人工知能(AI)が顧客満足度を高める Microsoft、IBM、GoogleのAPIが組み込まれた世界はどんな姿?AIは使うほど磨かれていく

顧客満足度を高めるために人工知能(AI)を活用する企業は少なくない。主要なAIはAPIを用意しており、「Siri」「Alexa」「Google Assistant」などのパーソナルアシスタントなどと連携して活躍の場を広げている。

2018年02月01日 09時00分 公開
[Suraj KumarTechTarget]

 モノのインターネット(IoT)の真価は、カスタマーエクスペリエンス(CX:顧客体験価値)を変革できる力にある。導入場所が家庭であれ、職場であれ、自動車内であれ、歩道を歩いている最中であれ、同様だ。近年、各種の組み込みセンサーが生成するデータは、CXの向上という形で、企業とその顧客に新たな変革をもたらしつつある。さまざまな業界でかつてない規模のコモディティ化が進む昨今、CXは製品を差異化し、顧客の購買行動を促進するための主要な要因となってきた。現代の企業はCX戦略を見直し、コストの最適化とCXの改善を目指す必要がある。最終目標は顧客忠誠心とブランド忠誠心の向上だ。

 顧客エンゲージメント(顧客との結び付き)を深めるためには、CXを変革できるデータドリブンな機能を備えたテクノロジーが必要となる。そこで登場するのが人工知能(AI)だ。AIとは簡単にいえば、人間の知的な活動をコンピュータによってシミュレートする技術であり、企業にとってはさまざまな新しい可能性の源泉となる。AIはスケーラブルで、効率的で、人手で処理すれば膨大な時間を要するであろう繰り返しの処理を自動化できるからだ。企業はIoTの広範なデータ収集能力とAIのデータ処理能力を組み合わせることで、個々の顧客を的確に理解し、従来の受け身型の顧客サービスではなく能動的なCXを提供できるようになる。

 こうしたAI活用型のCXはさまざまな形で具体化している。顧客サービスにAIを活用する事例としては、チャットbotやインテリジェントな音声操作システムの他、AIを使った翻訳サービスを提供したり、その場でパーソナライズしたデータを顧客にリアルタイムで提供したりするものがある。他に、バックエンド側のサービスにAIを活用して、CXを改善することも可能だ。例えば企業は顧客との間でやりとりするデータを機械学習で処理し、カスタマイズできる。

AIでCXを改善

 AIは単独の技術ではなく複数の技術を組み合わせて実現する技術であり、さまざまな場面での応用が可能だ。CXの改善にAIを活用する方法を幾つか紹介する。

AIを自然言語処理に活用する

 自然言語処理技術は、音声認識と音声合成を組み合わせ、AIを使って音声によるリクエストを理解する。音声認識は人が何を話しているかを理解するのに用い、音声合成は応答の作成に用いる。自然言語処理技術を使えば、自動顧客サービスやパーソナルアシスタントを通じて、CXに変革をもたらすことが可能だ。例えば企業は顧客サービスのプロセスを自動化し、顧客にAIアシスタントと話をしてもらうことで、あたかも人間のスタッフが対応しているかのように、顧客による飛行機の予約や各種の問題解決を手伝うことができる。自然言語処理を使用する代表的なパーソナルアシスタントには、Appleの「Siri」やAmazon.comの「Alexa」、Googleの「Googleアシスタント」などがある。

AIと機械学習を顧客サービスのカスタマイズや結果予測に活用する

 機械学習は、さまざまな分野のリクエスト処理システムの訓練に活用できる。訓練をすれば、機械学習を利用したシステムはいずれ、顧客のニーズを理解したり、顧客とのやりとりをカスタマイズしたり、事前定義イベントに基づき特定のアウトカム(結果)を予測したりできるようになる。例えばオンライン音楽サービスであれば、顧客の視聴パターンと顧客が提供するデータを機械学習で処理し、ユーザーごとに新しい楽曲を選別してレコメンドできる。それが、より予測的な顧客サービスの提供につながる。インターネットに接続したデバイスであれば、デバイスの使用状況や製造現場のセンサーデータに基づき、車や機械などの異常を早期発見し、保守の必要性を予測できる。これは顧客サービスの差異化に役立つ。

AIを画像認識に活用する

 AIは画像内から特定の物体を検知し、さまざまなアクションを実行できる。小売店であれば、店舗内にカメラを設置し、その映像を基に現状の買い物客数やレジ待ち行列の状況を把握することによって、混雑時にレジ係を自動的に補充し、精算にかかる時間を短縮するといったことが可能だ。店内の映像から、客の性別や年齢、体形などの属性を分析し、パーソナライズした服を提案するといったこともできる。

 AIは、今日の企業が直面する全ての問題を解決できる万能薬ではない。だが現行のAIであれば、CXの変革という点で極めて効果的に活用できる。導入もそれほど難しくない。企業はモバイルデバイスやIoTデバイス、Webアプリケーションを介した顧客サービス用の既存アプリケーションに、AI機能を簡単に追加できる。

APIを使ってAI機能を追加する

 既存のアプリケーションにAI機能を追加するのは、それほど難しいことではない。

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 ニュータニックス・ジャパン合同会社

AIの実装/管理を成功させる4つのポイント:データやコストの課題と解決策

AIは生産性や顧客満足度の向上などさまざまな効果をもたらすが、その導入時に、AIモデルの管理/監視、従業員のスキルギャップ、データの一貫性などの課題に悩まされる企業は多い。これらを解消するために必要な、AI戦略の進め方とは?

製品資料 ニュータニックス・ジャパン合同会社

PoC段階で30%の企業が導入を断念、生成AIプロジェクトを成功に導くためには?

企業にとって生成AIは、生産性向上や収益性増加をもたらす重要な技術だが、導入には多くの課題が存在する。PoC(概念実証)段階で約30%の企業が導入を断念するといわれる生成AIプロジェクトを成功に導くための方法を紹介する。

製品資料 日本マイクロソフト株式会社

“普通の社員”のPC活用が根底から変わる、Copilot+ PCがもたらすAI改革の姿

生成AIによって既存業務の生産性向上といった成果を上げる企業が増えている今、AIをより効果的に活用するための鍵になるといわれているのが、AI処理に特化した「Copilot+ PC」だ。AI PCが具体的にどのような変化をもたらすのかを解説する。

事例 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社

先進的なIT企業に学ぶ、業務に必要なAIを現場で開発するための環境作りの極意

企業のDX支援などを手掛けるSpeeeでは、各チームの業務に最適化されたAIエージェントを、現場レベルで自律的に開発/活用するための環境を提供している。このようにAIとデータの活用を民主化した理由とシステム構成を解説する。

製品資料 株式会社SHIFT

AIシステムのアウトプット品質を担保するための方法とは?

ビジネスにおけるAIへの依存度が高まる一方、AIのアウトプット品質に関する懸念が広まっており、導入をためらう組織も増えている。本資料では、AIシステムの精度を高め、アウトプットの品質を担保するための具体的な方法を解説する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...