事業部門をどう巻き込むか
予算策定に参加すべき人と、参加すべきでない人の違い
適切な人が参加する予算策定プロセスは成功する。問題となるのは適切な人の見極めと、積極的に参加してもらうための仕組み作りだ。
英語には、「The more, the merrier.(人数は多い方が楽しい)」という表現があるが、企業の予算編成プロセスにおいてもそうなのだろうか?
米財務管理ソフトウェアベンダーAdaptive Planningのカスタマーエクセレンス担当上級マネジャー、ベン・ラモルテ氏によれば、答えは「イエス」だという。ただし、「さまざまな参加者が適切なレベルで関与する」という条件付きだ。
ラモルテ氏は先頃ボストンで開催された「Adaptive Planning Roadshow」において、「Three Ways to Drive Better Planning Across Your Business(予算編成を改善するための3つの方法)」と題したセッションに登壇した。セッションの要点は、「予算策定に際し、財務責任者は終始一貫して事業責任者と協力し、その要望に応えるべきである」というものだった。
実に立派な目標だ。だが、この目標を達成するための方法は必ずしも明白ではない。財務責任者が事業部門の適切な責任者を適切なタイミングで予算策定に関与させ、より有効な予算編成を行えるよう、ラモルテ氏は3つのベストプラクティスを紹介し、幾つかの留意点をかみ砕いて説明した。
事業部門に積極的に関与してもらう
ラモルテ氏によれば、トップダウン型とボトムアップ型の予算編成は対立するものとして捉えられがちだが、実際はどちらも必要という。「上層部の幹部は組織の状況をより広い視野で把握している。だが、予算編成のプロセスには日常業務について把握している各事業部門の責任者を含めることも必要だ」と同氏は語る。
では、財務責任者は予算策定に誰を参加させるべきなのだろう? 「発言に強い影響力を持ち、周囲から一目置かれている事業責任者を巻き込むことから始めるといい」と、ラモルテ氏はアドバイスする。ITに精通し、アプリケーションを自由に使いこなせることも重要という。「この点は見過ごされがちだ」と同氏は語る。
トレーニングは利用しやすくすべきであり、やる気を高めるためには、たとえささいなことであっても、何か目標を達成する度に褒めることが大切だ。「誰も自分をバカとは思いたくない」とラモルテ氏は語る。さらに同氏は、トレーニング動画を作成し、必要に応じていつでも参照できるようにすることも奨励する。
KPIの策定で事業部門と協力する
販売数量や販売単価といった推進要因(ドライバー)に基づいて予算を立てる「ドライバーベースのプランニング」という手法があるが、ラモルテ氏は、この手法の浸透度を示す米Ventana Researchの調査結果を紹介した。それによると、従業員100人以上の企業のうち、ドライバーベースの予算策定を実行しているのは、わずか6%となっている。ただしこの数字には、ドライバーベースの予算策定を部門レベルで個別に行っている企業は含まれず、会社全体で統合的に行っている企業だけが含まれる。目標とすべきは、こうした統合的なプランニングの実施だ。
「モデル作りは事業部門の協力の下で行うべきであり、各事業に合わせたカスタマイズが必要だ。1つのモデルで全てに対応させるというわけにはいかない」とラモルテ氏は語る。
では、どのようにすれば、実用的なモデルを確実に構築できるのだろうか? 「予算モデルに基づき、何について決断しようとしているのかを、まず事業部門の人間に尋ねることだ。その点をはっきりさせておく必要がある」とラモルテ氏は語る。
下すべき決断に照準を合わせることは、財務部門と事業部門が協力してKPI(重要業績評価指標)を設定する上でも役立つ。「KPIをブレインストーミングによって導き出そうとする人がいるだろうが、そのやり方では駄目だ。ブレインストーミングは、下そうとしている決断について行うべきだ。重要な決断事項を念頭に置くことで、KPIは自ずと明確になっていく」とラモルテ氏は語る。
ただし、ラモルテ氏はまず1つの部門から着手することを勧める一方で、次のようにくぎを刺す。「ドライバーベースのプランニングを1つの部門で実施しているだけでは、自慢にならない」とし、「部門間のコラボレーションを促進し、全社レベルでの包括的な予算計画を策定できるよう、ドライバーベースのプランニングは全ての部門を対象に実施し、統合することが重要だ」と同氏は強調する。
またラモルテ氏は、「予算編成に参加すると業務に当てる時間を奪われる」という事業責任者側の懸念について、「財務責任者は、有益な情報を提供したいという意図と、現在使用しているKPIや報告書を尊重するという意向を明確に伝えるべきだ」と指摘する。財務部門でよく用いられる総勘定元帳コードではなく、事業部門にもなじみのあるデータを使い、事業責任者が「自分の思うままに計画できる」ようにすることも重要という。
皆のためのアナリティクス
ラモルテ氏が3つ目に指摘したのは、社内のより多くの人たちがアナリティクスデータにアクセスしやすくすることだ。「予算策定プロセスと同様、追跡すべき測定基準の選定にも事業責任者が関与すべきだ」と、同氏は指摘する。
ラモルテ氏は、まずサンプルダッシュボードを作成して事業責任者に提示し、フィードバックを得るようアドバイスする。ただしデータには、サンプルではなく本物を使うべきだ。「それが関心をかき立てるのに役立つ」と同氏は語る。
ダッシュボードに含めるKPIは部門ごとに調整する必要がある。KPIの選定に際し、事業責任者が意思表示できる仕組みも大切だ。さらにラモルテ氏は、ベンチマークを実施できるよう、業界標準のKPIを使うことを奨励する。
ただし、KPIに関する重要な留意点として、同氏は以下の点を挙げる。「KPIに関しては、“多い方が楽しい”ということにはならない。例えば、25個は多過ぎる」
最後にラモルテ氏が指摘したのは、財務部門が模範を示す必要があるという点だ。「財務部門は自らが業績の追跡に使っているダッシュボードとKPIを事業責任者に見せるべきだ。まずはこちらのやり方を見てもらおうというわけだ。警察の取り調べではないのだから」と同氏は語る。
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