銀行以外の業種でも、複数のCIOを社内に置くべきという声が広がっている。顧客サービスとITインフラの管理ではペースが異なるため、それぞれにリーダーが必要だ。
コンシューマー(一般消費者)を相手に商品やサービスを提供する業界では、競争で勝ち残るためにCIOを少なくとも2人置いて、IT部門が2種類以上の作業ペースを使い分けられるようにする必要がある。旧来スタイルの顧客サービスを守っていた歴史ある業界の企業ならば、マルチチャネルモデルに移行する際には複数名のリーダーを置かなければならない。
本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2014年1月22日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。
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複数のCIOが必要な企業は、もはやメガバンクばかりではない時代となった。例えば小売業のように、デジタル化の波によって業務プロセス間の関係や顧客と企業との関係の在り方が変わりつつある業界では、顧客サービスの変革を進めている当事者たちは、同時に従来の社内ITインフラの管理も継続するところで苦戦している。
旅行会社の英Thomas Cookが良い例だ。同社は、オンラインで同社のサービスを利用する顧客の行動によって、業務形態が変わった。休暇旅行の調査と手配をオンラインで済ませるコンシューマーの数が爆発的に増えた結果、同社はオンラインサービスをすぐに開発して開始できるような、アジャイル開発を推進するソフトウェアハウスへと軸足を移さざるを得なかった。顧客の要望をすくい上げ、それを商品化することで売り上げに直結させるべく、新たなサービスを次々に開発している。Thomas Cookがやらなければ競合他社がやる。だから、スピードが第一だ。
マリアーノ・アルベラ氏は、Thomas Cookに2人いるCIOの1人だ。アルベラ氏が顧客から直接見える部分のITサービスに専念する一方で、もう1人のCIOは従来のITインフラを担当している。
「自分は本来ソフトウェア開発者だが、ずっと旅行業界で仕事をしてきた。オンライン専門の旅行会社に在籍した期間が長かった。アプリの公開と運用を短時間で実現するために、ソフトウェア開発ではアジャイルの手法を利用していた」とアルベラ氏は語る。「Thomas Cookのような歴史ある大手企業で働くのは、自分の前歴からすれば異次元のことだった。フロントエンド開発とバックエンドのITインフラ開発を同時に進めたいのならば、CIOが1人だけの体制では無理だ」(同氏)
個人旅行のオンライン販売ならば、計画をすぐに変更できるとアルベラ氏は語る。「業務の意思決定権を握っているのは、社内の経営幹部ではなくお客さまだ」(同氏)。このような見解に立ち顧客対応のテクノロジーを担当するCIOは、顧客の声に耳を傾け、いつでもそれに応えるよう準備を整えなければならない。
予算の80%もの費用をITの保守に充てているのが現状なので、ITインフラを担当するCIOの力も最大限に活用している。
コンシューマーの要望が絶えず変化することに対応するために、大規模小売店はIT部門を設けて、ペースの異なる複数の業務プロセスを同時に運営することを余儀なくされていると、インテリア用品店の大手、英John LewisでIT部門の責任者を務めるサラ・ヴェニング氏は語る。
開発作業の中には、ITインフラの大幅なアップグレードの場合のように最初から完璧でなければならない性質のものがあり、これには時間を要する。
他方、顧客に利用してもらうアプリの開発は、少なくとも競合他社に負けない速度で迅速に行う必要がある。最終的な段階は超高速で進めることになるため、IT部門はクラウドソーシングの活用やハッカソン(複数人が1カ所に集まり特定のテーマのプログラミングに集中的に取り組むイベント)の実施など、革新的な手法を利用する。
「IT部門には、アジャイル開発手法を駆使して顧客向けのシステムを素早く開発しつつ、そのシステムを支えるIT基盤にも必要な投資を確保する能力が必要だ」とヴェニングス氏は語る。「当社は、アジャイル手法によるソフトウェア開発と開発したサービスの公開に大きな労力を割いている。その一方で、財務調整、サプライチェーン、顧客データシステムなど、基幹業務を支える記録システム(SOR)への投資を継続する必要もある。こちらは、IT部門が手掛ける中では、ペースがややゆっくりな作業だ」(同氏)
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