米Googleは企業向けのクラウドサービスの価格設定を簡略化するとともに、大胆な値下げも断行した。パブリッククラウドプロバイダー間における大規模な価格競争の引き金となりそうな施策だ。
Googleは3月末に米サンフランシスコで「Google Cloud Platform Live」というカンファレンスを開催した。その中で同社の上級副社長ウルス・ヘルツル氏は、同社のIaaS(Infrastructure as a Service)であるGoogle Compute Engine(GCE)の全リージョン、全クラス、全サイズの料金を32%値下げすると発表した。また同氏はストレージについて、Gバイト単位の一律な料金制度を導入することも表明した。新しい料金体系では、ほとんどのユーザーが従来比で68%の値下げとなる。
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1カ月の4分の1を超える期間にわたって仮想マシンを使用する場合は、さらに最大53%の値引きが適用される。これに関する前払いや事前のコミットメント(確約)は何も必要ない。
一定量以上の利用を確約したユーザーだけに大幅な値引きを提供するなど、クラウドでは分かりにくく不透明な価格オプションがよくみられる。Googleの今回の発表は、そんな競合他社に挑戦状をたたきつけた形だ。新しい価格体系が顧客に受ければ、クラウド市場にまん延する価格設定の混乱は終息するかもしれない。
予約(リザーブド)インスタンスの価格を競合他社よりも安く設定し、さらに柔軟なオンデマンドオプションも加えることで、Googleは顧客を引き付けられると期待している。そのために、リソースの提供形態も“使用した分だけの料金を払う”シンプルで柔軟なものにした。これで料金は魅力的になるし、費用の予測も立てやすくなる。
「業界はこれまで、料金体系を単純化する方向には進化していなかった。ユーザーは、今後2~3年で仮想マシンを何台展開するかをまず推測しなければならない。これでは、シンプルで、需要の変化にも即座に対応する、融通の利くコンピューティングとはいえない。少しずつでも料金を適正なものに変えていくことが必要だ」とヘルツル氏は主張。現在は同一プロバイダーで同一のリソースに対するサービスを申し込む場合でも、10個もの要因の設定値の違いによって料金が変わってくると指摘した。
この問題は、米調査会社451 Researchのアナリストが201年12月に、クラウドの価格に関するリポート「Cloud Pricing Codex」を発表して指摘していたものだ。「各社が提供するサービスの実質を比べてみたり、さまざまな形態で提供されるサービスに対する賛否両論を評価したりするのは悪夢のような作業だ。プロバイダーによって用語の使い方が少しずつ違ったり、同じものを指す呼び方が異なったりするからだ」とアナリストはリポートの中で説明している。
Googleが、流れを変えることを狙って攻めの一手を打ったことは疑いの余地がない。現在の市場は依然として、ライバルのAmazon Web Services (AWS)が他社を大きく引き離して独走している。AWSの市場シェアは競合企業の上位4社の合計をも上回っている。それでもGoogleはAWSに挑む立場から、全社を挙げて攻めの姿勢に出ている。
ヘルツル氏に言わせれば、2014年3月の値下げの発表は、クラウド市場を席巻するAWSに挑むGoogleの、最初の一撃にすぎない。「われわれはクラウドの料金をリセットして、適正な価格を実現したい。その場限りの施策では終わらせない。これは当社の哲学だ。仮想ハードウェアの価格傾向は、物理ハードウェアの価格のそれと連動するものだ。また、ムーアの法則にも従っている」(ヘルツル氏)
AmazonもGoogleの挑発に応えたのか、Googleの発表直後の2014年4月から、提供中のクラウドサービスの多くについて、7~40%値下げすると発表した。ただしこのクラウドの王者にとっては、現在の複雑な価格体系をGoogleと肩を並べるレベルまで単純化するにはしばらく時間がかかりそうだ。
かたやGoogleは市場でさらなるシェア獲得を目指して、顧客向けに魅力的な新機能を導入しようとしている。
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