「クラウド運用管理」に失敗しないためにユーザー企業がやるべきことは?クラウドサービス導入で起こりがちな失敗と対処法【後編】

2020年に急いでクラウドサービスの導入を進めた企業では、クラウド利用の課題が顕在化しつつある。2022年はこうしたクラウドサービスを取り巻くIT戦略を、どのように変えるべきか。

2022年03月01日 05時00分 公開
[Esther SheinTechTarget]

 前編「運用管理軽視の“ばらばらなクラウド導入”が起こす困った事態とは」と中編「『リフト&シフト』のクラウド移行がもたらす“想定外”のリスクとは」は、複数のクラウドサービスを組み合わせる「マルチクラウド」において、ユーザー企業が陥りがちな課題を説明した。ユーザー企業に存在する複数のアプリケーションやデータベース、クラウドサービスにまたがる運用管理を効率化するには「パートナーの力を借りるのが何より役立つ」と、コンサルティング会社のDeloitte Consultingで最高クラウド戦略責任者を務めるデイビッド・リンティカム氏は話す。

 マネージドサービスプロバイダー(MSP)やクラウドベンダーは2021年、ユーザー企業が適切なクラウドサービスを使えるようにすることや、クラウドサービスの運用管理機能を連携させることに時間を費やしてきた――。クラウドインテグレーターのRackspace US(Rackspace Technologyの名称で事業展開)でチーフテクノロジーエバンジェリストを務めるジェ・デバーター氏は、こう説明する。パートナーがもたらす最大の価値は、ユーザー企業への新しい技術の導入を支援することにある。「新たな技術は、優れた機能や高い効率をもたらし、コスト削減に役立つ」とデバーター氏は語る。

「クラウド運用管理」の注目すべき分野とは

 2022年は、ユーザー企業のセキュリティ体制を強化することがパートナーの主な優先事項になるとデバーター氏は話す。同氏は「オンプレミスシステムからクラウドサービスに移行すると、セキュリティが大幅に強化される傾向がある」と言う。クラウドサービスはあらかじめ、ユーザー企業がセキュリティを保てるように設計されているためだ。しかし、それでセキュリティ体制が完璧になるとは限らないと同氏は補足する。

 「ユーザー企業がセキュリティ設定の不十分なクラウドサービスで、パッチ未適用の仮想マシンを稼働させるリスクは残る」とデバーター氏は指摘する。パートナーはクラウドサービスのセキュリティ対策を支援することができると同氏は言う。

 データマネジメントもパートナー企業が力を発揮する分野だ。データをクラウドサービスに置くのであれば、パートナーはユーザー企業が新しいデータマネジメント技術を使用するよう支援できる。それによってデータを統合し、全てのデータに対する高い可視性を得られるようになるとデバーター氏は説明する。

 アプリケーションをIaaS(Infrastructure as a Service)に構築するときに、開発者やアーキテクト(設計者)はさまざまな選択肢を取れる。パートナーはそうした選択肢に対する理解を助けることができるとリンティカム氏は語る。IaaSにセルフプロビジョニング機能があれば、アプリケーションを数分で構築できる可能性があるという。

 リンティカム氏は2022年について「ユーザー企業が全てのパブリッククラウドとプライベートクラウドに加えて、レガシーシステムまで含めた包括的なクラウド戦略をより重視し始める年になる」と語る。こうした戦略の中にはセキュリティ対策やガバナンスも含まれる。

 ユーザー企業にとって、2020年は迅速なクラウドサービス導入を重視した年だった。2021年には複数のクラウドサービス導入プロジェクト間での調整不足がもたらすコスト増が目に見えるようになったとリンティカム氏は指摘。こうした課題は「ほとんどのユーザー企業にとって受け入れ難い」と同氏は語る。その改善措置として、長期にわたって持続可能なマルチクラウドの構築が必要になると同氏は見解を述べる。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

製品資料 発注ナビ株式会社

商談につながるリードをなぜ獲得できない? 調査で知るSaaSマーケの課題と対策

SaaSサービスが普及する一方、製品の多様化に伴い、さまざまな課題が発生している。特にベンダー側では、「商談につながるリードを獲得できない」という悩みを抱える企業が多いようだ。調査結果を基に、その実態と解決策を探る。

製品資料 株式会社ハイレゾ

GPUのスペック不足を解消、生成AIやLLMの開発を加速する注目の選択肢とは?

生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

「クラウド運用管理」に失敗しないためにユーザー企業がやるべきことは?:クラウドサービス導入で起こりがちな失敗と対処法【後編】 - TechTargetジャパン クラウド 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

TechTarget郢ァ�ク郢晢ス」郢昜サ」ホヲ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。