「自作HCI」と「構築済みHCI」の違い 予算化ではCPUやメモリの何を見るべきか?限られた予算で「HCI」を構築【前編】

HCIを導入する場合、事前に構築されたHCIアプライアンスを選ぶのではなく自前で構築することでコストを抑制できる可能性がある。その場合に検討すべきポイントとは。

2021年09月10日 05時00分 公開
[Brian KirschTechTarget]

 VMwareの「vSAN」は自社のデータセンターにハイパーコンバージドインフラ(HCI)を構築するためのストレージ仮想化ソフトウェアだ。こうしたソフトウェアを使ったHCIへの投資は高額になる傾向がある。そのためハードウェアコストと使用期間のバランスを取って予算を組む視点が欠かせない。

 まずは構築済みのHCIと自作のHCIの違いを踏まえて、予算を最適化するために検討すべき点を考えてみよう。

構築済みHCIと自作HCIの違い

 HCIの導入方法としては、ベンダーによる構築済みのHCIアプライアンスを購入する方法と、HCIに必要なソフトウェアを使って自社で構築する方法がある。自社で選んだハードウェアとvSANを使って自前で構築する場合は自由度が高くなるものの、ソフトウェアとハードウェアの緊密な統合という点ではHCIアプライアンスの方が高くなると考えた方がよい。

 vSANを使うことでHCIの重要な要素の一つである共通ストレージを設定できる。vSANでHCIを自作する場合は、ソフトウェアとハードウェアを別々に購入して、自社で組み合わせて構築する。

 ベンダーによる構築済みのHCIアプライアンスの場合は、大規模なソフトウェアスタックによってコンピューティングとネットワークを仮想化する機能も同時に利用できる。こうしたソフトウェアスタックはvSANの他、VMwareのサーバ仮想化ソフトウェア「vSphere」、ネットワーク仮想化ソフトウェア「NSX」、運用管理ツール「vRealize」などによって構成される。これらの運用管理を1つにまとめ、作業を自動化する機能もある。

ハードウェア要件を検討する

 HCIソフトウェアベンダーは総じて、特定のハードウェアベンダーと保守サポートのパートナーシップ体制を築いている。企業によってハードウェアの好みは分かれる。vSANを使って自前でHCIを構築するのであれば、自社好みのハードウェアを選択できる可能性は高くなる。vSANの対応機器は幅広くあるものの、全てのハードウェアで利用できるわけではないため、vSANをインストールする前に互換性リストを作成しておくとよい。

 vSANを使ってHCIを構築する際に重要になるハードウェアは、CPU、ネットワークインタフェースカード(NIC)、RAM(Random Access Memory)などだ。

 CPUを選ぶ際は運用するシステムの要件に照らして、CPUのクロック周波数など処理性能とコア数のバランスを取る観点が大切だ。CPUのコア数が過剰だとコストがかかり過ぎる恐れがある。MicrosoftとVMwareなどのHCIソフトウェアベンダーは、CPU当たりのコア数が一定の基準を超えた場合は追加ライセンス料金を課している。

 vSANには10ギガビットイーサネット(GbE)のネットワークが理想的だ。さらにNICにCPUの処理をオフロードできる「SmartNIC」の併用も選択肢になる。SmartNICによりVMwareのソフトウェアによる機能の一部を任せることで、CPUの処理速度が上がる可能性がある。

 サーバを選定する際はRAMの容量も検討すべきポイントになる。HCI全体の予算やシステム要件に合わせて必要なメモリ容量を検討する。主要なサーバは複数の内部スロットを備えている。ただし全てのスロットが埋まることもある。その場合は既存のメモリモジュールを取り外して、よりRAM容量の大きなメモリモジュールを追加する必要がある。

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