データセンターの電力消費を抑制する上で欠かせないのがサーバ冷却の効率化だ。空気の通り道を整備すること、HPCなど高電力のサーバを集中的に冷却することなど、さまざまな手法がある。主要な手法を整理しよう。
データセンターのIT機器がいかに効率良く電力を使用できているのかを測る指標として、一般的に使われているPUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)。このPUEを最小の1.0(IT機器が全消費電力量を占める状態)に近づけるには、空調機器や共用設備などIT機器以外が占める消費電力量の比率を下げる必要がある。データセンターの設計や構築、保守などを手掛けるNTTファシリティーズは「特に空調によるサーバ冷却の効率を高めることが重要だ」と指摘する。
空調による冷却は、サーバなどIT機器の安定稼働に欠かせない。IT機器の温度が上昇し過ぎるとシステム停止に陥るリスクがあるからだ。そのため電力消費を抑制しつつも、適切な冷却が求められる。昨今はHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング:高性能計算)など、プロセッサのリソースを大量消費するシステムを導入する企業もある。その場合はサーバラック1台当たりの電力量と発熱量が増大する可能性があるため、より効果的にサーバを冷却しなければならない。どうすればよいのか。
空調による冷却効率を高める上での基本は、「冷気」と「暖気」の気流を効率的に循環させることだ。新設のデータセンターであれば、冷気用の通路(コールドアイル)と、暖気用の通路(ホットアイル)を分けた建屋の設計を採用する傾向が見られる。サーバは基本的には筐体(きょうたい)の背面から排熱する。それを前提にサーバラックの前面や床下にコールドアイルを設け、サーバラックの背面にホットアイルを設ける、といった形だ。
既設のサーバルームでも気流を改善することはできる。NTTファシリティーズによれば、この場合は「アイルコンテイメント」や「ブランクパネル」を用いる。アイルコンテイメントは、サーバラックが並ぶ通路の側面や上部にパネルを設置し、空気の余計な通り道を封鎖する方法だ。これによって空調機器から流れ込んでくる冷気と、サーバの排熱が混ざり合うことを防ぐ。ブランクパネルは、サーバラック内のサーバ間に設置するパネルを指す。これを取り付けることで、サーバの排熱がサーバラック内で回り込んで冷気に混入しないようにする。空気の通り道を整えるという点で、アイルコンテイメントと考え方は同じだ。
サーバの温度上昇によるシステム停止のリスクを抑制しつつ電力の使用効率を高めるためには、「ホットスポット」(温度が上がり過ぎている場所)や、必要以上に冷やし過ぎの場所を特定することが重要だとNTTファシリティーズは指摘する。サーバルーム内の各所に温度センサーを設置することで「さらに冷却する必要のある場所」「それ以上冷却する必要のない場所」を判別可能になる。部屋全体を一様に冷却するのではなく、冷却が必要な箇所への影響度が高い空調だけを強めることで、全体の消費電力量の抑制につながる。同社は温度センサーと連動した空調の自動制御の仕組みを取り入れることで、消費電力量の削減効果を高めることができると推奨する。
近年はサーバラック当たりの電力量が増大する傾向にある。サーバラック当たり5キロボルトアンペア前後が主流の中で、HPCの用途ではサーバラック当たり20キロボルトアンペアを超えることが珍しくなくなってきた。こうした高電力のサーバラックに合わせて全体を冷却すると、必要以上の電力を消費してしまう。電機メーカーのシュナイダーエレクトリックでデータセンター設備分野を統括する木口弘代氏は、「冷やし過ぎは非効率になる。センサーからデータを取得し、IT機器の稼働に応じて冷却する方法が有効だ」と指摘する。一方でサーバの発熱量が大きくなるほど、サーバルーム全体を冷やす空調機器だけでは十分に冷却できないという問題も同時に浮上する。
消費電力の大きいサーバを安定的に稼働させるには、局所的かつ集中的な冷却方法が求められる。冷却方式としては、サーバラックの列ごとの冷却を可能にする「インロー(In-Row)型」や、サーバラック背面に空調機器を取り付ける「リアドア型」などが採用されている。IT機器を直接的に冷却する方法として、加熱したCPUやGPU(グラフィックス処理装置)を液冷媒に浸す「液浸冷却」という冷却方法も登場している。
一般的な電力量のサーバラックを引き続き利用する一方で、高電力のサーバラックを必要とするHPCといった用途が広がり、多様な冷却方法が求められる状況だ。木口氏は「今後は“冷気を送って暖気を持ち帰る”という従来の冷却方法に加えて、局所冷却や液浸冷却を併用することが主流になる」と見込む。
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