検討事項はコストだけではない
比較表で考える オンプレミスとSaaS選択のポイント
オンプレミスとSaaS、どちらを選ぶか。コスト、セキュリティ、カスタマイズ、管理、コンプライアンスといった総合的な視点で、オンプレミスとSaaSのメリット/デメリットを比較した。
IT部門が存在しないくらい小規模な中堅・中小企業(SMB)や、運用コストの削減を求める大企業にとって、SaaSの持つメリットは明らかだ。しかし、SaaSの導入にはリスクが伴わないわけではない。オンプレミスソフトウェア(以下、オンプレミス)を長年使ってきた組織には、SaaSの経験がほとんどないが、SaaSを真剣に検討しようと考えている組織は多いようだ。オンプレミスとSaaSのどちらを選ぶかを決めるのが難しいのは、それぞれにメリット/デメリットがあるためだ(表1参照)。
| SaaS | オンプレミス | |
|---|---|---|
| コスト | 1カ月、1ユーザーなどの単位で、従量制課金 | ハードウェア、ソフトウェアライセンス、ラボスペース、空調などの先行投資 |
| カスタマイズ | カスタマイズ性は低い | ソフトウェアベンダーによってはある程度カスタマイズ可能 |
| ハードウェア | 利用するハードウェアとソフトウェアはプロバイダーのサイトに存在 | 利用者が、アプリケーションを運用するハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームを用意 |
| セキュリティ | SaaSにはインターネットを介してアクセスするため、セキュリティリスクを伴う | オンプレミス(利用者の施設内)に配置するため、比較的リスクは低い |
| モバイルアクセス | モバイルデバイス上のブラウザからアクセス可能 | モバイルデバイス上のブラウザからビジネスアプリケーションへの限定的なアクセス |
| 統合 | 重要な要件ではあるが、統合は限定的 | 既存のソフトウェアとの統合は普通 |
| 管理 | SaaSプロバイダーがシステムを管理、プロバイダーに顧客データの管理を委託 | 利用者がシステムとデータを管理 |
上記のメリット/デメリットと、それらの顧客にとっての重要性を踏まえて、オンプレミスとSaaSのどちらを選ぶかを考えてみよう。
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クラウド ナビ
SaaSプロバイダーとオンプレミスベンダーが保証する内容に注意
SaaSプロバイダーとオンプレミスベンダーは、表1に記載したメリット/デメリットを引き合いに出して、自社のソリューションが最適な解であることをアピールする。例えば、SaaSかオンプレミスかを選定する際に最も議論される点の1つは、5年以上など長期的に見てSaaSとオンプレミスではどちらがコストが掛かるかだ。
オンプレミスベンダーはよく、ビジネスアプリケーションを支えるインフラへの投資は、5年以上運用すれば元が取れると話す。SaaSでは5年以降も引き続きコストが発生するが、オンプレミスならユーザーが増えたとしても、追加コストは発生しないという。しかし、ソフトウェアアップデート、新しいハードウェアの追加、バックアップ/リカバリなど、初期投資後も費用が発生し得る要素があるため、この論調は疑わしい。予想外の結果を防ぐためには、各自でSaaSを利用した場合とオンプレミスで運用した場合の見積もりを立てる必要がある。
オンプレミスかSaaSかの選択は段階的に
引き続きオンプレミスで行くかSaaSに移行するかは、幾つかの段階を経て決めよう。非常に重要なポイントの1つは、必要なソフトウェアを提供し、かつ信頼できるSaaSプロバイダーがいるかどうかだ。信頼でき、必要なソフトウェアを提供するSaaSプロバイダーが見つからなければ、決断を下すのは簡単だ。オンプレミスのままでいい。
必要なソフトウェアを提供するSaaSプロバイダーが1社でも見つかったなら、今度はオンプレミスとSaaSでそれぞれのメリット/デメリット検討する。この作業を行うことで、SaaSへの移行に踏み切るか、オンプレミスのままにするかを判断しやすくなる。さらに、検討の結果、SaaSが最適だと判断し、候補のSaaSプロバイダーが複数ある場合は1社に絞り込む。
コストだけが重要な検討事項ではない
コストは最大の関心事の1つだが、セキュリティ、カスタマイズ、管理、コンプライアンスなども同様に重要だ。サブスクリプションサービスは、事業の拡大とともに、高コストになり得る。顧客は自社のデータを部外者であるSaaSプロバイダーに託すことになるが、SaaSプロバイダーが管理に失敗した場合はどうなるだろうか? また、ソフトウェアのカスタマイズや、既存のデータセンターシステムとの統合は、大きな問題になり得る。通常、SaaSでは、オンプレミスで可能なレベルのカスタマイズはできない。SaaSは、メールシステムや既存の人事アプリケーションなど、企業向けアプリケーションと関連して運用されることになるだろう。従って、SaaSはこのようなアプリケーションと統合される必要がある(関連記事:オンプレミス、クラウドを自由選択、SAPタレントマネジメントの「いいとこ取り」)。
データとプロセスが適切に管理されなければ、ITは機能停止に陥ってしまう。移行の過程には地雷が付き物であるから、SaaSプロバイダーとオンプロミスベンダーの話と保証の内容に十分に気を配ろう。
SaaS対オンプレミスの検討前に、既存システムの要件を把握する
SaaSとオンプレミスの選定を始める前に、新しいアプリケーションの導入や古いアプリケーションの入れ替えで、サーバやストレージなど既存システムの基本要件を把握する必要がある。把握できていない場合は、SaaSプロバイダーやオンプレミスベンダーを調べるのはまだ先でいい。選択肢やメリット/デメリットなど、検討事項は多数ある。選定を開始するには判断基準となる条件が必要だ。
SaaSおよびオンプレミスの無料お試しプログラムを利用する
既存のオンプレミスからSaaSに移行する前に、SaaSプロバイダーから無料のお試しプログラムの提供を受けよう。SaaSの配布モデルなら、これは容易なはずだ。新たに導入するアプリケーションを選定しているのであれば、オンプレミスベンダーからも同じように試用版を入手する。ただし、オンプレミスの場合は、アプリケーションのデモ版しか提供されず、正規版と同じ機能を無料で試せない可能性がある。
SaaSまたはオンプレミスでのアプリケーションの運用のしやすさを確認する
オンプレミスは、機密データを扱う財務アプリケーションなどの専門アプリケーションや、BI(ビジネスインテリジェンス)など、大量のデータの転送や操作が必要なアプリケーションに適している。一方SaaSは、(中堅・中小企業向けツールの)Office、CRM、人事アプリケーションなど、コラボレーション機能や生産性の向上、情報管理などのアプリケーション(使えるSaaSが充実していた2012年クラウドEXPO)が向いている。
SaaSとオンプレミスの顧客とベンダーの関係の違いを知る
オンプレミスとSaaS間の主な違いの1つは、顧客とベンダーの関係だ。オンプレミスの場合、プロバイダーが顧客にソフトウェア製品とその製品のアップデートやアップグレード版のライセンスを販売したら終わりだ(ベンダーがその後、次期リリースの新機能についての意見を求めたり、β版プログラムへの参加を求めない限り)。SaaSプロバイダーと顧客の関係は、利用開始以降も途切れることがない。顧客はSaaSプロバイダーを信頼して機密性の高いビジネスデータをプロバイダーのサイトに預け、ソフトウェアの滞りのない運用、イノベーション、サポート、ときにはトレーニングのスムーズな運用を継続的にプロバイダーに頼ることになる。
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