マイグレーションの問題点を解決できるか?
Office 365への移行をサポートするサードパーティー製品が登場
「Office 365」へ移行するためのサポートツールが出始めた。しかし、オンプレミスアプリケーションとクラウドが共存するハイブリット環境では、Office 365のメリットが損なわれる恐れがある。
米Microsoftは2011年4月18日にOffice 365の最初のパブリックβをひそかにリリースしたが、これを受けて、一部のソフトウェアメーカーから、オンプレミスアプリケーションと大量のデータセットを新しいサービスベースのプラットフォームに移行するための製品がリリースされている。
米Quest Softwareや米MetaVis Technologiesなどのソフトウェアメーカーが提供するこれらの製品は、さまざまなマイグレーション関連の問題についてMicrosoftから対応策が出されるのを待ち続けているIT企業に歓迎されている。
あるシステム管理者は、自分が管理している施設ではExchange Serverにかなりの投資をしているが、ハードウェアの老朽化が進んでいるため、早めにサーバを統合してOffice 365に移行したいと明かす(Exchange Server管理者のOffice 365移行準備に関しては関連記事「『Office 365』で変わるExchange管理者の役割」を参照してほしい)。また、米国の大手の銀行でシステム管理者を務めるユージーン・リー氏は、「Microsoftが提供している無料の(マイグレーション)ツールでは不十分なので、使えそうなプログラムがあれば検討する」と話している。
移行に着手する際、IT企業は主として製品を共存させるための技術を探す。リスクを抑え、ユーザーの生産性を削ぐ中断を少なくするためだ。
Office 365への移行事例
「Office 365のような技術に関してどのようなソリューションを選ぶとしても、共存は重要な要素だ」と米国のある運送会社のCTOは言う。「これは、オンプレミスアプリケーション間で移行を行う場合と何ら変わりはない。あるユーザーグループが一斉に、社内の他のユーザーと数週間も通信できなくなるような事態は許されない」
Quest Softwareの新製品は、Office 365への移行の他、オンプレミスのExchange ServerとSharePoint Server、Lotus Notes、GroupWiseとOffice 365との共存をサポートする。また、移行前の評価を実施し、目標とする環境をより正確に計画することも可能だ。従って、例えば移行が必要なメールボックスとアプリケーションのみを移行でき、時間、費用、労力を節約できる。
「共存の課題は、同期した情報を移行プロジェクトの期間中、常に同期された状態に保つことだ」とQuest SoftwareでActive DirectoryおよびExchange Server/電子メールマイグレーション関連の製品マネジャーを務めるロン・ロビン氏は話す。「移行中であっても、ユーザー間で予定を組めなければならない。また、メールのリダイレクト設定を最新の状態に保ち、Office 365への移行中に複雑な手順を踏まずにメールがオンプレミスユーザーに再ルーティングされるようにする必要がある」(同氏)
またMetaVis Technologiesも、クライアントのクラウドへの移行支援製品であるMetaVis Migrator for Office 365の無償版をリリースしている。このソフトウェアでは1ライセンスで、SharePoint Server 2003/2007/2010、BPOS、ExchangeパブリックフォルダーまたはOutlookのコンテンツ1Gバイト分をOffice 365 SharePoint Onlineに移行できる。
同社の説明では、MetaVis MigratorはWebベースの技術であるため、移行元のサーバにも移行先のサーバにもエージェントなどをインストールする必要はないという。
QuestでもMetaVisでも、移行の順番としては、まず電子メールシステムを移行し、その後SharePoint Serverを移行することを想定している。また、一部のアナリストも、他のプラットフォームと比べて標準化されている電子メールを最初に移行するのは賢明だと話す。
米Forrester Researchのアナリスト、テッド・シャドラー氏は「電子メールの統合は、ノウハウが確立され、標準化されている。しかし、SharePoint Serverの統合は構造が複雑になることが考えられ、かなり慎重な分析が必要になる」と指摘する。
Office 365マイグレーションの問題点
シャドラー氏によると、IT企業では通常、社内で複数のディレクトリを運用しているため、オンプレミスプラットフォームとOffice 365が関係する統合で最も難しいのはディレクトリ関連の統合だと言う。手間が掛かる可能性はあるとしながらも、アプリケーションをクラウドに移行する前にディレクトリを1つにまとめることをシャドラー氏は推奨している。
「これは簡単に聞こえるが、多くの企業、特に事業所が分散しているような企業では、政治的な要素がかなり強くなり、技術的にも難しい」(同氏)
また、あまり認識されていないが、マイグレーションに伴って発生が予想される問題は他にも幾つかある。カスタマイズしたアプリケーションの移行、共存またはハイブリッド環境でのOffice 365のアップグレード、Office 365へのマイグレーション完了後の多数のExchange管理者の処遇などだ。
まず、カスタムアプリケーションは再配置する場合に問題が起きる可能性がある。QuestでLotus Notesの移行を担当する副社長兼統括マネジャー、ビル・エバンス氏は、システムインテグレーターによってアプリケーションを開発し直さなければならなくなり、労力と費用がさらにかさむことも考えられると話す。
クラウドベースアプリケーションのメリットの1つは、時間をかけずに、しかも、ダウンタイムの発生を避けるため、週末などの時間帯にアップグレードできることだ。しかし、Exchange Server 2010 SP1をはじめ、一連のオンプレミスアプリケーションが共存する環境では、このようなOffice 365のメリットが損なわれるのではないかという疑問の声も聞かれる。Quest Softwareの役員によると、この問題は顧客から指摘されており、マイグレーション戦略の一環で検討する必要がある点だという。
また、技術では解決できない問題だが、Office 365へのマイグレーションが完了した後に、Exchange管理者の役割をどうするかという問題がある。現時点では、どの程度の仕事がExchange管理者に残されるかは不明だ。
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