「ブラウザOS」の可能性と課題【後編】
Chromebook導入のハードルはもうない? 「ブラウザOS」の課題を整理する
「Chrome OS」をはじめとする「ブラウザOS」は、従来型OSとの違いから生じる課題に対処する必要があると考えられてきた。それらの課題は、今も課題のままなのか。専門家に聞いた。
前編「Chromebookの『ブラウザOS』市場にApple、Microsoftが進出する?」は、調査会社VDC Research Groupのエリック・クライン氏へのインタビュー内容を基に、Webブラウザを中核要素とした「ブラウザOS」に関するベンダー各社の動きを紹介。ノート型デバイス「Chromebook」が搭載する「Chrome OS」で市場をリードするGoogleだけでなく、MicrosoftやAppleもブラウザOS市場に関心を寄せているという、クライン氏の見方を紹介した。
後編となる本稿は、企業にとってのブラウザOSの可能性と課題をあらためて整理する。
併せて読みたいお薦め記事
「Chrome OS」「Chromebook」についてもっと詳しく
- 製造業が「VDI」を使わずにWindowsからChromebookへ移行した理由
- 「Chrome OS 74」の注目機能とは? Android/Linuxアプリ利用がより快適に
- Chromebookというもう1つの選択肢 iPhone世代がブラウザベースのOSを支持する理由
Chromebookをシンクライアントとして使う
―― 企業にとって、なぜWebブラウザの重要性が増しているのでしょうか。
クライン氏 ユーザーエクスペリエンス(UX:経験価値)に対する見方が変わったからだ。これは部分的には、われわれがスマートフォンを前提として、これまでとは違うやり方で互いに連絡を取り合うようになったことと関係がある。
企業向けアプリケーションのベンダーがこぞってクラウドに力を入れ、多額の投資をして、顧客にもクラウドへの移行を促している事実にも関係がある。SAPであれ、Oracleであれ、Microsoftであれ、進化の手段としてクラウドを受け入れている。
こうした動きは、例えば大規模なERP(統合管理)やCRM(顧客関係管理)などのパッケージに依存する製造大手のユーザー企業を変化させている。ベンダー各社はユーザー企業のクラウドへの移行を後押ししている。そのやり方は最初のうちは必ずしもスムーズではなかったものの、やがてその状況から抜け出した。移行の成功事例は豊富にある。
Webブラウザはアプリケーションにアクセスするための媒体になった。エンドユーザーは今、この方法で作業をすることに慣れつつある。ベンダー各社は、Webブラウザをワークスペースにする方向へと動いている。
―― IT管理者にとって、ブラウザOSの難点は何でしょうか。
クライン氏 Webブラウザがエンドユーザーにとってのデスクトップになること自体が、潜在的な課題になる。エンドユーザーはそれに慣れなければならないからだ。ただしGoogleのようなブラウザOSベンダーだけでなく、VMwareやCitrix Systemsのような関連ベンダーによる製品機能の改良が進み、UXの問題はほとんど目に見えなくなった。
企業が直面する可能性があるもう一つの問題は、Microsoft製品関連のレガシー資産、中でも過去のバージョンの「Windows」でしか動かないアプリケーションへの対処だ。Microsoftはレガシー資産からの移行を支援しており、「Windows 10」への移行はうまくいっている。「Windows 7」のサポート終了が近づく中で、2019年は移行がさらに進むと考えられる。
―― ブラウザOSを推進させる原動力とは何でしょうか。
クライン氏 究極的には、さらなる自動化と潜在的なコスト削減だ。自動化とは、アプリケーションとデスクトップをエンドユーザーに届ける方法を最新化することで、IT部門がありふれた反復作業をこなす代わりに、もっと時間をうまく使えるようにすることを意味する。この道を進めば、ある程度の苦痛も緩和できる。OSの更新が自動化すれば、パッチの適用といった作業も軽減される。IT部門にとって管理効率化のチャンスがある。
ブラウザOSへ移行し、デスクトップ仮想化やアプリケーション仮想化製品との連携を済ませば、コストが目に見えて削減される。うまくやれば、仮想化の恩恵によってUXの質が大幅に高まり、アプリケーションの管理が簡単になって、現在よりも大幅な合理化を図ることができる。
企業にとって、ブラウザOSの採用はやがて、一層のセキュリティ強化につながると考えられる。例えば現場でのサービスなど特定の用途については、ブラウザOS搭載のデバイスが動かなくなったり、壊れたり、紛失したりした場合でも、データが失われることは基本的にはない。エンドユーザーは単純に新しいデバイスを入手してログインし、作業が中断した部分から続行できる。これは前代未聞の価値提案だ。中断した部分から再開できるというコンセプトは説得力が大きい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ブラウザOS」の可能性と課題
アプリケーションをデバイスにインストールして使う従来型OSとは異なり、Webブラウザを介したWebアプリケーションの利用を中心とした「ブラウザOS」。Googleの「Chrome OS」で知られるブラウザOSは、企業にどのような価値をもたらし、どのような課題を抱えるのか。調査会社に聞いた。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] 複雑化しがちな「SASE運用」 IT・医療・金融などの事例に見る導入成功の秘訣 -
製品資料
[フォーティネットジャパン合同会社] 「SD-WAN」導入で失敗しないための5つの重要事項 -
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] VPNの代替候補「ZTNA」を理解できるようになる“3大要素”とは? -
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] すぐ分かる「SD-WAN」選定のポイント 成功企業はどんな成果を出した? -
製品資料
[SCSK株式会社] 「Dropbox」管理・運用の困りごと解決ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
みずほ証券が「液冷サーバ」を採用 1日3.6億件の計算を支えるための要件
-
4
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
6
いまIBM iエンジニアが直面する「5つの技術的課題」とその解決策
-
7
Microsoft 365の「テナント統合・分離」問題 手戻りのない道を選ぶ秘訣とは?
-
8
「身代金を支払う」以外のランサムウェア対策は本当にあるのか?
-
9
SAP導入後も残る“Excel依存” 京急電鉄は「kintone」でどう解消した?
-
10
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー