ファイルシステムベースのストレージとオブジェクトストレージを統合することで両者の利点を享受しようという動きがある。
ストレージにはパフォーマンス、コスト、回復力、スケーラビリティというニーズがある。ITアーキテクトは、絶えずこのバランスを取らなければならない。
その結果がエコシステムの混在だ。大規模なデータセットとアーカイブにはオブジェクトストレージ、非構造化データにはファイルシステムベースのNAS、構造化データにはブロックベースでパフォーマンスの高いアレイが用いられる。
だが非構造化データの増加に伴って、クラウドスケールの利点とファイルシステムベースによるアプリケーション互換性を融合させた、ファイル/オブジェクト統合ストレージを作成する動きが生まれている。
アプリケーションは、ファイルとオブジェクトの両方でデータにアクセスできる。どちらでアクセスするかはデータの使用方法に応じて最適化される。頻繁にアクセスするローカルレコードにはファイル、長期のウォームストレージまたはコールドストレージにはオブジェクトを使うことができる。複数のアプリケーションが異なるプロトコルを使う場合でもストレージを共有することが可能だ。
一例として、IBMはオブジェクトシステム上の長期バルクストレージを挙げる。このオブジェクトシステムには、分析アプリケーションやエンドユーザーの共有ファイルが同居する。ファイルプロトコルを使って最新のオブジェクトストレージにアクセスすることも可能だ。
ファイルストレージでは、ファイルはOSやアプリケーションが直接アクセスできるディレクトリ構造に整理される。ファイルストレージは、読み取りと書き込みに優れたパフォーマンスを発揮する。だが、大規模になると管理が難しくなる。
オブジェクトストレージは豊富なメタデータを使ってオブジェクトを整理する。オブジェクトストレージは場所やハードウェアとは無関係に機能し、際限なく拡張できる。結果として、オブジェクトはクラウドストレージの主要な構成要素になっており、企業の大規模なオンプレミスデータプロジェクトにも使われている。
だが、物理ストレージがアクセスプロトコルに応じて変わるわけではない。ドライブ上ではバイト列で構成されることに変わりはない。ベンダーがストレージのプールを複数のアクセスプロトコルに公開できれば、データの格納方法やアプリケーションの設計方法に柔軟性を持たせることができる。
ベンダーの作業の多くは、ファイルとオブジェクトのメリットを組み合わせ、両者の制約の克服を目指すことになる。
「ファイルシステムは全てのコンピュータシステムの重要な部分であり、アプリケーションやOSがデータを格納する最も一般的な方法であることは変わらない」と話すのは、451 Researchで応用インフラおよびストレージ技術部門のシニアアナリストを務めるスティーブン・ヒル氏だ。
「ファイルシステムは、シンプルなディレクトリを提供する。ただし、ファイルシステムが提供する属性はファイル名、ディレクトリツリーなどわずかな情報に限定される。そのためコンテンツについて得られる洞察は多くない。オブジェクトストレージは、データについてのさまざまな抽象化モデルを提供し、カスタマイズ可能な広範なメタデータをサポートする」
ヒル氏が指摘するのは、この強力なメタデータが提供する「非構造化データのセキュリティ、保護、ライフサイクル管理のきめ細かな自動化」だ。だが、従来のアプリケーションからオブジェクトストレージに直接アクセスすることはできない。
オブジェクトストレージを操作するにはアプリケーションをリファクタリングするか、ファイルとオブジェクトの間で変換を行うゲートウェイを使用する必要がある。これにはボトルネックが生じる恐れがある。
後編では、統合ストレージのメリット/デメリットとユースケースを紹介する。
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