【市場動向】“ハード/ソフト統合システム”に、ユーザー企業の期待大運用管理の負荷増と情シスのスキル低下が背景

システム導入・運用管理を効率化できるとして、ハードウェアとソフトウェアを統合した垂直統合型製品が注目を集めている。IDCジャパンの福冨里志氏の話を基に、その市場動向とユーザーの期待を俯瞰した。

2012年11月01日 08時00分 公開
[内野宏信,TechTargetジャパン]

相次いでリリースされた垂直統合型製品に、市場の関心も高まる

 単一ベンダーがハードウェアとソフトウェアを組み合わせて提供する垂直統合型製品が注目を集めている。2010年10月に発表された「OracleExadata」をはじめ、Hewlett-Packardの「HP AppSystem」、IBMの「IBM PureSystems」など、外資系ベンダーが続々と製品をリリース。2011年11月には富士通が「Fujitsu DI Blocks」を、2012年10月には日立製作所が「Hitachi Unified Compute Platform」を発表するなど、国産ベンダーもこれに続いている。

 これらは従来、個別に製品をそろえて構築していた仮想環境やそのシステム基盤を、コストを抑えながらスピーディに導入できる点が特徴。また、これまではハードウェア、ソフトウェアの各製品分野で最良と判断した製品を組み合わせてシステムを構築する「ベスト・オブ・ブリード」のスタイルが主流だったが、システム構成の複雑化による運用管理負荷の増大が多くの企業で課題となっている。その点、単一のベンダー製品によるシンプルな構成とすることで、運用管理の負荷・コストを低減できる点もメリットとされている。

 IDCジャパンでは垂直統合型製品の構成要素を、サーバストレージ、ネットワークといった「ハードウェアとその管理ツール」「仮想化プラットフォーム」「オペレーティングシステム」「データベース」「アプリケーション」の5つのレイヤーに分類。

ALT 垂直統合型製品の構成要素

 これを基に、製品タイプを、「ハードウェアとその管理ツールを組み合わせた検証済みシステム型(統合レイヤー1)」「ハードウェアから、仮想環境のオペレーティングシステムまで組み合わせたIaaS型(統合レイヤー1~3)」「ハードウェアからデータベースなどのミドルウェアやアプリケーション層まで組み合わせたPaaS型」(統合レイヤー1~5)の大きく3つに分け、各製品動向をウォッチしている。

製品タイプ 製品名
ハードウェアとその管理ツールを組み合わせた検証済みシステム型 「NetApp FlexPod」「VCE Vblock」など
ハードウェアから仮想環境、オペレーティングシステムまで組み合わせたIaaS型 「Cisco UCS」「IBM PureFlex System」「Dell vStart」「Fujitsu DI Blocks」「HP CloudSystem/VirtualSystem」など
ハードウェアからデータベースなどのミドルウェアやアプリケーション層までを組み合わせたPaaS型 「Oracle Exadata」「Oracle Exalogic」「IBM PureApplication System」「HP AppSystem」など
垂直統合型製品のタイプと主要製品

 IDCジャパン サーバリサーチマネージャーの福冨里志氏は、「コスト削減やリソースの有効活用を狙い、2008年ごろから多くの企業がサーバ仮想化に取り組んできた。そろそろ仮想環境の更新需要が高まるタイミングである他、昨今はハイパーバイザー管理ツールの発展を受けてIaaSも浸透しつつある。プライベートクラウド環境の構築に向けて、今後、市場の盛り上がりが予想される」と解説する。

 実際、IDCジャパンが337社を対象に行った「国内サーバー市場 ユーザー動向調査 2012」でも、「垂直統合型製品に含まれるシステム構成要素の最適な範囲」として、多くのユーザーが「ハードウェアとその管理ツール」(13.9%)、「ハードウェアからデータベースまで含んだ製品」(12.2%)、「ハードウェアから仮想環境のオペレーティングシステムまで含んだ製品」(11.9%)、「アプリケーション層まで含んだ製品」(20.5%)を挙げた。「垂直統合型製品の採用はあり得ない」と答えたユーザーは7.1%にとどまり、製品に対する需要が大きいことを裏付けた。

既存製品の寄せ集めではない――各製品とも独自の強みを訴求

 ただ、「アプリケーション層まで含んだ製品」を望む声が最も多かったにもかかわらず、実際にユーザー企業が採用している、もしくは採用予定がある製品としては、「ハードウェアとその管理ツール」「ハードウェアからデータベースまでを統合した製品」が最も多かったという。福冨氏は、「アプリケーションまで含んだ製品の導入実績が少ないのは、組み合わされるアプリケーションの種類がまだ限られていることもあるが、カスタマイズの要望が生じやすい日本企業の特性も影響しているのでは」と解説する。

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