ハイブリッド/マルチクラウドはもはや常識だ。今後はマルチクラウドを前提としたワークロード配置の最適化やコスト効率の向上をよりインテリジェントに実現するツールが重要になる。
IT部門は、プライベートクラウドやオンプレミスシステムと並行して複数のパブリッククラウドを運用することに目を向けるようになっている。企業はプロバイダーに「ロックイン」されることを望んでおらず、1つのパブリッククラウドプロバイダーから全てを購入するリスクを減らしたいと考えている。だがオンプレミスで運用し続けなければならないアプリケーションを保有している企業もある。必要な機能を提供しているパブリッククラウドプロバイダーが1社しかない場合もある。
仮想のチェス盤がハイブリッド/マルチクラウドを表すようになると、ワークロードという駒を置く場所を決めるのはますます複雑になる。クラウドプロバイダーを1社しか利用していなくても、ワークロードを監視することが予算超過防止に役立つ可能性がある。
Total Gas & Powerでテクノロジーアーキテクトを務めるドミニク・メイドメント氏によると、同社はNutanixの「Beam」というツールを使ってAmazon Web Services(AWS)のコストを確認したという。「当社には、プロフェッショナルサービス契約を結んでいるのにほとんど使われていないAWSリソースが幾つかあった。Beamのレポートを使ってこうしたリソースを非アクティブにし、月額費用を約50%削減した」と同氏は話す。
インテリジェントなマルチクラウド管理をサポートするツールは、IT資産管理、経費管理、ライフサイクル管理など、さまざまな分野から提供されている。
2020年1月、Gartnerはクラウド管理プラットフォームに関するマジッククアドラントレポートを公開した。同レポートの対象は、マルチクラウドのサービスとリソースを管理するツールとクラウドインフラのマネージドリソースのガバナンス、ライフサイクル管理、仲介、自動化を提供するツールだ。
Gartnerが評価したのは、プロビジョニングとオーケストレーション、サービスリクエスト、インベントリと分類、監視と分析、コスト管理とワークロードの最適化などの機能だ。
Gartnerの分析で興味深いのは、多くの大手ソフトウェア企業が自社の製品ポートフォリオを強化するためにクラウド管理技術を買収している点だ。クラウド管理プラットフォームのマジッククアドラントには、あまり知られていない小さな企業が数社登場している。
Flexera Softwareは2018年にRightScale、Snow Softwareは2019年にEmboticsをそれぞれ買収した。FlexeraとSnowはソフトウェア資産管理ツールでその名が知られており、この買収によってクラウド運用管理への足掛かりを得ている。
Gartnerによると、Emboticsはワークロードを理想的なクラウドに自動的にデプロイするツールをSnowにもたらしたという。同様に、RightScaleの「Optima」はFlexeraの顧客にコスト管理とリソース最適化の製品をもたらすとされている。この製品はスタンドアロンで使用することも、他のクラウド管理機能と統合することも可能だ。
VMwareもこのマジッククアドラントレポートに取り上げられている。2018年、同社はCloudHealth Technologiesを買収した。CloudHealthはWavefront(VMwareが2017年に買収)を基盤とし、リアルタイムのメトリクス監視と可観測性プラットフォームを提供する。
VMwareは「vRealize Operations」も提供する。同製品はプライベート、ハイブリッド、マルチクラウドのアプリケーションとワークロードを管理するIT管理者向けにAIベースのサポートを提供するとされている。
ScalrとMorpheus Dataはあまり知られていない企業だが、Gartnerはクラウド管理プラットフォームをリードする企業だと認めている。Scalrは北米以外への拡大計画があまり進んでいないため、Gartnerの評価を下げている。Morpheus Dataはライバル企業に比べてブランド認知度が低いためにポイントを落としている。
クラウド管理プラットフォームだけでなく、SaaSで監視ソフトウェアを提供するサードパーティーツールもある。AppDynamics、Dynatrace、New Relicはパブリッククラウドでアプリケーション監視を提供する。
クラウドネイティブアーキテクチャ、コンテナ化、マイクロサービスの利用が増え続けると想定すると、IT部門は自社のITインフラを構成するさまざまなコンポーネントを全て把握するのがますます難しくなる。Forrester Researchのレポート「Unify application portfolio management and cloud tagging hybrid systems require common management」(アプリケーションポートフォリオ管理とクラウドタグ付けのハイブリッドシステムを統一するには共通の管理が必要)では、同社で主席アナリストを務めるチャールズ・ベッツ氏とジョージ・ローリー氏が、可視性を高めるためにIT部門がIT資産にタグ付けする方法を議論している。
クラウドサービス、アプリケーション、仮想マシン、コンテナのいずれであっても、説明タグを使えばワークロードの所有者とその役割を素早く識別できる。この情報によってIT管理の特定タスクの自動化を促進できる。
ITインフラの複雑さが増すにつれ、インテリジェントなワークロード管理に必要なデータを全て提供する単一の製品がないことに企業は気付く可能性がある。データをさまざまなレポートツールから取り出す必要性がますます高まる。この情報によって、ITワークロードの移行と再デプロイを自動化するシステムが促進されるだろう。
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契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。
半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。
クラウドファーストの流れが加速する中、無計画に構築されたハイブリッドクラウドの弊害が多くの企業を悩ませている。ITオペレーションの最適化を図るためには、次世代のハイブリッドクラウドへのモダン化を進めることが有効だ。
ワークロードを最適な環境に配置できる手法として注目され、多くの企業が採用しているハイブリッドクラウド。しかし、パフォーマンス、法令順守、コストなどが課題となり、ハイブリッドクラウド環境の最適化を難しくしている。
システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。
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