サブスクリプション形式で利用するSaaSの管理をおろそかにすると、必要のないサービスや機能にコストをかけてしまうことがある。身近な“あるアプリケーション”が契約管理に有効だ。
企業によるSaaS(Software as a Service)活用の拡大に伴い、IT部門の役割が変化しつつある。SaaSのサブスクリプション(継続購入)契約の管理と支払いは、会計部門や購買部門が担当することが一般的だった。だがサブスクリプションの管理にIT部門の関与が、企業内で求められ始めている。IT部門が関与しなければ、必要のないサービスや機能にコストをかけてしまう可能性があるためだ。
サブスクリプション契約の管理にIT部門が関与するのであれば、IT部門の担当者は購買や会計の知識を身に付ける必要がある。企業が多種多様なSaaSを利用している場合、こうした知識は特に重要となる。
SaaSには利用開始日と利用終了日がある。SaaSを複数利用している場合は、その利用期間を統一することで、支払いのタイミングを一致させることが望ましい。支払いのタイミングを分散させると管理が難しくなるためだ。
ただしサブスクリプションの契約サイクルは月単位のものもあれば、年単位のものもあるため、契約期間を調整するのが難しい場合がある。その上、全てのSaaSの契約期間を調整し、支払いを同時にした場合、その請求額が莫大(ばくだい)な金額になる可能性がある。サブスクリプションの支払いは投資ではなく運用コストになる。年間の運用予算を1年のある時点に集中して使ってしまうことは、企業にとって非常に勇気がいることだ。そのため、全てのサブスクリプション契約の終了日を統一するのではなく、四半期ごとに分散させている企業もある。
IT部門がSaaSのサブスクリプションを効果的に管理するためには、どうすればよいのか。ベストプラクティスを紹介する。
ビジネスパーソンやIT担当者の中には、業務に役立ちそうな情報が書かれたメールを参照用に保管している人がいる。ただし情報を保存する方法として考えると、メールは必ずしも適切ではない。特に従業員が退職した場合の長期保存性に疑問が残る。
サブスクリプションに関連する情報の管理には、スプレッドシート(表計算用アプリケーション)を活用することがお勧めだ。以下のようなデータをまとめて記載し、管理する。
重要なのは、これらの情報の管理を1人の担当者に任せたり、1つのメールアカウントだけで保管したりしないことだ。管理する人が退職してその人のメールアカウントが消去された後も、チーム内の他の担当者が情報にアクセスできるようにしておくことが重要になる。
後編は、残る2つのベストプラクティス「カレンダーアプリケーションを使う」「年1回契約の見直しをする」を紹介する。
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