無駄なコストの削減が主目的だったIT資産管理も、仮想化、クラウドの浸透によってその意義が変化している。IDCジャパンのアナリスト 入谷光浩氏の話から、IT資産管理ツールに対する企業の期待を探る。
仮想化、クラウドの浸透によるシステムの複雑化を受けて、IT資産管理の重要性が一層高まっている。IDCジャパンが2013年2月に発表した調査、「システム運用管理で優先的に取り組んでいきたい項目」(n=459社)でも「IT資産管理の強化」が23.7%でトップを記録。「システム構成の可視化」が19.8%でこれに続いた。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ シニアマーケットアナリスト 入谷光浩氏は次のように解説する。
「仮想化の浸透によってソフトウェアのライセンス体系が複雑化し、それと知らずにライセンス違反を犯してしまうリスクが高まっている。また、把握できていないIT資産があれば、その資産に対するセキュリティ対策を施せないため、そこがセキュリティホールになる可能性もある。システムが複雑化している今、システム構成を可視化して『どのような資産があり、どのように使われているのか』を知るIT資産管理は、運用管理の効率化やセキュリティ対策の前提条件になっているといえる」
IT資産管理ツールの需要は大きく、2011年度の市場規模は約180億円を記録。このうち統合運用管理製品を提供しているNEC、富士通、日立製作所のIT資産管理ツールが約45%を占めた。これに近年、国内でも統合運用管理製品「System Center」の認知度を向上させつつある日本マイクロソフトと、資産管理ソフト専業ベンダーであるエムオーテックス、クオリティ、LANDeskがほぼ同率で続いている(シェア内訳の数値は非公表)。
「NEC 『WebSAM』、富士通『SystemWalker』、日立製作所『JP1』、また日本マイクロソフトのSystem Centerといった統合運用管理製品にラインアップされているIT資産管理ツールはクライアントPCが500台以上の企業による採用が中心。運用管理で既にこれらの製品を使っている企業が、シングルコンソールによる効率的な管理を目的に、同じ製品群の中からIT資産管理ツールを選ぶケースが多い」
機能としては、資産情報を自動的に取得するインベントリ収集機能をはじめ、使用/未使用のソフトウェアを判別するソフトウェアの稼働監視機能、ソフトウェアライセンス管理機能、ソフトウェアの利用制限機能、『どのソフトウェアが、どのPCで使われ、どのサーバにひも付いているのか』といった情報を把握する構成可視化機能などが支持されているという。
一方、エムオーテックス、クオリティ、LANDeskは、主にクライアントPCが500台未満の企業の間で高いシェアを獲得している。こちらも基本的に前述の機能が求められるが、特にクライアントPCやサーバの台数が数十台の企業では、構成可視化機能より価格や運用のしやすさが重視される傾向が強いという。
「特に従業員が300人以下の中小企業ではIT資産管理に専任の担当者を付けられないことが多い。そのため、よく使う機能に絞り込む、分かりやすいUIを採用するなど、IT資産管理の専門知識がないユーザーでも確実にIT資産を管理できる“扱いやすさ”が求められている。SaaS型の製品に対する関心も高い」
今後、IT資産管理は「デバイスの多様化への対応が鍵になる」という。特にニーズが高まりつつあるのがMDM(モバイルデバイス管理)機能だ。
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