2021年03月11日 08時00分 公開
特集/連載

クラウドファイルストレージの5つのメリットクラウドビッグ3のファイルストレージ

かつてクラウドストレージといえばオブジェクトストレージだったが、クラウド大手3社はファイルストレージも提供するようになった。クラウドのファイルストレージのメリットとは何か。

[Stephen Pritchard,Computer Weekly]
iStock.com/HYWARDS

 「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」(GCP)のサービスはオブジェクトストレージに結び付いているものが多い。だが、3社は階層型ファイルストレージサービスも開発している。

 クラウドでのファイルストレージには、

  • ハイパースケーラーの技術スタックに組み込まれるネイティブサービス
  • 「Azure NetApp Files」のように専門サプライヤーとのパートナーシップによるもの
  • IDCのアナリストが「オーバーレイ」ファイルサービスと説明するもの

の3形式がある。

 これらはハイパースケーラーのブロックストレージまたはオブジェクトストレージを、ソフトウェア的にファイルシステム(通常はSMBやNFS)として提供する。この例には、Elastifile(現在はGoogle傘下)製品やNetAppの「Cloud Volumes ONTAP」などがある。

 どのアプローチにもメリットがあり、ユースケース、ビジネス要件、予算に応じてクラウドストレージを細かく構成できる。クラウド大手3社のファイルストレージはそれぞれ異なるため、ユースケースによっては適性に差が出るオプションもある。

 大半の企業はオンプレミスでNASのファイルストレージを運用し続けている。ローカルでもクラウドでもファイルストレージを一貫して運用できれば管理のオーバーヘッドが削減され、新たなスキルセットを構築する必要性も減少する。

 管理が容易になることを過小評価してはいけない。クラウドストレージを統合すると、ITアーキテクチャが複雑化する。使い慣れたファイルストレージが使えれば役に立つ。一貫性のあるファイル構造があれば、クラウドとのワークロードの移動が容易になる。

アプリケーションの互換性

 エンタープライズアプリケーションの大半は、まだオブジェクトストレージとの完全な互換性がない。「Amazon S3」(Simple Storage Service)やRESTful APIのサポートが増えているが、ファイルストレージなら手を加えなくてもそのまま機能する。

 ファイルストレージならばソフトウェアを書き直す必要がなく、クラウドとの間でワークロードを相互に移行できる。リフト&シフトが実際に可能になるのは、基盤となるファイル構造が同じである場合に限られる。

 恐らく、災害復旧も容易になる。クラウドベースのバックアップデータを使ってアプリケーションを立ち上げることができる。互換性やパフォーマンスの問題が伴う恐れのあるオブジェクトストレージやオーバーレイサービスを使用する必要はない。

 ファイルストレージを使えば、階層型ファイル構造を前提とするアプリケーションやカスタムプロセス間でのデータ共有も容易になる。

ハイブリッド環境のサポート

 オブジェクトストレージならハイブリッドクラウドで機能するだろう。そのため、サプライヤーはハイブリッドクラウドの運用が容易になるようにオンプレミスのオブジェクトストレージにも投資している。ソフトウェア定義ストレージもオブジェクトベースのものが多い。

 オブジェクトストレージを使うには専門知識と投資が必要だ。極めて大きなデータセットを保持または処理しなければならない場合、地域をまたいでデータをレプリケートする必要がある場合は、ハイブリッドクラウドオブジェクトストレージを利用する可能性が最も高い。

 ファイル構造(通常はNFSやSMB)をベースとするハイブリッド環境により、NASをクラウドに拡張してオンデマンドで容量を購入できる。ローカルボリュームでは高パフォーマンスを提供し、クラウドでは追加容量を低コストで得ることができる。

 NASサプライヤーは、クラウドへの階層化とバックアップやアーカイブなどのユースケースのサポートを増やしている。とはいえ、ファイルベースのハイブリッドストレージの利点は特別な技術を必要としないことだ。アプリケーションやユーザーがオンプレミスとリモートでデータにアクセスできれば、それだけで十分だ。

 AWS、Azure、GCPは全てネイティブクラウドNASサポートとNetAppの技術に基づくボリュームを提供する。

低レイテンシのユースケースのサポート

 低レイテンシと高スループットを必要とするアプリケーションには、オブジェクトストレージよりもファイルストレージが適している。IDCが指摘するように、ファイルストレージがプロバイダーの他のリソース(コンピューティングなど)と緊密に統合されるため、パフォーマンスを最大限に高めるのに役立つ可能性がある。

 スケーリング機能を使ってアーカイブなどのサービスを低コストで提供するオブジェクトストレージとは対照的だ。

さまざまなサービスレベルを利用可能

 クラウドのファイルストレージならば、オンプレミスのストレージよりも柔軟なコスト構造を利用できる。

 エンタープライズNASは、性能要求が最も厳しいアプリケーションに合わせてハードウェアのスペックを決める必要がある。

 クラウドならばパフォーマンスレベル、SLA、ファイルシステムをニーズに応じて選択できる。AWSは「Amazon EFS」(Elastic File System)に「標準ストレージクラス」と「低頻度アクセスストレージクラス」という価格帯を用意している。

ハイパースケーラーのクラウドファイルストレージオプション

 AWSのファイルストレージサービスがAmazon EFSだ。クラウドとローカルストレージで運用されるNFSベースのアーキテクチャだ。「Windows」専用のオプションを求めるユーザー向けの「Amazon FSx for Windows File Server」もある。標準ストレージクラスのボリュームと低頻度アクセスストレージクラスのボリュームによる階層化を自動化できる。

 「Azure Files」はクラウドとローカルでSMBプロトコルをサポートし、Windows、「Linux」「macOS」に対応する。ボリュームは最大4PB。当然、AzureはWindowsを扱うIT部門に重点を置き、互換性のあるアプリケーション向けにクラウドへのリフト&シフトをサポートする。「Standard」「Premium」「Ultra」の3つのパフォーマンスがある。

 Googleは「Google Compute Engine」のインスタンスと「Kubernetes」のインスタンス向けのNASとして、NFS v3対応の「Filestore」サービスを提供する。これには「Standard」と「Premium」がある。

 MicrosoftはLinuxとWindows向けのエンタープライズ用プレミアムオプションとしてAzure NetApp Filesも提供する。Microsoftによると、パフォーマンスが高い企業アプリケーションやWebアプリケーション、データベース、HPCをターゲットにするという。

 NetAppもAWSとGCP用に「Cloud Volumes」を提供する。これには、「Standard」「Premium」「Extreme」の3つの階層がある。

 GoogleによるElastifileの買収により、企業に新たな選択肢がもたらされる。Googleによると、このクラウドベースのNASは企業アプリケーション向けに構成されているという。

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