新たに検討が必要な「2つのR」
Gartnerお墨付きのクラウド移行手法「5つのR」は今でも有効か?
クラウドコンピューティングの進化に伴い、アプリケーションは単一のソフトウェアではなく、サービスの集合体となっている。そのため企業は、これまでのクラウド移行の手法を再検討する必要がある。
クラウドコンピューティングの初期に、調査会社Gartnerはアプリケーションのクラウド移行に関する以下の5つのアプローチを定義した。同社はそれぞれの頭文字を取リ、これらを「5つのR」と呼んだ。
- リホスティング
- リファクタリング
- リバイス(更新)
- リビルド(再構築)
- リプレース(置き換え)
この5つのRが、現在でも適切かどうかに疑問を持つユーザー企業もある。本稿では最新のクラウドを念頭において5つのRを振り返り、アプリケーションのクラウド移行プロセスを考え直す。
1.リホスティング
リホスティングは「リフト&シフト」とも呼ばれ、企業がアプリケーションをオンプレミスのシステムからクラウドの仮想マシン(VM)へ移動するときのアプローチだ。このアプローチでは、クラウドへの配備に必要なパラメーターの調整以外には、アプリケーションに大きな変更は加えない。
アプリケーションの更新よりもサーバの集約に重点を置いている場合、リホスティングが有用であることに変わりはない。ただし今日では、VMよりもコンテナに興味を持ち、スケーラビリティとレジリエンシー(障害復元性)の向上を目指す企業が少なくない。コンテナを使用する場合、企業はアプリケーションの配備モデルを標準化する必要がある。このモデルに適合していないアプリケーションには変更を加えなければならない。
2.リファクタリング
リファクタリングは一般的に、アプリケーションの入出力といった外部仕様を変えずに、ソースコードの構造を改善する手法だ。アプリケーションをVMではなくPaaS(Platform as a Service)へ移行する際に必要となる。Gartnerが「5つのR」を提唱し始めた2011年頃、リファクタリングとリホスティングはそれぞれPaaSとIaaS(Infrastructure as a Service)への移行を意味していた。現在、PaaSはもっと広い意味を持ち、多くの場合クラウドベンダーが提供するホスティングリソースとWebサービスの両方を指している。
3.リバイス
リバイスは、企業がクラウドインフラでの利用に適した形にアプリケーションを変更するプロセスだ。現在パブリッククラウドベンダーが提供するサービスには、ホスティングだけでなく、数十種類ものクラウドネイティブサービスが含まれている。例えば開発者は、従来のデータベースをクラウドデータベースに置き換えて、クラウドでアプリケーションをより効率的に実行できる。
4.リビルド
クラウドへ移行するために、開発者はアプリケーションを書き直す必要がある。これがリビルドだ。このプロセスをアプリケーション全体の単なる物理的な移動のようなものだと考えている企業が少なくない。だが通常は大幅な変更が伴う。現在、リビルドにはクラウドネイティブのWebサービスにアプリケーションを置き換えること(リファクタリングとリバイスを組み合わせたプロセス)、アプリケーションを新しいクラウドベースのフロントエンドコンポーネントと、トランザクション処理のためのコンポーネントに分割することが含まれる。
リビルドの場合、クラウドにホストするアプリケーションのフロントエンドは全く新しくなるが、従来のバックエンドはそのままオンプレミスで運用するため、大きく変更されない。このように、リビルドは既存アプリケーションの全面的なクラウド移行を伴わないことがある。
5.リプレース
最後の「R」はリプレース、つまりレガシーアプリケーションをSaaS(Software as a Service)に完全に置き換えることを指す。ただしSaaSという選択肢は通常、一般的なビジネスアプリケーションにのみ使用できる。ビジネスの中核を担うビジネスアプリケーションをSaaSの形態で入手することは難しく、企業はこうしたアプリケーションを自社運用のデータセンター以外の場所で実行することは多くない。企業は適切なSaaSがある場合は移行を検討する価値があるが、こうしたSaaSが見つかることはまれだ。現在の一般的なSaaSをビジネスの中核要素として用いる場合、ユーザー企業が独自にカスタマイズをしたり、他のソフトウェアと連携させたりする必要がある。
アプリの移行に関する考え方を変える
クラウドテクノロジーは予想以上に早いスピードで進化してきた。上記の5つのRを実行しても、アプリケーションの移行プロセスが常に適切に進むとは限らない。この5つのRのうち2つを、新しい「R」――「リシンク」(再検討)とリアーキテクト(再設計)に変更すべきだ。
リシンク
現代の企業は、単にアプリケーションをクラウドに移行するのではなく、クラウドのためのアプリケーション設計をリシンクしていることが少なくない。アプリケーション設計のリシンクにより、クラウドネイティブの機能と利点を活用しながら、費用対効果の高い方法で運用したり、コンプライアンス要件を満たしていない既存のデータセンターインフラストラクチャへの投資を抑えたりできる。多くの場合、このリシンクプロセスの一環として、アプリケーションを小さなコンポーネントに分割することが含まれる。
リアーキテクト
アプリケーションの設計をリシンクした後、開発者にとっての次のステップは、そのアプリケーションのうちクラウドで実行できる部分をリアーキテクトすることだ。利用可能なWebサービスとSaaSの一覧を確認して、社内で利用しているアプリケーションのうちクラウドと互換性のある部分を変更し、最適な構成のアプリケーションを使用できるようにする。
トランザクション処理のためのコンポーネントとユーザーインタフェースのためのコンポーネントが明確に分離している既存アプリケーションは、多くの場合ユーザーインタフェースのコンポーネントをクラウドで実行するためのリシンクとリアーキテクトをしやすい。2つのコンポーネントがはっきり分離していないアプリケーションの場合は、クラウドサービスを利用することで品質とパフォーマンスを向上させることができる場合にのみ、クラウドに移行すべきだ。
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