リアルタイムな経営判断とグローバル化の壁を越えるには
世界を攻める中堅・中小企業の経営に、クラウド型ERPが“効果あり”な理由を探る(1/2 ページ)
ERPを経営の意思決定に役立つツールとして捉え直している企業が増えている。その背景にはクラウドコンピューティングをはじめとする技術革新がある。中堅・中小企業におけるERP活用の最新事情とは。
「ERP」は「Enterprise Resource Planning」という名前の通り、企業が持つヒト、モノ、カネといった資産を統合管理するものだ。当然ながら経営判断に役立つ情報が詰まっており、経理担当者や総務担当者がERPのデータを毎月集計して印刷出力したものを経営層が受け取る、といった使い方をする中堅・中小企業は多いのではないだろうか。
昨今では現場の従業員を介さずに、経営層自らERPを活用する企業も現れ始めた。経営の意思決定に役立つツールとして捉え、活用する経営層が増えてきたというのだ。こうした企業のニーズの変化に伴い、ERPも着実に進化している。中堅・中小企業向けERPの技術動向に詳しいスーパーストリーム CTO(最高技術責任者)の山田 誠氏に、中堅・中小企業におけるERP活用の最新事情や技術動向を聞いた。
2016年上半期「中堅・中小企業とIT」記事ランキング(2016年1月1日~2016年6月20日)
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経理からの情報を待つのではなく経営層が能動的にERPを使う時代
「会計人事情報は企業の経営基盤です。よりリアルタイムに、詳細に把握しておくべきだという問題意識は、経営層にもありました。それがここ数年のモバイル機器の急速な普及により実現しやすくなり、製品開発者も利用者も、ERPの力を最大限に引き出そうと使い方を見直しています」
スマートフォンやタブレットなど、手軽に持ち歩けて操作も簡単なモバイル機器が、ビジネスの現場だけではなく経営層にも浸透している。経営層がモバイル機器を使ってERPの情報をリアルタイムに参照し、経営判断の材料として生かす企業が増えているという。印刷された資料が経理部門から届くのを待つのではなく、能動的に情報を経営に活用していこうとする姿勢の変化がそこからは見て取れる。こうした使われ方の変化に応えるために、ERPのモバイル対応も進んでいる。
「社内でも社外でも気になったときに手軽に閲覧できるERPが増えています。以前なら紙で確認していた経営者が、自分自身の尺度に基づいた切り口でデータを見ているようです」と山田氏は語る。モバイル対応を1つの軸として、ERPはスピーディな経営判断に欠かせないツールに進化しつつある。
経営層が注目するデータ自体にも変化がある。財務諸表のデータだけではなく管理会計のデータを活用したいというニーズが増えているという。例えばある外食チェーンは売り上げだけではなく店舗別の損益計算書(PL)を見て、どの地域への出店を強化すべきかなどを検討している。経営の根本に関わる情報をERPに求めるようになっているのだ。
ERPの情報を経営判断に本格的に生かすのであれば、ERPには基本的な財務諸表データだけではなく、管理会計データを含む幅広いデータを扱う機能が備わっていることが望ましい。
UIや出力は現場のニーズに合ったものを
経営層を中心に新しい使い方が広まる一方で、従来の現場での使い方にも新しいニーズは生まれている。特に強いのが、使い慣れたツールに近いユーザーインタフェース(UI)で使いたいという要望だ。「ERPだけではなく BI(ビジネスインテリジェンス)ツールなどもそうですが、現場で使ってもらいやすいツールにするために、表計算ソフトの『Microsoft Excel』をUIとして使えるようにしたERPが増えています」。仕組みはERPによって多少異なるが、ERPベンダーが専用のデータ連係ツールを用意し、エンドユーザーがMicrosoft Excelに入力して保存したデータをERPに自動的に反映できるようにするのが一般的だ。
ビジネスの現場では、慣れ親しんだUIが好まれる。中でも多くのエンドユーザーが使い慣れているのがオフィススイートの「Microsoft Office」製品群だ。数値入力や閲覧においてMicrosoft Excelほど、広く親しまれているアプリケーションはないだろう。これをUIとして使うことで、経営層や現場の従業員に抵抗なくERPを使ってもらえる。 新しいシステムを導入するときに抵抗感を抱くエンドユーザーをゼロにするのは難しいものだ。「使い慣れているMicrosoft ExcelをUIに採用することで、システムへの抵抗感が減り、実際に使ってもらえるようになる可能性があります。ベンダーが作り込んだUIをユーザーに押しつけるような時代は終わりつつあるのかもしれませんね」(山田氏)
エンドユーザーの手に触れるインタフェースとして、もう1つ忘れることができないのが、紙の印刷物だ。モバイル機器への対応やオンラインでのリアルタイムな分析結果の表示など、ペーパーレス化に必要な機能はそろっている。電子帳簿保存法のスキャナー保存制度の要件が、2016年1月に緩和されたことも大きなトピックスだ。この要件緩和を受け、ベンダー各社が会計システムやERPに証憑(領収書や契約書など)を電子化して取り込む機能の拡充に動いている。
しかし中堅・中小企業のペーパーレス化は、ゆっくりとしか進んでいないのが現状のようだ。特に証憑類の電子保存については「税務署に提出する申請書類の準備や法的手続きの難解さに戸惑う企業が多いようだ」と山田氏は語る。紙による情報共有や処理作業は、時間と資源の無駄という点ではITシステムに見劣りするものの、紙も1つの「使い慣れたインタフェース」だ。現場の需要は一朝一夕になくなることはないのだろう。
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