複数の銀行が量子コンピュータの可能性を検証している。従来型コンピュータと量子コンピュータのハイブリッドモデルや量子コンピュータによる暗号解読への対抗策を紹介する。
スペインを拠点とするCaixaBankは、量子コンピューティングを使って顧客の信用リスクを計算する機械学習アルゴリズムを開発している。同銀行は量子コンピューティングの業務への応用について詳しく分析しており、この取り組みもその一環だ。これは前会計年度に同銀行が実施した量子コンピューティングの検証に続く取り組みになる。
量子コンピュータと従来型コンピュータを併用するハイブリッドモデルは、顧客の信用リスクを計算するさまざまな段階で両種のコンピュータを利用する。この技術により膨大なデータセットでの機械学習の効果が高まる。
従来型コンピュータでは根本的に不可能な計算が量子コンピュータによって可能になる。実用化されれば、計算能力という点でそろばんから近代コンピュータへの進歩をはるかにしのぐ飛躍が実現することになるだろう。理論上は、研究者がさまざまな変数の組み合わせを含む問題を迅速に解決できる可能性がある。
CaixaBankは、1000人の疑似ユーザーに対応するパブリックデータを使ってリスク分析用量子コンピューティングを検証した。量子コンピューティングを銀行のさまざまなシナリオに試している銀行は複数存在し、CaixaBankもその中の一つだ。
この検証の結果「ハイブリッドコンピューティングにより、従来の方法と同等の結果を短時間で得ることができる」ことを実証したとCaixaBankは主張する。
この1年、CaixaBankは従来アルゴリズムの量子バージョンをデプロイするスキルを高めてきたという。「金融業務のさまざまな分野で量子コンピューティングの可能性を探るため、CaixaBankにとってこうした調査への投資は不可欠だ。とはいえ、最初の商用アプリケーションを実現するにはしばらく時間がかかる可能性がある」と語る。
こうした動きはCaixaBankに限ったことではない。オランダのABN AMRO Bankは、オンラインバンキングのセキュリティ確保に量子コンピューティングを利用する方法を研究者と共同研究している。デルフト工科大学とオランダ応用科学研究機構との連携の目的は、量子鍵配送を使ったデータトラフィックの保護の実証だ。
将来、量子コンピュータによって暗号が突破される恐れがある。そうなれば、現在のインターネットやモバイルバンキングのセキュリティシステムでは不十分になるだろう。
量子コンピューティングには他にも次のような5つの応用分野がある。
1.薬や素材の発見:分子や化学の相互作用における複雑さを解明することで、医薬品や素材の発見につながる。
2.サプライチェーンとロジスティクス:地球規模のシステム全体から最適経路を探し出すことで、極めて効率の高いロジスティクスとサプライチェーンを実現する。例えば休暇シーズン中の配送に合わせて保有車両の運用を最適化する。
3.金融サービス:投資を改善するため、財務データをモデル化して重要かつ世界的なリスク要因を特定する方法を探る。
4.人工知能(AI):画像や動画の検索など、データセットが肥大化し過ぎる恐れがある場合に、機械学習などのAIを大幅に強化する。
5.クラウドセキュリティ:量子物理学の法則を利用してプライベートデータの安全性を高めることで、クラウドの安全性を高める。
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