開発者が注目するAIテクノロジー
AWS、Google、Azureの自然言語処理APIを比較 長所短所は?
クラウドによってAIテクノロジーが利用しやすくなり、アプリケーションに自然言語処理を組み込もうと考える開発者が増えている。
より少ないリソースでより多くを実現できるアプリケーションは、市場が変化しても生き残る可能性が高い。開発者がAI(人工知能)に注目しているのはそのためだ。
音声アシスタントの活用が広がったことで、AIに分類されるサービスの中でも、とりわけ自然言語処理APIや同様のサービスの需要が急速に拡大した。こうした自然言語処理のテクノロジーは何十年にもわたって研究されてきた。今ではそのテクノロジーを応用し、音声やテキストを基に言葉や感情を分析する製品、非構造化データを検索する機能を備える製品、会話の話者の意図を分析する製品など、さまざまな製品が登場している。
一般的な製品に広く利用できるほど自然言語処理のテクノロジーが手頃な価格になったのは、ごく最近のことだ。本稿執筆時点では、大手クラウドベンダーだけでなく、小規模ベンダーが自然言語処理のテクノロジーを利用したサービスを提供しているケースも目立っている。ベンダー各社は、人間が読み書きに利用する自然なテキストを処理する独自の機能を提供している。
そこで本稿では、広く利用されている自然言語処理APIとクラウドベースのサービスを紹介し、開発者がそれらをアプリケーションに組み込むための方法を見ていこう。
「Amazon Comprehend」
自然言語処理サービスの「Amazon Comprehend」は、Amazon Web Services(AWS)が提供するマネージドサービスだ。このサービスは、機械学習を利用して特定のキーフレーズを抽出し、指定したテキストに含まれるそのキーフレーズを特定する。AWSが提供、サポートする全てのアプリケーションと連携することができる。感情分析、トークン(小さな文字列)への分割、テキストファイルの自動整理といった機能を備えている。
Amazon Comprehendが注目されている理由の一つは、医療分野向けに事前にトレーニングされた自然言語処理サービス「Amazon Comprehend Medical」によるところが大きい。このサービスは、指定されたテキストに含まれる特定の医療情報を特定する。このサービスを利用して医療記録を詳細に分析し、広範な情報源から病状や治療法などの情報を抽出する。
「Azure Cognitive Services」
Microsoftが提供するクラウドサービス群「Microsoft Azure」では自然言語処理に関連するさまざまな製品/サービスを展開している。ターゲットとする用途に応じて多種多様なサービスに細分化されている。例えば、感情を分析するアプリケーションを構築したい開発者や、指定されたテキストに含まれる特定のキーワードを抽出したい開発者向けには「Text Analytics API」がある。インテリジェントサービス「Language Understanding」は、人の発言の意図を理解する機能を備えており、特にチャットbot、音声対応の製品/サービス、カスタマーサービスのプラットフォームを構築する際に役立つ。
「Google Cloud Natural Language」
Googleはクラウドサービス群「Google Cloud Platform」でテキスト分析サービス「Google Cloud Natural Language」を提供している。このサービスはエンティティー(固有表現)抽出、感情分析、構文解析、分類を重視している。他の同様のサービスとの差別化のポイントになっているのは、Google独自のディープラーニングモジュールがこのサービスを支えている点だ。このモジュールは、Googleの検索クエリや、AIアシスタント「Google Assistant」の自然言語理解システムにも使われている。
サードパーティー製サービス
クラウドベンダー以外にも、サードパーティーによる数え切れないほどの自然言語処理のAPIやサービスが市場にあふれている。例えば、DiffbotはユーザーがWebサイトから特定のデータを抽出できる機能を提供している。MonkeyLearnは、非構造化データの分析を通じて、ワークフローの自動化に役立てるためのサービスを提供している。こうしたさまざまなサービスが登場しているため、ある製品/サービスの機能が本当に自分の必要としているものでなければ、ためらわずに別のサービスを探すことができる。
自社が利用しているインフラを提供しているクラウドベンダーの自然言語処理のサービスを選択するのは簡単だろう。だが、ベンダー各社は独自のトレーニングのデータセットを持ち、強みや弱みがそれぞれ異なる。ベンダーを選定する前に、そのベンダーのサービスを試してみるべきだ。
理解の難しさ
どのサービスを選ぶにしても、最初はやや難しいと感じる可能性がある。機械学習は複雑な分野だ。自然言語処理APIが以前よりも身近になっているとはいえ、利用に際してユーザーが戸惑いを感じるのは当然のことだ。
用語一つをとっても、理解するのは難しい。「エンティティー」「トークン分割」「感情」、これらは正確には何を意味するのだろうか、という疑問があるだろう。こうした用語の全てを完璧に理解する必要はない。とはいえ、開発者がアプリケーションの改善点を正確に見極めるには、用語を理解しておくことが大事だ。APIやサービスの選択には、苦労してでも向き合うべきだ。入力データをどのようにコントロールし、どのように出力が生み出されるかをより深く理解する必要がある。
トレーニング
全てのトレーニングのデータセットが均一の条件で作成されているわけではない。非標準的なデータを使用するケースでは特にその点が顕著になる。感情分析が、非標準的なデータを使用するケースの一例だ。勘定分析では、分析の対象とするテキストがどの程度ポジティブかネガティブかを特定するというのが基本で、ソーシャルメディアのトレンドやオンラインレビューの分析、カスタマーサポートのトリアージ(インシデント対応の優先順位付け)などで使用される。
事前にトレーニングされた感情分析モデルが、多くの環境で素晴らしい成果を挙げることは確かだ。だがスラング(俗語)や口語表現など、データが極めて微妙な意味合いを持つ場合は、分析対象のコンテンツの感情を特定するようアルゴリズムをトレーニングさせる方が、事前にトレーニングされたモデルを使うよりもはるかに優れた成果が得られる場合がある。感情分析を支えるエンジンが分析するデータに合わせて調整されるわけではないためだ。自然言語処理の分野に不慣れな場合、この点を誤解していることが少なくない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 脆弱性対応のリードタイムと工数を大幅削減、事例に学ぶセキュリティ基盤刷新術 -
製品レビュー
[ServiceNow Japan合同会社] AIによる業務の自律化はどう実現する? 企業に求められる新たな業務基盤とは -
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ -
市場調査・トレンド
[オープンテキスト株式会社] 2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
9
「Linux」の脆弱性を生むのは誰か? ベテラン開発者の意外なミス
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
8
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー