AWS、Microsoft、Googleは間違いなくクラウドサービス界のリーダーだが、各社のサービスを利用しているユーザー企業は不満を抱いている。Gartnerが同社クライアントから集めた不満点とは?
Gartnerは、クラウドに関する2021年版マジッククアドラントでクラウド大手3社を「リーダー」クアドラントと位置付け、各社の強みを挙げた。
「リーダー」クアドラントで首位に挙げられたAmazon Web Services(AWS)は、絶え間のないイノベーション、財務状態、独自のCPU開発への投資などが称賛されている。
第2位のMicrosoftは取り組みがSaaS、IaaS、PaaS全般にわたることを前提に、他のプロバイダーよりも広範な企業に「広く魅力的な」製品ポートフォリオを用意しているという。Microsoftには、長年築き上げてきた「企業からの信頼」というメリットもあり、それが「ほぼ全ての業界」で同社に競争上の優位性をもたらしているというのがGartnerの見解だ。
Googleについては、直近12カ月の「印象的な」収益増加と企業への「知名度」向上を強みに挙げている。Gartnerは、Googleの対前年比の改善状況にも注目している。これは最も近い競合相手であるAWSやMicrosoftとの間にある技術上の「有意義なギャップ」を埋めるのに役立っているという。さらに「『Google Cloud Platform』(GCP)は、プロバイダーの中で最も多くの機能を備えた『Kubernetes』サービスを提供している」と指摘している。
Gartnerのレポートは、AWS、Microsoft、Googleのサービスについて弱点と考える部分を詳しく説明して3社全てに以下の問題があると指摘している。
Googleは競合他社を下回る「積極的な価格設定」でクライアントを取り込んでいると指摘する。だが事業部門が財務上の損失を抱えながら運営されていることを考えると、こうした割引は時間とともに減少する可能性が高いとGartnerはみている。
Gartnerは、Googleの顧客が挙げる「満足度」の問題も指摘している。「Gartnerのクライアントの中には、GCPの操作性が低いと感じた企業もある。その多くは、GCPの急成長とその結果としての組織的な未熟さに起因する」
AWSについてもGartnerのクライアントによる指摘がある。彼らは過去12カ月にわたってAWSからの重圧を経験し、AWSへの支出を増やすよう働き掛けられているという。
「複数の地域に及ぶ数十社のGartnerクライアントがAWSの営業チームからプレッシャーをかけられ、既存契約を継続するために年間の支出コミットメントを20%増やすよう求められている」と同レポートは報告している。
このプレッシャーを不満に感じるならそれを払いのけることができるとGartnerは示唆する。「支出を増やすようプレッシャーをかけるのはAWSのポリシーではない。顧客が問題をエスカレーションすればプレッシャーは解消されるだろう」
Gartnerは、AWSの成長し続ける技術ポートフォリオの複雑さも懸念事項に挙げ、AWSの技術を最大限に利用するためにはサードパーティーの支援が必要になることが多いとしている。
「コンテナ、データベース、データ管理関連といった多くのサービスの違いを理解して適切に選択するためには、かなりの技術スキルが求められる」とGartnerのレポートは指摘する。
Microsoftについてはライセンスの複雑さを問題点として指摘し、Microsoftとの取引に際して「営業の圧力」を感じるGartnerクライアントがいるという。
「Microsoftのライセンスと契約は非常に複雑だ。アカウント収益を増やすというMicrosoftの営業圧力により、『Microsoft Azure』に効果的にデプロイして総コストを下げることができなくなっている」という。
2021年3月に発生した「Azure Active Directory」などの重要なサービスの停止は、Gartnerのクライアントにとって復元力に対する懸念事項となる。
Microsoftのアベイラビリティーゾーンの展開は相変わらずゆっくりなので、こうした復元力が提供されないリージョンが残る可能性は高い。「『Azure Kubernetes Service』などのサービスは、特に更新やメンテナンスのイベントに関連して相変わらず何らかの停止が発生する」と同レポートは指摘する。
英Computer WeeklyはGartnerのこの見解に対するコメントを3社に求めたが、原稿執筆時点では回答を得ていない。
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