クライアント/サーバ型からWeb型へと変遷してきたERPのクライアント環境。今注目されているのはベンダー技術に依存しないHTML5だ。スマートデバイスへの対応も必須になる中で、ERPのクライアント環境の今後を考える。
前回記事「【技術動向】パッケージと自社開発の利点を生かすSOA型ERPの魅力」ではユーザー企業のIT投資減少で、多くのベンダーがカスタマイズすることなく柔軟に利用できるERPパッケージ製品を提供するようになったことを説明した。今回は、同時にここ数年で大きく変化してきたERPのクライアント環境について解説する(参考記事:【技術動向】見えてきた、アドオン開発を抑えERPを早期導入する新技術)。
1990年代のERPの構成技術は、クライアント/サーバ型システムが一般的だった。クライアント/サーバ型システムとは、ERP本体が稼働するサーバと、そのサーバにネットワーク経由でアクセスして情報を利用するクライアントアプリケーションを分ける考え。クライアントアプリケーションはPCにインストールして使う。
このクライアントアプリケーションはPCのネイティブアプリケーションとして稼働するため、機能性や処理速度に優れ、高度な表現を可能にする製品が多かった。ただ、各PCにクライアントアプリケーションを導入する必要があり、バージョンアップ時の負荷が高いなど運用管理の課題もあった。
このような課題の解決を目指し、クライアントアプリケーションを配布せずに、WebブラウザをERPのクライアントとして利用するWeb型システムが1990年代後半から構想されていた。しかし、当時のWebブラウザやWebサーバなどのWeb関連技術はテキストなどの静的情報の伝達に対応した機能が中心で、ERPに求められるグラフやチャートの表現、高い操作性を実現することは難しかった。Web型システムを採用し、Webブラウザで利用することができるERPもあったが、クライアント/サーバ型システムと比較した場合、表現力や操作性が劣っていた。
また1990年代後半当時は、企業ネットワークのブロードバンド化が進んでおらず、企業のネットワーク状態は良好ではなかった。そのためインターネットをアクセス網に利用するWeb型システムのERPでは、アクセスが不安定という問題もあった。
2003年ごろからは、クライアントアプリケーションの配布が容易で、表現力や操作性に優れた「リッチクライアント」を備えたERPへの注目が集まった。リッチクライアントは、必要な場合にプログラムをPCにダウンロードして実行する形式を取ることが多く、クライアント/サーバ型システムのクライアントと比べて配布の手間が省けるとして利用が広がった。リッチクライアントは従来のWeb型システムとクライアント/サーバ型システムのいいとこ取りをした技術といえるだろう。
その後はAjaxなどのWeb技術を使い、WebブラウザをクライアントとするERPも登場した。Webブラウザをクライアントとする場合、エンドユーザー側の準備はほぼ不要。また常に最新のクライアント環境をエンドユーザーに提供できるなどのメリットもあり、現在では主なERPがこの方式を採用している。
ERPのクライアントに関して最近よく聞くキーワードが「UX」だ。UXは「ユーザーエクスペリエンス」の略で、ユーザー視点でERPのユーザビリティや、システムの機能、性能を考えることを指す。システム仕様や運用管理の都合ではなく、実際のユーザーがERPを利用する際にどう感じていて、どのようにすればストレスなく使ってもらえるかがポイントになる。
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