遠隔モニタリングサービスを提供するAccuhealthは、自社SaaSの中核要素として利用する「Splunk」のパフォーマンス問題に直面していた。なぜ問題は起きたのか。同社が選んだ解決策とは。
Accuhealthは、健康状態の遠隔モニタリングサービスを提供するスタートアップ(新興企業)だ。同社が提供しているSaaS(Software as a Service)は、血圧計、血糖値測定器、パルスオキシメーター、体重計などのモニタリング機器から収集した患者の生体データに基づき、医師が診断を下すのを支援する。
このSaaSはAmazon Web Services(AWS)の同名クラウドサービスで稼働しており、Splunkの同名ログ解析システムをベースに構築されている。AccuhealthのDevOps(開発と運用の融合)エンジニアがこのシステムを管理しており、人工知能(AI)技術ベースのデータ解析システムと連携させている。
患者の遠隔モニタリングサービスの導入は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)以前から進んでいた。コロナ禍に伴うSaaS利用の急増に対処するために、Accuhealthはさらなる自動化を検討する必要が生じた。
「COVID-19の影響で需要が急増した」と、AccuhealthのCEO、スティーブン・サムソン氏は振り返る。同社はSplunkのインスタンス(サーバ)を増やしたが、処理速度や応答速度といったパフォーマンスの問題に直面したという。
約1万人の患者を顧客に抱えるAccuhealthの場合、通常なら1日に収集するデータは5GBにも届かない。パンデミックが到来し、Splunkでの検索件数は「数倍」(サムソン氏)に増えた。同社は1日当たり約5件のクリニックと新たに契約していた。それらのクリニックの患者が、Splunkによる検索を利用するようになった。同社はSplunkのインスタンスを追加し続けたが、それで対処できる範囲を超えており、解決にはならなかった。「より良いアーキテクチャを考える必要があった」(同氏)
AccuhealthでSaaSのアーキテクチャを担当するエンジニアらは、Criblの「Cribl LogStream」無償版の導入をサムソン氏に提案した。Cribl LogStreamは、ログにメタデータを付与し、構文解析してからSplunkに送信することで、検索効率を向上できる。
Criblのサポートによって、Accuhealthのエンジニアはライセンス料金を支払う前にCribl LogStreamの導入とチューニングを実施できた。その点もサムソン氏は評価した。AccuhealthはCribl LogStreamの本番稼働後、ライセンス料金として年間約1500ドルを支払っている。
サムソン氏によると、Cribl LogStreamを採用したことでAWSの仮想マシンサービス「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)の負荷と費用を約30%削減できた。「以前は約10万人の患者を受け入れられると見積もっていたが、今では1億人までスケールできると予想している」(同氏)
患者の遠隔モニタリングサービスはまだ発展途上の産業だ。サムソン氏は、COVID-19が沈静化した後も患者の遠隔モニタリング市場は成長し続けると予想している。「パンデミックは遠隔医療の起爆剤となったが、いずれは沈静化し、医師は引き続き患者を対面で診る必要がある」と同氏は指摘する。「今後、患者の遠隔モニタリングサービスは、患者と医師との良好な関係を維持する目的で活用されるようになると考えられる」(同氏)
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