NAND型フラッシュメモリより1000倍高速で消費電力は1000分の1というReRAM。このReRAMを開発しているイスラエルのスタートアップ企業の取り組みを紹介する。
イスラエルのスタートアップ企業Weebit Nanoは、同社の技術がSSDの後継として最有力だと考えている。Weebit Nanoは酸化ケイ素ReRAM(Resistive RAM:抵抗変化型メモリ)の開発の真っただ中にあり、幾つかの製品化も進行中だ。同社によると、このメモリはNAND型フラッシュメモリより1000倍高速で、100倍耐久性があり、消費電力は1000分の1に抑えられるという。
同社CEOのコビー・ハノック氏は、フランスの本誌姉妹誌LeMagITに「当社は製品を1ステージずつ開発するつもりだ」と語った。
「まず当社の技術をオンボード装置の他社チップと統合する予定だ。その後、内蔵コンポーネント市場を目指し、独立したコンポーネントの販売を計画している」
また同氏は次のように付け加えた。「参入リスクが最も低いのは内蔵コンポーネント市場だと考えたが、最終的にはデータセンター向けコンポーネントを目指している」
同社が頼りにするのは中国からの大口発注だ。中国ではフラッシュストレージの需要が生産能力の4〜5倍あり、「中国市場は2023年までに820億ドル(約8兆8300億円)になると推定される」と同氏は話す。
中国を拠点とするメモリメーカーXTX Technologyは2019年12月、XTX Technology製品とReRAM回路を統合する検証に成功した。XTX Technologyが2020年末までにこの統合コンポーネントの搭載を目指すのは産業用ロボットだ。こうしたロボットではデータをローカルで処理する必要があり、永続ストレージが必要になるためだ。
目標は、工作機械のオンボードファームウェアに現在使われているNOR型フラッシュメモリの代わりにWeebit Nano製品が使われることだ。
ReRAMは、充放電されるナノメタルのフィラメントを使って情報ビットを構成する。フラッシュセルのメカニズムはドアの開閉に似ている。そのフラッシュとは異なり、耐久性がより高い方法で情報を表すためにフィラメントの破壊と再編を繰り返す。
「この技術はコンポーネントの抵抗を非常に高めることができる。150度の環境で10年間データを保持することが可能だ」(ハノック氏)
ReRAMの主な特徴として特筆すべきは、現在NAND型フラッシュメモリを生産している工場で簡単に製造できることだ。
Weebit NanoがReRAMの開発で多くのことを学んでいるのは、フランスのグルノーブルを拠点とするLETI(電子情報技術研究所)の専門技術だ。
フランス原子力・代替エネルギー庁の付属施設であるLETIは、マイクロエレクトロニクスとナノテクノロジーに関して世界的評価を得ており、Weebit Nanoは同研究所によるプロトタイプ開発支援の恩恵を受けている。Weebit Nanoは、同研究所の製品の導入を希望する300社以上の取引先獲得を期待している。
LETIとの連携にはもう一つ目的がある。データセンターにおける機械学習トレーニングワークロード用ハードウェアとしてReRAMを最適化することを双方が目指しているためだ。
「当社メモリの構造、つまり酸化物に浸されるフィラメントの構造とシリコンの形状が脳のシナプスの構造に最も近い」と語るハノック氏は、この構造こそ「脳のシミュレーションではなくエミュレーションを行う」ニューラルネットワークアルゴリズムの作成を可能にすると説明する。
LETIとWeebit Nanoは「Flash Memory Summit 2019」において、DRAMよりも高速かつ少ない消費電力でスパイキングニューラルネットワークアルゴリズムを実行できるソリューションを披露した。
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