Windows Phone開発、料金体系、セキュリティ認定……。Windows Azureのロードマップはいまだベールに包まれている。本気でパートナーに参戦してほしいなら、タイムリーな情報開示が必要だ。
米Microsoftは2011年7月半ば、同社のクラウドサービス「Windows Azure」(関連記事:オンプレミスとの連携を意識した「Windows Azure」)を活用したビジネスチャンスに関心を示すパートナーに対して、Azureサービスの計画を積極的に公開していくことを約束した。
Windows Azureパートナーマーケティング担当グループプロダクトマネジャーのデベッシュ・サティアボル氏によると、Azureパートナーに対し、「数週間~数カ月後」にリリース予定のAzure機能やプレミアムサービスについて、詳細なロードマップを提供するという。
Microsoft Worldwide Partner Conference(WPC) 2011の参加者の多くは、Azureの予定がタイムリーに公開されることを望んでいる。Microsoftは意欲的なPaaS(Platform as a Service)プロジェクトを打ち出したが、その大部分はベールに包まれたままだ。本気で開発者をはじめとするパートナーに参戦してほしいのなら、これは良い方法とはいえない。
「ロードマップについての情報公開が不十分だという声が常に耳に入ってくる」とサティアボル氏はこの問題を認め、機密保持契約(NDA)を締結したパートナーに、計画しているAzureの新機能とプレミアムサービスについて、6カ月ごとに新しいロードマップを提供することを約束した。
このような計画中のプレミアムサービスには、IDaaS(Identity as a Service)も含まれる。Azureの場合、具体的には、Microsoftが管理するActive Directoryを利用し、エンドユーザーのドメインディレクトリを同期することになる。これは、オンプレミス、プライベートネットワーク、Azureのパブリッククラウド間でサービスのフェデレーションを確立したい企業にはうれしい話かもしれない。
しかし、WPCのある参加者は、オンプレミスの複数のActive Directoryの情報をまとめてクラウドに渡し、フェデレーションによる認証連携を行うという考えにユーザーは抵抗を示していることを指摘した。
サティアボル氏はこの問題も認めて、「そう、確かに抵抗はある。IDaaS、つまりActive Directoryには、資格情報やアイデンティティーをパブリッククラウドに展開できる能力があると考える必要がある」と答えている。
パートナーにとっては、Azureが重要なセキュリティ認定を受けるかどうかも気になるところだ。そのような認定は、アプリケーションやデータをAzureに展開することへのユーザーの不安を和らげる材料になり得る。
この点については、Microsoftは現在、AzureでのISO 27001、SAS 70、FISMAの取得を目指している。
「認定の取得には2つの要素がある。1つは技術的な処理で、プラットフォーム自体とストレージのレプリケーション方法に手を加えている。もう1つは、認定を受けるための手続きで、これには3~7カ月を要する。これらの認定のうち一部についてはかなりの作業が完了しているので、数カ月のうちには見通しを発表できるだろう」(サティアボル氏)
AzureでのWindows Phone開発については、端末の種類を問わず対応できるように、開発機能を整理しているさなかとのことだ。「Windows Phone用に1つ、ソーシャルゲーマー用に1つというように複数のアクセラレータを提供するのではなく、統一的な開発ができるように、SDKの統合を進めている。SDKにサービスの概念をどこまで取り入れるかを判断しなければならない」とサティアボル氏は説明する。
パートナーにとってさらに気掛かりなのは、Azureの料金体系(関連記事:Windows Azure Platformの無料プランの利用価値総額)とモバイル対応だろう。パートナーがアプリケーション開発に乗り出せる魅力的なプランが示されるだろうか。
この2つの話題については、2011年9月に開催されるカンファレンス「BUILD」(旧Professional Developers Conference)でさらに詳しい情報が提供されると思われる。
Azureは明らかにWPCの参加者の関心の的で、システムインテグレーターとAzure関連のセッションは満席だった。
WPCの内容からすると、「ユーザーはクラウドを導入できる状態にあり、現在のMicrosoftにはこの需要に応える道具がある」ことをパートナーに信じてほしいのは明らかだ。しかし、1年前と状況を比べると、Microsoftの言う「全てをクラウドに」を実現するために必要な作業は大幅に増えているのではないかと見る向きもある。
米Trillium Technologiesの取締役、グレッグ・スタナラッゾ氏は、同社が「Operation Azure」集中トレーニングへの参加を決めたことは、この新しい世界に参入する準備として有効だったと話す。
また、同氏は、Azureの技術関連のロードマップが、より詳しくタイムリーに提供されることの重要性も認め、次のようにコメントしている。「技術スタッフが最前線で、喜んでAzure開発に取り組むためには、Azureとその計画について詳細で正確な情報を直接手に入れることが非常に重要だ」
WPCの参加者の多くは、パートナーの耳に心地よいMicrosoftのメッセージに一定の関心を示しているが、非公式には、Azureの取り組みで本当に得をするのはパートナーではなくMicrosoftではないかという疑念をかねて表明している。
しかし、Microsoft幹部は、オンプレミスのビッグバン導入ではなく、従量制プランのクラウドサービスを評価および導入するユーザーが増加していることから、業界全体、つまり、ベンダーもパートナーも同じ戦場にいると語気を強める。
Azureのマーケティングディレクターを務めるプラシャント・ケトカー氏は、「ライセンスモデルは変わってきている。Windows Serverを販売する方法と、Windows Azureを販売する方法は異なる」と話す。
「これは厳しい事業変革だ。オンラインサービスの概念自体は、世界中のどのデータセンターにもあるが、サービスという考え方によって、イノベーションを市場に出す技術は大きく変化している。(従って、)これまでとは違うやり方で、資金を動かす必要がある。マーケティングやライセンス、価格設定など、あらゆる面でこれまでとは違うやり方が必要だ」
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