いほど人数が少ない)や「釣り鐘型」(30~40代にボリュームがあり、若手と中堅の人数比率がそれほど変わらない)になっている組織で、「中堅社員」と見なされる世代が40代です。2018年現在における40代の代表格といえば「団塊ジュニア」と呼ばれる1971~1974年生まれです。近年では20~30代従業員の比率が相対的に減少し、40代従業員が最も多い企業も珍しくありません。このような人員構成では中堅社員でも、ポストの空きがなくて管理職にならない人が一定数存在するでしょう。そうはいっても20年以上社会人としてさまざまな経験をしてきた中堅社員は、企業の重要な戦力であることに間違いはないでしょう。
40代といえば、エンドユーザーが直接的にシステムを利用する「エンドユーザーコンピューティング」(EUC)が叫ばれ、1人に1台PCが支給され始めた1990年代後半ごろに企業に就職した世代でもあります。まさにITの進化とともに経験を重ねてきた世代といえるでしょう。この世代には、若い頃、必死に「Microsoft Excel」(以下、Excel)の使用方法を覚えた人もいれば、職種によってはExcelをほとんど使用することなく、中堅社員と呼ばれる年代になった人もいると考えられます。
Excelがあまり得意でない中堅社員は、今からでもExcelを本格的に学ぶ必要はあるのでしょうか。
企業の年齢構成の変化が中堅社員の立ち位置を変えている
本稿でいう「Excelを本格的に学ぶ」とは、Excelの帳票に入力したり、データを基に簡単な集計をしたり、グラフを作成したりするような、いわゆるエンドユーザーとしてのスキル習得のことではありません。複雑な関数を使いこなしたり、マクロ言語のVBA(Visual Basic for Applications)を駆使したりすることで、Excelツールを作成できるレベルのスキル習得を指します。
中堅社員は、管理職であるかどうかにかかわらず、部門内で年下の社員に対して指導や教育の役割を求められるケースは少なくありません。前述したように20~30代の従業員数は、以前のように多いわけではありませんし、働き方改革が叫ばれる中、残業を前提とする仕事量を従業員に課すことも難しい状況になっています。40代に象徴されるような「組織の中堅社員」には、効率的な仕事の仕方を考え、部門内の若手の能力を把握した上で、適切な量の仕事を与える働き方が求められているのです。
特に働き方改革を進めていく中で特に効率化を求められるのが、業務としては必要だけれど企業としての価値に直結しない仕事、いわゆる事務作業です。こうした事務作業ではExcelを使用することも多いでしょう。こうしたExcelを使う事務作業の率先した効率化も求められます。
IT導入プロジェクトにおける中堅社員の役割
また中堅社員になると、さまざまな部署が関わるプロジェクトに主要メンバーとして参画する機会が多くなるものです。プロジェクトとは一般的に、企業の抱える課題に対して組織横断的にメンバーを収集し、解決を図る一時的な体制のことを指します。解決の手法としてITシステムの導入が目的になることも少なくありません。このようなプロジェクトでよく起こる失敗は、ITシステムを使用することになるユーザー部門がITシステムについて深く理解していないために、無理な機能を要求し、納期の大幅な遅延や費用の高騰を招いてしまうことです。
企業で使用するITシステムは、企業のさまざまな業務に応じた多種多様な機能が必要となります。そうした機能を一から作り上げていくことは大変な労力が必要です。そのためパッケージソフトや、あらかじめ業務に必要な機能を用意した専用の業務システムをカスタマイズして使用するケースがほとんどです。それでも企業固有の必須機能が実装されていなかったり、逆に不要な機能が存在したりする場合もあります。業務用のITシステムはただでさえ多機能なために、こうした機能の過不足は使い勝手の悪さにつながり、ひいてはユーザー部門の不満につながっていきます。このような「使い勝手に不満があるITシステムを日常業務で使わされている」と考えているユーザー部門にとっては、実際は実現が困難な機能であっても、何とか実現してほしいという切実な思いがあるため、無理な要求をしてしまうことにつながってしまうのです。
実はこのような事態を回避するためにもExcelの学習は役立ちます。ExcelのVBAはプログラミング言語です。多人数が同時に使用するITシステムの開発に使われているプログラミング言語とは比較になりませんが、VBAを学ぶことでシステムがどのように動くかについて理解することはできます。こうした経験がユーザー部門としてITシステム導入プロジェクトに参加したときに生きてきます。ユーザー部門の要求がシステム的に困難かどうか、開発側の回答が妥当かどうかを、ある程度判断できるようになり、ユーザー部門と開発部門の橋渡しとしての役割を担うことができるからです。こうした調整役はまさに中堅社員が担うべきだといえます。
Excelをどうやって学ぶべきか
では、どのようにExcelのVBAを学べばよいのでしょうか。プログラミング言語を習得するには、とにかく何らかのツールを完成させることが近道です。しかしほとんどの場合、中堅社員はExcelで何らかのツールの作成を依頼されるような立場ではありません。
そこでお勧めするのは、ポーカーなどのカードゲームをプログラミングすることです。カードゲームはルールが簡単で誰でも覚えやすいので、やりたいことを起点にプログラミング技術を覚えることができます。特にポーカーであれば数字や絵柄の組み合わせで役が決まるので、条件分岐の考え方を学ぶことができます。また、ルールが広く知られているゲームでもあるので、家族に画面表示や操作方法などを試してもらい、フィードバックを得ることもできるでしょう。
2020年度には小学校においてプログラミング教育が必修となります。このことからも分かるように、今後も人とITシステムの切っても切れない関係は続いていくと考えられます。本格的にエンジニアを目指す必要はもちろんありませんが、Excelを学ぶことを通じてITシステムへの造詣を深めておくことは、中堅社員にとって、決して無駄にはならないでしょう。
このコラムについて
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。
このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介します。
村山 聡(むらやま・さとし)
1971年愛知県生まれ、名古屋大学経済学部卒、中小企業診断士。
IT企業在職中に、単一業種においてキャリアを積んでいくことに疑問を感じ、どんな業界、職種でも通用する知識を得るべく中小企業診断士を取得。複数社を経て、現在の勤め先にて、コンサルタントとして、データを活用した業務効率改善に取り組む。
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“脱Excel”か“活Excel”か
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」(以下、Excel)。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。 このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介していきます。
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