「Google Customer Reliability Engineering」(CRE)
「Pokemon GO」にも貢献、Googleの新しいクラウドコンサルサービスの効果は
Googleが各種クラウドサービスをビジネス向けに一新し、多くの注目を集めた。このニュースには、将来的に大きな利益をもたらす動きも隠れている。その1つが新しいコンサルティングサービスプログラムだ。
Googleは各種のクラウドサービスを「Google Cloud」として一新し、さまざまな事業部門を1つにまとめた。これには「Google Cloud Platform」(GCP)、「G Suite」と改名された一連のアプリ、機械学習ツールとAPI、クラウドに接続するGoogleデバイスなどが含まれる。さらに同社は「Customer Reliability Engineering」(CRE:顧客信頼性エンジニアリング)というコンサルティングサービスプログラムの提供も開始した。このプログラムに参加する顧客の数は少ないものの、このサービスは並外れた反響をもたらす可能性を秘めている。
CREは、さまざまなIT運用プロセスについてベンダーが有償で顧客の相談に乗る一般的な専門サービスの契約とは異なる。また新しい機能を開発するために先進的な企業とパートナー契約を結ぶことも目的としていない。このサービスは、信頼性の確保に真摯に取り組むことに重点を置いている。特筆すべきは、このサービスでは利用料が発生しない点だろう。
併せて読みたいお薦めの記事
Google Cloud Platformの特徴
- Google Cloud Platformは業務アプリケーションの移行先となるか
- Googleが提供するビッグデータ分析サービスの基礎知識
- うわさされる“Google DaaS”は従来のPC代わりになるか
競合と比べたGoogle Cloud Platform
厳密には、信頼性を重視する対象はプラットフォームではなく、プラットフォーム上で動作する顧客のアプリケーションだ。これは顧客のアプリケーションがGoogleの新しい一連の環境でどのように動作するかが不明瞭であることに対する1つの答えである。また事実として、IT運用チームは問題発生時に本部で意思決定をしなくて済むようになる。
CRE構想の責任者を務めるデイブ・レンシン氏は次のように話す。「プラットフォームを使用している大勢の中の1社だからこそ、午前3時という時間に運用しているプラットフォームが、あなたほどアプリケーションについて気にしていないと考えるのは不思議ではない」
ここで、CREプログラムの発想について説明したい。このプログラムでは、Googleのエンジニアチームが、サービスレベル目標、監視、ページングを含め、システムのアップタイムと正常性を管理する役割を担っている。またエンジニアは、アプリケーションのあらゆる要素を調査してギャップを特定し、99.99%のアップタイムを99.999%または99.9999%にするための最善策を調べている。
Googleは、この新たなプログラムから2つの成果を得たいと考えている。ビッグデータ分析などの技術的な問題を解決するという単純な目的のためにGoogleのサービスを利用したいと考える顧客がいるのは事実である。その一方で、このプログラムはGoogleが運用について培った知的産物を少し購入して、自社のビジネスに取り入れようと考えている他の顧客をいら立たせることになるかもしれないとレンシン氏は語る。
当然ながら、ここでGoogleが果たす役割は利他的なものではない。なぜなら1つの導入が成功すると、他の企業のIT部門は同業者のGCPに対する取り組みの一部を知ることになるため、高い確率で別の導入が行われるからだ。
さらにリソースが適切に利用されていないと、どちらの利益にもならず、新しい顧客は不満を感じてGCPから離れてしまう。Forrester Researchで主席アナリストを務めるデイブ・バルトレッティ氏は次のように話す。「Googleは、多種多様な具体例を提供するのではなく、顧客がプラットフォームを最大限に活用できるようにすることで、パートナー関係を構築することに関心を向けている」
「大手クラウドプロバイダーが、“下らないものをできるだけ多く売りつけることだけを考え、顧客がサービスをどう使おうと気にしていない”と考えられているのは事実だが、それは真実ではない」(バルトレッティ氏)
またレンシン氏はすぐに次のように付け加えている。「“追加費用なし”と“タダ”は同じでない。CREでは手順や風土を変えるために、顧客の努力と資本が必要になる」。また、GoogleはCREプログラムへの参加についてポリシーを定めている。予算がなくならないように、システムが検査に合格することを義務付けている。それから、顧客はレビューや事後分析に積極的に参加しなければならない。
困ったときはお互いさま
CREは、Googleが企業の要望に応える準備ができているかどうかという疑問にも立ち返っている。このプログラムは、Googleがクラウド市場でAmazon Web ServicesとMicrosoftに追い付こうと試みる中で最大級の一手であり、ダイアン・グリーン氏の下で同社が覆そうと取り組んできたイメージにも大きな影響を与える。CREの目的には、Googleの運用手法をいくらか顧客に提供するだけでなく、顧客となった企業のノウハウをGCPチーム内に持ち帰ることも含まれている。
Gartnerでリサーチ部門のディレクターを務めるシド・ナグ氏は次のように指摘する。「一般消費者の生活を重視した構築ツールからビジネス志向のアプローチに移行することは容易でない。だがこれはグリーン氏がGoogleを先導してその難題に対応するやり方の一端を示している」
「Googleは、より強固な企業的な視点を持ちつつある」(ナグ氏)
なおCREプログラムに参加可能なユーザー数には制限がある。具体的な上限は明示していないが、Googleは需要が供給を上回ることを期待している。そのような状況が現実のものとなれば、利益創出に直結しないプログラムに多くの専任エンジニアが投入されるだろう。
ただしGoogleへのこれまでの支払額だけで参加ユーザーが決まることはないだろう。「参加ユーザーについては、GCPチームの商業的な側面から決定されるが、興味深い取り組みをしているチームとは前向きにパートナー関係を結びたい」とレンシン氏は話す。そのため、最初の顧客となったのはフォーチュン500社に名を連ねる一流企業ではなく、人気のモバイルゲーム「Pokemon GO」を開発したNianticだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
5
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
6
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
7
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
8
ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間に
-
9
「プログラマー不要論」にThe Linux Foundationが示した答え
-
10
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー