2020年に急いでクラウドサービスの導入を進めた企業では、クラウド利用の課題が顕在化しつつある。2022年はこうしたクラウドサービスを取り巻くIT戦略を、どのように変えるべきか。
前編「運用管理軽視の“ばらばらなクラウド導入”が起こす困った事態とは」と中編「『リフト&シフト』のクラウド移行がもたらす“想定外”のリスクとは」は、複数のクラウドサービスを組み合わせる「マルチクラウド」において、ユーザー企業が陥りがちな課題を説明した。ユーザー企業に存在する複数のアプリケーションやデータベース、クラウドサービスにまたがる運用管理を効率化するには「パートナーの力を借りるのが何より役立つ」と、コンサルティング会社のDeloitte Consultingで最高クラウド戦略責任者を務めるデイビッド・リンティカム氏は話す。
マネージドサービスプロバイダー(MSP)やクラウドベンダーは2021年、ユーザー企業が適切なクラウドサービスを使えるようにすることや、クラウドサービスの運用管理機能を連携させることに時間を費やしてきた――。クラウドインテグレーターのRackspace US(Rackspace Technologyの名称で事業展開)でチーフテクノロジーエバンジェリストを務めるジェ・デバーター氏は、こう説明する。パートナーがもたらす最大の価値は、ユーザー企業への新しい技術の導入を支援することにある。「新たな技術は、優れた機能や高い効率をもたらし、コスト削減に役立つ」とデバーター氏は語る。
2022年は、ユーザー企業のセキュリティ体制を強化することがパートナーの主な優先事項になるとデバーター氏は話す。同氏は「オンプレミスシステムからクラウドサービスに移行すると、セキュリティが大幅に強化される傾向がある」と言う。クラウドサービスはあらかじめ、ユーザー企業がセキュリティを保てるように設計されているためだ。しかし、それでセキュリティ体制が完璧になるとは限らないと同氏は補足する。
「ユーザー企業がセキュリティ設定の不十分なクラウドサービスで、パッチ未適用の仮想マシンを稼働させるリスクは残る」とデバーター氏は指摘する。パートナーはクラウドサービスのセキュリティ対策を支援することができると同氏は言う。
データマネジメントもパートナー企業が力を発揮する分野だ。データをクラウドサービスに置くのであれば、パートナーはユーザー企業が新しいデータマネジメント技術を使用するよう支援できる。それによってデータを統合し、全てのデータに対する高い可視性を得られるようになるとデバーター氏は説明する。
アプリケーションをIaaS(Infrastructure as a Service)に構築するときに、開発者やアーキテクト(設計者)はさまざまな選択肢を取れる。パートナーはそうした選択肢に対する理解を助けることができるとリンティカム氏は語る。IaaSにセルフプロビジョニング機能があれば、アプリケーションを数分で構築できる可能性があるという。
リンティカム氏は2022年について「ユーザー企業が全てのパブリッククラウドとプライベートクラウドに加えて、レガシーシステムまで含めた包括的なクラウド戦略をより重視し始める年になる」と語る。こうした戦略の中にはセキュリティ対策やガバナンスも含まれる。
ユーザー企業にとって、2020年は迅速なクラウドサービス導入を重視した年だった。2021年には複数のクラウドサービス導入プロジェクト間での調整不足がもたらすコスト増が目に見えるようになったとリンティカム氏は指摘。こうした課題は「ほとんどのユーザー企業にとって受け入れ難い」と同氏は語る。その改善措置として、長期にわたって持続可能なマルチクラウドの構築が必要になると同氏は見解を述べる。
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