比較表で考える オンプレミスとSaaS選択のポイント検討事項はコストだけではない

オンプレミスとSaaS、どちらを選ぶか。コスト、セキュリティ、カスタマイズ、管理、コンプライアンスといった総合的な視点で、オンプレミスとSaaSのメリット/デメリットを比較した。

2012年08月20日 08時00分 公開
[Bill ClaybrookTechTarget]

 IT部門が存在しないくらい小規模な中堅・中小企業(SMB)や、運用コストの削減を求める大企業にとって、SaaSの持つメリットは明らかだ。しかし、SaaSの導入にはリスクが伴わないわけではない。オンプレミスソフトウェア(以下、オンプレミス)を長年使ってきた組織には、SaaSの経験がほとんどないが、SaaSを真剣に検討しようと考えている組織は多いようだ。オンプレミスとSaaSのどちらを選ぶかを決めるのが難しいのは、それぞれにメリット/デメリットがあるためだ(表1参照)。

表1:オンプレミスとSaaSの比較表
  SaaS オンプレミス
コスト 1カ月、1ユーザーなどの単位で、従量制課金 ハードウェア、ソフトウェアライセンス、ラボスペース、空調などの先行投資
カスタマイズ カスタマイズ性は低い ソフトウェアベンダーによってはある程度カスタマイズ可能
ハードウェア 利用するハードウェアとソフトウェアはプロバイダーのサイトに存在 利用者が、アプリケーションを運用するハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームを用意
セキュリティ SaaSにはインターネットを介してアクセスするため、セキュリティリスクを伴う オンプレミス(利用者の施設内)に配置するため、比較的リスクは低い
モバイルアクセス モバイルデバイス上のブラウザからアクセス可能 モバイルデバイス上のブラウザからビジネスアプリケーションへの限定的なアクセス
統合 重要な要件ではあるが、統合は限定的 既存のソフトウェアとの統合は普通
管理 SaaSプロバイダーがシステムを管理、プロバイダーに顧客データの管理を委託 利用者がシステムとデータを管理

 上記のメリット/デメリットと、それらの顧客にとっての重要性を踏まえて、オンプレミスとSaaSのどちらを選ぶかを考えてみよう。

クラウド ナビ


SaaSプロバイダーとオンプレミスベンダーが保証する内容に注意

 SaaSプロバイダーとオンプレミスベンダーは、表1に記載したメリット/デメリットを引き合いに出して、自社のソリューションが最適な解であることをアピールする。例えば、SaaSかオンプレミスかを選定する際に最も議論される点の1つは、5年以上など長期的に見てSaaSとオンプレミスではどちらがコストが掛かるかだ。

 オンプレミスベンダーはよく、ビジネスアプリケーションを支えるインフラへの投資は、5年以上運用すれば元が取れると話す。SaaSでは5年以降も引き続きコストが発生するが、オンプレミスならユーザーが増えたとしても、追加コストは発生しないという。しかし、ソフトウェアアップデート、新しいハードウェアの追加、バックアップ/リカバリなど、初期投資後も費用が発生し得る要素があるため、この論調は疑わしい。予想外の結果を防ぐためには、各自でSaaSを利用した場合とオンプレミスで運用した場合の見積もりを立てる必要がある。

オンプレミスかSaaSかの選択は段階的に

 引き続きオンプレミスで行くかSaaSに移行するかは、幾つかの段階を経て決めよう。非常に重要なポイントの1つは、必要なソフトウェアを提供し、かつ信頼できるSaaSプロバイダーがいるかどうかだ。信頼でき、必要なソフトウェアを提供するSaaSプロバイダーが見つからなければ、決断を下すのは簡単だ。オンプレミスのままでいい。

 必要なソフトウェアを提供するSaaSプロバイダーが1社でも見つかったなら、今度はオンプレミスとSaaSでそれぞれのメリット/デメリット検討する。この作業を行うことで、SaaSへの移行に踏み切るか、オンプレミスのままにするかを判断しやすくなる。さらに、検討の結果、SaaSが最適だと判断し、候補のSaaSプロバイダーが複数ある場合は1社に絞り込む。

コストだけが重要な検討事項ではない

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