利用したのは位置情報だった
Appleを出し抜き「App Store」審査を突破、海賊版アプリの手口とは
「Happy Daily English」という海賊版アプリがAppleによるApp Storeのセキュリティ審査をかわした。その手口と、セキュリティチームが取るべき対策について解説する。
Palo Alto Networksの調査で、ある海賊版アプリがAppleによるApp Storeのセキュリティ審査をかわしていたことが明らかになった。この海賊版アプリはどうやってセキュリティ審査をごまかしたのか。この事例でアプリストアの審査について企業が懸念すべき点があるとすればどのような点か。
Appleによるアプリ審査の目的は、iOSやMacやApple TVの「tvOS」のアプリストアから、悪質なアプリや欠陥アプリ、危険あるいは不快なアプリなど、AppleのApp Store審査ガイドラインに違反するアプリを締め出すことにある。この審査はiOSユーザーのプライバシーとセキュリティを守る上で重要な役割を果たす。全てのアプリと全てのアップデートはこの審査プロセスを経る必要があり、AppleのApp Storeからの不正アプリ締め出しは、これまで大部分で成功を収めてきた。
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プライバシー保護に努力するApple
ただし不正なコードが審査を通過してしまった事例はこれまでにもあった。2012年に「Find and Call」が真の悪質アプリとして初めてAppleの審査プロセスをくぐり抜け、最近では「XcodeGhost」「InstaAgent」の2本もこの事例に加わった。
マルウェア作者は自分のコードがウイルス対策ソフトウェアやコード審査で検出されたり、サンドボックス環境で実行されて分析されるのを防ぐため、常に対策をかわす新手の手口を探している。サンドボックスや人の行動認識、実行を遅らせる手口などは、マルウェアの真の機能を隠して審査を通過させる手口のごく一例でしかない。Palo Alto Networksの研究者が最近発見した「Happy Daily English」というiOSアプリは、巧妙な手口を使って真の意図を隠し、Appleの審査プロセスをすり抜けていた。
Happy Daily Englishの作者が海賊版アプリの真の性質を隠すために利用したのは位置情報だった。ユーザーのいる場所によって挙動を使い分け、ユーザーが中国の国外にいる場合は「ZergHelper」(Palo Alto Networksの命名)がインストールされて英語学習アプリとして挙動する。ところが中国からアクセスすると、正規アプリやゲームの海賊版を中心とする無料アプリを直接インストールするなどの悪質な機能が出現する。App Storeの審査が中国本土で行われれない限り、審査員には正規アプリしか目に見えない。
この海賊版アプリには露骨な悪質機能が存在しないため、Palo Alto Networksではリスクウェアとしか分類していない。だがiOS端末のユーザーに潜在的なセキュリティリスクをもたらすことに変わりはない。アプリへの署名と配信には企業や個人の証明書が使われていて、インストールされるアプリのセキュリティも保証できない。さらに、現在または将来的に、アカウント情報の収集機能をもつ可能性もある。同アプリにプログラミング言語のLuaが使われているのは、動的コード読み込み経由で機能拡張しようとする作者の狙いがあるのかもしれない。これは正規の技術だが、マルウェアに悪用されて、追加コードや悪質コードをインターネットからダウンロードしてオフライン分析をかわしたりする狙いで利用され、今回の場合はアップデートに対して義務付けられたAppleの審査をすり抜けていた。コードは全体的に極めて複雑で、他のマルウェアを使ったiOSのエコシステム攻撃に使われかねない不審な手口が実装されていた。
Happy Daily EnglishはApp Storeから削除されたものの、Appleや他社のアプリストアは、位置情報を利用して審査プロセスをかわそうとする他の悪質な海賊アプリを検出する新たな手段を実装する必要がある。さらに、JavaScriptやLuaなどのスクリプティング言語を提供するソフトウェア開発キットを使ったアプリに対しては、動的コード読み込みを使って悪質な機能を実装しようとした場合に備え、追加的な審査を行う必要がある。いずれにしても、この海賊版アプリをインストールした場合は削除しなければならない。純粋な無料アプリにしてはあまりに複雑なコードは、さらなる不正な挙動の前兆かもしれない。
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