2020年03月24日 08時00分 公開
特集/連載

エッジコンピューティングシステムを自社開発してはならないエッジ:データのフロンティア【前編】

エッジは次のフロンティアであると見なされている。そこでデータを処理するエッジコンピューティングは創造的破壊を起こし、ビジネスに新たな価値をもたらすだろう。しかし、自社でやろうと考えるべきではない。

[Cliff Saran,Computer Weekly]

 業界は、既存のコンピュータネットワークよりも、いわゆる「エッジ」で生成されるデータ量が上回ると予測している。エッジは次の最先端分野と考えられ、アナログの世界とデジタルの世界の橋渡しをする。アナログセンサーのデータをネットワークでストリーミング処理できるようにすることで、信頼性を高め、ユーザーエクスペリエンスを改善し、効率を向上させる。

 工業分野ではセンサーデータを集め、熱、光、圧力といった監視可能な要素を計測し、それによって機器が安全かつ最適に機能していることを確認する。その後、工業制御システムでこうしたデータを処理し、監視対象機器の機能を制御する方法を決定する。

 従来、データは全てローカルの制御システムで処理されていた。制御システムに必要なデータなど、意思決定のためのリアルタイムデータはパブリッククラウドではなくエッジで処理する必要があるというのが業界の共通認識だ。だが、パブリッククラウドやオンプレミスデータセンターを利用してIoT(モノのインターネット)機器全体からデータを取り込むことには多くのメリットがある。取り込んだデータを集約して、機械学習アルゴリズムを改善することができる。

エッジのコンバージェンス

 これまで、データ取得システムやデータ制御システムは運用テクノロジーだと考えられてきた。そのため企業のIT部門の責任範囲外だった。だが、HPE(Hewlett Packard Enterprise)でエッジおよびIoTラボ部門のグローバル責任者を務めるトム・ブラディシッチ氏は、エッジコンピューティングではIT部門が役割を担うことになると説明する。

 ブラディシッチ氏によると、エッジコンピューティングによってコンバージドシステムを実現することで、運用テクノロジーの担当部門がこれまで管理していたスタンドアロン機器が不要になるという。コンバージェンスは業界にとっても良いことだと同氏は話す。工業システムが必要とする多種多様な機能を全て1つの機器に集約すれば、利便性が増し、機器を購入しやすくなり、コストが削減され、信頼性が向上して消費電力が改善する。

 カメラと音楽プレーヤーを「iPhone」にまとめたことが、Appleを世界最大の音楽およびカメラ企業に押し上げた。これと同じくらい、IoTのコンバージェンスの価値は大きいとブラディシッチ氏は考えている。同氏によればエッジでのコンバージェンスは、複数の機能がスマートフォンに統合されたときに起きたような、業界の「創造的破壊」につながるという。「Uberが存在するのは、GPS、スマートフォン、地図が集約されたからだ。これによって業界全体が一変した」と同氏は話す。

 Forrester Researchのレポート「Predictions 2020: Edge Computing」(2020年のエッジコンピューティング予測)によると、エッジコンピューティングに必要な全てのソフトウェアとハードウェアを1社が提供する可能性は低いという。同レポートはエッジコンピューティングを検討中の企業に対し、自社で何らかの機能の開発を試みることは避けるよう助言している。Forresterは次のように指摘する。「企業は世界中の帯域や接続の制約に対処しているため、エッジコンピューティングのプラットフォームや接続は、複雑さという点でもコストの点でも自社で設計、管理、接続できるほど簡単なものではないとすぐに気付くだろう。エッジソリューションをサポートする企業は、独自のソリューションを構築して導入するのではなく、特定市場のエッジコンピューティングインテグレーターと協力することになる」

 Forresterでアナリストを務めるアビジット・スニール氏は次のように述べる。「エッジエコシステムに含まれる要素はパートナー1社が提供できるものよりもずっと多いと感じる。この点は、顧客がエッジコンピューティングの導入を試みる2020年にさらにはっきりするだろう。エンドポイント機器への接続、ストレージの管理、計画立案、展開は全て異なるパートナーから提供される可能性がある」

 Forresterは、エッジクラウドサービス市場が50%以上成長すると予測する。同社のPredictions 2020の指摘によると、あらゆるプロバイダーが分散エッジコンピューティングインフラで基本的なIaaSサービスと高度なクラウドネイティブプログラミングサービスを開発しているという。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoftなどのパブリッククラウドプロバイダー、AT&T、Telstra、Vodafone Groupなどの通信事業者、Red HatやVMwareなどのプラットフォームソフトウェアプロバイダー、Akamai Technologiesなどのコンテンツデリバリーネットワーク、Digital Realty Trustなどのデータセンターコロケーションプロバイダーが含まれる。

 5Gネットワークは広帯域と低遅延を約束する。この5Gネットワークが全機器にまたがる統合ネットワークのプロトコルになるとスニール氏は話す。「大型ショッピングセンターや病院に5Gが既に導入されているなら、そこでは信頼性の高い、広帯域で低遅延の接続をエッジコンピューティングに利用できることになる」と同氏は説明する。

 エッジコンピューティング市場の発展に伴い、遠距離通信事業者がオープンソースの5Gエッジコンピューティングスタック「Akraino」などのプロジェクトに貢献するようになるとForresterは述べる。Equinixなどのコロケーションプロバイダーも、分散インフラ上で実行されるソフトウェア抽象化層に投資している。

後編(Computer Weekly日本語版 4月1日号掲載予定)では、エッジコンピューティングの展望やStarbucksでの導入事例、開発の注意点などを紹介する。

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