SAPがECCのサポート延長を発表。タイムリミットの緩和により企業のS/4HANA移行は促進するのか、それとも問題が5年先送りされるだけか。
SAPは、多くの顧客が2025年までに「SAP ERP Central Component」(SAP ECC)から「SAP S/4HANA」に移行できないことを認めている。
同社は「SAP Business Suite 7」のコアアプリケーションのメインストリームメンテナンスを2027年末までサポートする予定だと発表した。その後は、延長メンテナンスを2030年末までオプションで提供するという。
SAPの共同CEOで取締役会のメンバーを兼ねるクリスチャン・クレイン氏は次のように語る。「当社の顧客は将来S/4HANAに向かう意思を示しており、当社がこのプラットフォームに長期にわたって取り組むことを期待している。S/4HANAがもたらす画期的な機会を十分生かせるように、顧客のプロジェクトのペースや複雑さを考慮していく」
クレイン氏がこのとき引き合いに出したのは、最近実施したSAPユーザーグループへの調査だった。南北アメリカとドイツで行われたこの調査によると、ユーザーグループのメンバーがS/4HANAへの移行を計画していることが明らかになったという。
ただし、SAP ECCからS/4HANAに移行するにはERPの完全実装が必要になることが多い。その場合、コストがかさみリスクも高くなる。多くの場合、SAP ECCのビジネスプロセスや機能をS/4HANAの等価な機能に置き換えるだけではビジネス価値は上がらない。S/4HANAの新しいユーザーインタフェース「SAP Fiori」を利用するなら、エンドユーザーには新たなトレーニングが必要になる。
コンサルティング企業Resulting ITの調査(2019年12月)により、スキル不足や新しいERPシステムの核となるメリットについての理解が欠けていることが明らかになった。
同報告書は、Brexit(英国のEU離脱)などを原因とするスキル危機が迫りつつあることを強調している。こうした状況により、S/4HANAの導入を目指す企業にとっては請負業者の費用が上がる恐れがある。
以前Gartnerのアナリストを務め、現在はResulting ITで非業務執行取締役を務めるデレク・プライアー氏は当時次のように述べている。「この調査結果は、回答者の多くがS/4HANA移行計画の策定に取り掛かったばかりであることを示している。実践的経験を得るための稼働例やそれに近い実例が不足している」
「当社がメンバーに行った調査では、S/4HANAに移行しない最大の理由はそのコストと変更管理にあることが示されている。つまり明確なビジネスケースが必要だ。SAPによれば、S/4HANAに移行する顧客は世界中で増え続けているという。当社は引き続きSAPに協力し、より多くのユースケースを示したいと考えている。そうすれば、メンバーは今後のロードマップについて情報に基づいた決断を下せるようになる」
UK & Ireland SAP User Groupの会長を務めるポール・クーパー氏は次のように話す。「当団体の年次ユーザーカンファレンス(2019年12月開催)では、SAP Business Suite 7(SAP ERP/SAP ECC 6.0)のサポート終了方法と、S/4HANAのロードマップの不明瞭さが顧客との関係性において不利に働いていることに注目した。当団体は顧客の声を聞くようSAPに求めた。その結果、SAP Business Suite 7のメンテナンス期限を延長したことは明るい話題だ」
「SAP Business Suite 7に多額の投資をしてきた企業は、この発表によってさらに時間をかけて確実にS/4HANAへの移行計画を立てられるようになると期待できる」
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