「ミニスタート画面」を設置 Windows 8.1の謎の新機能「Windows Apportal」とは何か職務ごとにカスタム環境を提供

Windows 8.1を使っている企業なら追加料金無しで使える「Windows Apportal」。仕事や職務ごとに特定のアプリやデータで構成されたカスタム環境を提供できるこのテクノロジーについて紹介する。

2015年06月15日 08時00分 公開
[Robert SheldonTechTarget]
Windows Apportalの製品Webサイト《クリックで拡大》

 米Microsoftの「Windows Apportal」(以後、Apportal)は、強力だが見過ごされがちなWindowsテクノロジーである。このテクノロジーを使用すると、IT管理者は、ユーザーが仕事で必要なアプリケーションやデータにすぐアクセスできるようにカスタマイズした環境を効率よく提供することが可能だ。

 Apportalは、Microsoftの「Windows 8.1」に統合されており、標準画面のスタート画面から呼び出す「ミニスタート画面」として機能している。Apportalには、複数のタイルのグループが含まれている。各タイルは下記とリンクしている。

  • Microsoft製のアプリケーション
  • サードパーティー製のアプリケーション
  • Webベースのアプリケーション/グラフィック/リポート
  • その他の基幹業務(LOB)のリソース

 IT部門は、各Apportalを調整して、特定の役割をサポートすることができる。Apportalを使用すると、標準的なWindows 8.1のスタート画面とは別に操作しやすいApportalのトップページである「Hub View」をユーザーに提供することが可能だ。Windows 8.1の使用許諾契約を結んでいる企業は、追加料金を支払うことなくApportalを実装できる。ただし、Apportalを作成するためには、Microsoftの「Visual Studio」「Windows PowerShell」といったソフトウェアの追加ライセンスが必要になる場合がある。

Apportalの要素を組み合わせる

 Apportalは、Windows 8.1のスタート画面のような雰囲気を持ち、同様の機能を備えている。異なるのは、ツールやデータが特定の役割をターゲットにしていることだ。Apportalにアクセスするには、ライブタイル(※)をクリックする。タイルをクリックすると、Hub Viewが起動する。

※アプリケーションを起動せずに最新情報を見ることができるタイル。

 Hub Viewには、機能や情報の種類でグループ化された一連のグリッドタイルが配置されている。例えば、1つ目のタイルグループでは一連のリポートにアクセスでき、2つ目のタイルグループではLOBアプリケーション、3つ目のタイルグループではMicrosoftの「Microsoft Office」製品にアクセスできるといった具合だ。グリッドタイルは、スタート画面のライブタイルと似ているが、ユーザーがタイルを移動または変更できない点で異なる。

 Apportalでは次の3種類のタイルがサポートされている。

  • Static(静的):ロゴや画像など静的コンテンツを表示するタイル
  • Live(ライブ):リアルタイムのリポートや回転画像などリアルタイムで変わるデータや画像を表示するタイル
  • Snap view(スナップビュー):Microsoftの「Outlook」や独SAPの「SAP ERP」といったアプリケーションにアクセスできるライブタイルや静的タイル

 Apportalタイルは、Webページやデータストア、他のアプリケーションといった幅広いリソースに接続してデータを表示することが可能である。管理者はタイルを入れ子にし、エクスプローラーのフォルダ構造と同じように、リソースを階層構造で整理する多層化環境を提供することもできる。

 ユーザーはApportalから、組み込みのエンタープライズアプリケーションやWindows 7のデスクトップアプリケーション、Windows 8.1のモダンアプリケーション(※)にアクセスできる。実際のところ、ApportalはWindows 8.1で実行できる全てのアプリケーションとリンク可能だ。さらに、タイルのリンクを介してWebベースのアプリケーションだけでなく、さまざまな種類のリソースやデータへアクセスもできる。

※Windows 8.1のタッチ操作を意識して作られているアプリケーション。

 企業は、自社のアプリケーションストアを介してApportalを導入することが可能。また自動更新しながら、Microsoftの「Windows Phone」を含む各種Windows 8.1デバイスにApportalを配信することができる。

Apportalのカスタマイズ

仕事、部門、場所、業界などの条件に合わせて固有のコンテンツを配信することができる(出典:Microsoft)《クリックで拡大》

 ユーザーがApportal環境を変更することはできない。だが、IT管理者は、どのようにタイルをグループ化して、どのアプリケーションやデータをタイルで利用できるようにするかなどを完全に制御することが可能だ。また、企業のロゴや画像を使用してApportalをカスタマイズすることもできる。Hub Viewや入れ子になったページの一般的なレイアウトや構成を決定する権限もある。Apportalは、さまざまなWindows 8環境に適応するように設計されているため、デバイスごとの画面サイズに合わせて自動的に拡縮される。

 IT管理者は、Apportalの実装時に定義した役割に基づいて、ユーザーが利用するリソースをフィルターできる。そのため、ユーザーには承認済みのアプリケーション、リンク、データだけが表示される。また、仕事、部門、場所、業界などの条件に合わせて固有のコンテンツを配信することが可能だ。例えば、医療センターで使用するApportalでは、医者や看護師といった職務または放射線や理学療法といった診療科に基づいてリソースをフィルターすることができる。

 Apportalは、グリッドタイルだけでなくバックエンドのデータソースへのアクセスも制御するMicrosoftの「Azure Active Directory」との統合によって、役割ベースのコンテンツを配信することができる。このようにして、IT管理者は、特定カテゴリのユーザーごとに異なるデータやアプリケーションを配信できる。また、Azure Active Directoryを使用して、サービスに対する役割ベースのアクセスを提供することも可能だ。

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