推奨温度「27度」は無理しなくていい
データセンターをどう冷やすかという単純ながらも複雑な問題
バッテリー冷却キャビネットは、データセンター内でバッテリーを冷却するのと比べてコスト削減になるのだろうか。
バッテリー冷却キャビネットは論理的な手法のように思えるが、どの企業もデータセンターで採用しないのには極めて実際的な理由がある。
制御弁式鉛蓄電池を使っているデータセンターは、この密閉型バッテリーをセ氏22~25度のバッテリー冷却キャビネットの中で使用すれば、データセンター全体を適温に冷却する必要がなくなる。だが、この方法は経済的ではない。液式鉛蓄電池を使っているのであれば、これらをデータセンターのメインスペースから隔離して運用しなければならない。電解液の漏れや水素爆発が起きる恐れがあるからだ。このため、分離冷却が必須となる。
理想的なバッテリー温度は25度である。米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)の2008年ガイドラインでは、コンピューティング機器の最大連続使用温度として「27度」を推奨している。だがコールドアイルコンテインメント(冷気の囲い込み)が万全であっても、データセンターのあらゆる通路の全てのキャビネットの上から下まで、27度ぴったりに維持するのは不可能に等しい。データセンター設計者の多くはある程度の変動を見込んで、やや低い目標温度(例えば24度)を設定している。この冷却設定であれば、自冷式バッテリーキャビネットを利用する必要はない。2011年に公開された「ASHRAE TC9.9」(同学会の技術委員会が作成したホワイトペーパー)の温度ガイドラインに示されているように、27度を超えても機器が損傷するわけではない。この温度は、推奨サーマルエンベロープ(熱設計範囲)の上限として選ばれたのだ。この温度を超えると、大抵のサーバのファンは回転速度が大幅に上昇し、高温稼働で節約できるよりも多くのエネルギーを消費する可能性があるからだ。ラックスペースを常に高温で運用し、バッテリーを単独で冷却する方法は推奨されない。
可能性として考えられる例外は2つある。
その1つは、コールドアイルコンテインメント方式を利用して、ASHRAEが示している上限温度である27度に近い温度でデータセンターを運用するというものだ。今日のハードウェアのほとんどは、動作時の流入空気と排出空気の温度差が11度以上になる。言い換えれば、室内の他の箇所でホットアイル(暖気通路)が温度(38度)以上になる可能性があるということだ。これはバッテリーに良くないだけでなく、大抵のUPSシステム(無停電電源装置)の動作上限温度に近いため、UPS装置全体で自動的に過熱保護のサーマルシャットダウンが機能し、回路が停止する可能性もある。こうした状況が想定される場合は、専用の冷却システムを備えたUPS/バッテリールームを別途設けることが不可欠と思われる。
もう1つの例外の可能性は、一時的な停電や冷却装置の故障のためにデータセンターの温度がASHRAEの許容温度を超える場合だ。これはバッテリーの持続時間を短縮する可能性もあるが、緊急時には仕方がないだろう。UPSの信頼性を最優先するのであれば、UPSとバッテリーがその冷却システムとともに二重化・分離され、2N型バックアップ(訳注:2Nは冗長方式の1つ)を備えた本格的なUptime Tier IVレベル(※)のデータセンターが必要となる。統合型バッテリー冷却方式によるわずかな省エネ効果のメリットはほとんどないといえるかもしれない。
※「Uptime Tier」は米国のデータセンター民間団体Uptime Instituteが定義するデータセンターのサービスレベル。Tier I~IVの4段階があり、IVが最高レベル
ASHRAEが推奨するサーマルエンベロープの上限を超えてデータセンターを運用するのでない限り、自己完結型のバッテリー冷却方式による省エネ効果が特殊な冷却装置のコストを帳消しにするとは思えない。
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