バックアップ、リカバリー、長期的なウォームアーカイブ、コンプライアンス、WORMといった用途やデータを保護する「エアギャップ」など、テープがもたらすメリットを解説する。
テープはIT業界で最も長寿の磁気媒体で、HDDやSSDをしのぐメリットが多数ある。メリットには容量やコストが含まれる。テープシステムを導入すれば、安価に運用できて拡張もしやすい。テープはファイルシステムと直接連携させてNASと同じくらい簡単に利用できる。テープは極めて確実な媒体だ。業界専門家によると、HDDよりも安定性は高い。
テープの容量は増大しているものの、依然として速度は遅い。100TBのアーカイブでさえ、手作業のプロセスや機械式のテープライブラリを必要とする。テープのメリットを最大限に活用するためには、確実なバックアップとアーカイブの手順を必要とする。
テープには、面密度のおかげでストレージ密度を大幅に高めることができるというメリットもある。テープシステムはHDDよりも媒体の表面に保存されるデータが少ない。
テープの場合、1平方インチ当たりに保存されるデータはHDDの10分の1程度。そのためテープメーカーは、ドライブやカートリッジの物理的な寸法を変更することなくストレージ容量を継続的に増やすことができる。
テープは速度も高速化している。LTO-8は非圧縮時毎秒360MB(MBps)、圧縮時750MBpsのデータ転送速度を実現する。この速度であれば、ビジネスインテリジェンスや分析のためにアーカイブされたデータをテープから読み込むには十分であり、バックアップやリカバリー時間も短縮できる。
テープには依然として手動または機械的なワークフローに依存しているという欠点があり、HDDに比べて復旧に長時間を要する可能性がある他、メディアを慎重に管理する必要もある。
1.バックアップと復旧
バックアップは、LTOやLTFSといった新技術の登場以前から存在していた用途だ。LTFSによってテープを読み込むために専用のソフトウェアを使う必要がなくなったが、バックアップソフトウェアもまたメディアに依存しない傾向が強まっている。そのおかげでスナップショットを保存するHDDと長期的なバックアップを取るテープを組み合わせることができ、クラウドも利用できる。
Freeform Dynamicsのアナリスト、トニー・ロック氏によると、テープのメリットの一つはコピーのしやすさにある。ソフトウェアを使えば2台以上のテープドライブに同時に書き込み、ローカルのコピーと社外ストレージ用のコピーを作成できる。
2.長期アーカイブ
テープは運用コストが低く安定性が高いことからデータアーカイブに適している。分析のためにデータを取得したり過去の記録をHDDに保存したりすればストレージコストが増大する。テープアーカイブは大量のファイルを保存する研究開発やメディア/エンターテインメント業界でも人気がある。
データ管理ソフトウェアの進化もテープアーカイブを容易にした。「IBM Spectrum Archive」はLTFSを使ってデータをHDDやテープに書き込める。
3.ウォームアーカイブ
テープシステムの高速化に伴い、記録やデータのニアラインストレージやウォームアーカイブ用にテープが使えるようになった。テープライブラリや「ジュークボックス」サブシステムの利用とテープカートリッジの容量増大が組み合わさって、テープとHDDの性能差はある程度縮小している。
FLAPE(Flash Plus Tape:フラッシュとテープを組み合わせた利用)のような技術によってさらに性能は向上する見通しだ。QuantumやSpectra Logicなどのサプライヤーは、テープとHDDやSSD、クラウドを組み合わせてコストと性能を最適化している。
4.WORMとコンプライアンス
コンプライアンスや規制を理由とする長期的なデータの保持は、企業にとって大きな問題になりつつある。この筋書きにおいて、変更できないデータ記録を作成できるテープはうまく機能する。ITチームはテープをWORM(Write Once Read Many)化して、オンサイトかオフサイト、あるいはその両方に保存できる。
テープからのデータ復旧は、他のメディアに比べると時間がかかるがコストは安い。パブリッククラウドからのデータ復旧は一般的に、データの取り出しに料金を伴う。組織がテープアーカイブのコンプライアンスを徹底させるためには確実なアーカイブシステムを必要とする。
5.セキュリティと「エアギャップ」
ここ数カ月で最も注目されているテープの用途はセキュリティだ。被害者が自分のデータにアクセスできなくなるランサムウェアやランサムウェアDoS(サービス妨害)攻撃に対抗するためには、効果的なバックアップを持つことが不可欠になる。
テープの利点は、オフラインで、親ITシステムから完全に切り離した状態(エアギャップ状態)で保存できる点にある。たとえランサムウェアによってネットワークが使えない状態になったとしても、組織はこれを使ってデータを復旧できる。
だがこの仕組みを機能させるためには、セキュリティの手順とオフサイトのバックアップ手順の両方が確実でなければならない。不完全なデータを保存したりマルウェアのバックアップを取ってしまったりすれば意味はない。
「自分がバックアップしている情報が、そもそもクリーンであることを確認しなければならないという課題がある。ランサムウェアの多くは、検出される以前から長期間にわたって潜伏している」とロック氏は警告した。
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