環境ノイズは量子コンピューティングにおける課題の一つだった。機械学習を応用することで、量子コンピューティングのエラーに際して環境ノイズとそれ以外の分離が可能になった。その意義とは?
オーストラリアのシドニー大学と量子制御のスタートアップ企業Q-CTRLの研究者らが、量子コンピュータのエラーの原因を機械学習で特定する方法を開発した。これにより、かつてない精度でパフォーマンス低下を特定する機能が開発者に提供される。
この研究を詳述した論文「Quantum oscillator noise spectroscopy via displaced cat states」は物理科学研究ジャーナル『Physical Review Letters』に掲載されている。同誌は米国物理学会(American Physical Society)が発行する主力出版物だ。
量子コンピューティングのアキレス腱(けん)は環境「ノイズ」だ。シドニー大学のチームは環境ノイズに起因するエラーの削減に注目し、トラップしたイオンと超電導量子コンピューティングハードウェアを使って量子アルゴリズムの実行に必要な精度条件との最小偏差を検出する技法を開発した。その量子アルゴリズムはIBM、Google、Honeywellなどの産業用量子コンピューティングで使われているコア技術だ。
Q-CTRLの科学者らは、測定した偏差の原因を特定するために独自の機械学習アルゴリズムを使う新しい方法を開発した。
研究者らはQ-CTRLの既存の量子制御技術と組み合わせて、このプロセスにおけるバックグラウンド干渉の影響を最小限に抑えることも可能にした。これにより、「実際の」ノイズ源と測定による実在しない生成物との違いを簡単に区別できた。実際のノイズ源が分かれば、それを解決できる可能性がある。
「最先端の実験技術と機械学習が融合することで、量子コンピュータの開発における大きなメリットを実証した」と話すのは、シドニー大学赴任中に同研究を行ったスイス連邦工科大学チューリッヒ校のコルネリウス・ヘンペル氏だ。
「Q-CTRLのチームは機械学習ソリューションを迅速に開発した。これによって扱うデータを理解し、ハードウェアの問題点を『見つけ』、それを解決する新たな方法がもたらされる」とヘンペル氏は付け加えた。
Q-CTRLのマイケル・ビアチュク氏(CEO、シドニー大学教授)によると、量子コンピューティングハードウェアのパフォーマンスが低下する原因を突き止めてそれを抑制する能力は、基礎研究にとっても量子センサーや量子コンピュータにとっても重要だという。
「量子制御を機械学習によって強化することは量子システムの有用性を高め、研究開発のスケジュールを大幅に短縮するための道筋を示している。一流誌に公表した研究結果は、大学での基礎科学研究とハイテクスタートアップ企業が継続的に共同研究する正当性を立証している」
Q-CTRLはTransport for NSWとも提携し、量子コンピューティングを利用してレジリエントな輸送網を作成・管理する方法も検討している。
量子コンピューティングの今後の応用例として、全ての輸送状態と人々の動きを同時にリアルタイムマッピングし、輸送網の混乱を解決する輸送スケジュールの自動更新方法などが検討されている。
オーストラリアは量子コンピューティング先進国の一つと見なされている。2018年、メルボルン大学の研究者らは量子コンピューティングの能力をスーパーコンピュータでシミュレーションし、10億台以上のPCのメモリを必要とする数学の問題を解いている。同大学の量子計算および通信技術センターのロイド・ホレンバーグ氏(副センター長)によると、この画期的進化は研究者らが「量子対応」を実現するための重要なステップだったという。
「量子アルゴリズムのシミュレーション能力は将来、量子コンピュータが物理的にどのように動作し、ソフトウェアがどのように機能し、そのような問題を解決できる可能性があるかどうかを学ぶために不可欠だ」(ホレンバーグ氏)
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