意思決定の迅速化を追求するとリアルタイム分析に行き着くことになる。そこからメリットを引き出せる企業の条件とは何か。逆に、ある企業はリアルタイム分析に確実に失敗する。
前編(誤解されがちな「リアルタイム」の定義とリアルタイム分析の重要性)では、「リアルタイム」の定義の誤解と必ずしもリアルタイム分析が必要ではないケース、リアルタイム分析が真価を発揮するケースを紹介した。
後編では、リアルタイム分析の具体例と、リアルタイム分析が成功する条件を紹介する。
PA Consultingのロビンソン氏が例に挙げたのは、バス専用レーンへの侵入チェックや乗客が集まる空港や駅などの混雑チェックシステムだ。同社はオランダの鉄道運営会社NSに協力して、車両の混雑をリアルタイム分析するスマートフォンアプリを開発した。その「座席検索」機能はIoTデータとLiDARを利用する。本稿執筆時点でこの機能がカバーするのは、アルンヘム、ナイメーヘン、デン・ボスの間を運行する列車だ。
輸送や流通では意思決定が比較的シンプルで自動化しやすいため、リアルタイム分析の一般的な応用分野になる。手作業によるパスポートの確認など、人間の介入が必要な場合でもシンプルなアラートを用意すれば効果的だ。
小売業や輸送業には、リアルタイム分析によって顧客体験が改善される状況が他にもある。小さな問題が大きな問題に発展する前に監督者にアラートを送ったり、顧客がオンラインでリソースを見つけるのを支援したりするのにリアルタイム分析を利用できる。
このように分析を利用すれば「上質な体験」が生み出されると話すのは、Forrester Researchのマキシー・シュミット=スブラマニアン氏(プリンシパルアナリスト)だ。
その一例として、パンデミック中に料金の支払いを遅らせたいと考える顧客を見つけ出すためにWebサイトで分析を利用した電力会社がある。見つかった顧客は自動サービスによって関連リソースに誘導される。そうした顧客は恐らく恥ずかしいという気持ちがあるため、カスタマーサービスのアドバイザーと時間をかけて話し合う必要がある。
ある空港はリアルタイム分析を使って遅れている顧客を特定している。そうした顧客を見つけたら、担当者を派遣して時間内にセキュリティチェックを通過できるように支援したり、ラウンジで飲み物を提供したりすることも可能だ。シュミット氏によれば、リアルタイム分析のこうした使い方は、最高ではないにしても「次善の体験」を提供する方法だという。
「ゲートで誰かが『シュミットさん大丈夫ですか』と問い掛ければ助けになる。だが、その瞬間にその場にいなければならない」と同氏は話す。
従来のBIレポートやダッシュボードも役に立つ。だが、その日の顧客個人には何の役にも立たない。
リアルタイムデータを使ってカスタマーエクスペリエンスを改善すれば、投資を素早く回収できる。ヘルプデスクやカスタマーサービスへの要請が減り、コストの節約になる。
リアルタイム分析を運用インフラに結び付け、センサーを利用すればさらなる節約を推進できる。
航空機エンジンのメーカーは、リアルタイムデータと機械学習を組み合わせることで、部品の修理が必要になる時期を予測している。故障が起きたら航空機に指示を送り返し、飛行中に障害が起きるリスクを減らす。こうした決定は迅速に行う必要がある。
他にも、サプライチェーン管理、金融取引の監視、サイバーセキュリティなどの例がある。Gartnerが引用するのは分析企業Snowplowの論文だ。それによると、ストリーミング処理の原動力となっているのは「継続的インテリジェンスの必要性」で、データ内でパターンを検出し、それを段階的に機械学習システムに渡すことによって機能するという。だが、応用分野は工業やエンジニアリングに限定されない。
Aerospikeのジェフ・クラーク氏(ヨーロッパ、中東、アフリカ地域統括マネジャー)は次のように話す。「大事なのは今起こっていることだ。当社の顧客であるPayPalは、1秒間に500件の決済要求を処理する。手作業による介入はない。コアシステムの基盤は機械学習で、100TBのデータに対して約200件の照合が行われる。リアルタイムに取り込まれるデータは膨大な量になる」
クラーク氏は、技術の開発が進み、多くのデータにクラウドを介してアクセスできるようになるにつれ、ますます複雑化する問題にリアルタイム分析を使って取り組む企業が現れると考えている。
とはいえ、リアルタイム分析のメリットを得ることができるのはシグナルに応じて行動できる場合に限られる。ビジネスプロセス自体がアジャイルでなければ、あるいは上司が直感を好むようであれば、投資してもうまくはいかないだろう。
目標とパラメーターが明確に定義され、測定可能な明らかな成果があり、管理がサポートされる場合にリアルタイム分析は成功する。
「情報をいち早く入手できるからといって、それを基にすぐさま行動に移せるとは限らない。それはCIO(最高情報責任者)の問題ではなく、広範な文化の問題だ」(ロビンソン氏)
それに対処していないなら、それに対処することが「真実の戦い」になると同氏は話す。「データ主導にならなければならない」
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