クラウドサービスを利用する際、料金のコントロールがユーザー企業にとっての課題の一つになりがちだ。適切に管理できなければ、想定外のコストを招く。そうなってしまう背景を解説する。
クラウドストレージなどの各種サービスを手掛ける大手クラウドベンダーは、ユーザー企業を囲い込むために独自技術を使用する傾向がある。ユーザー企業は特定のクラウドベンダーの独自技術を使うと、他のクラウドサービスへのシステム移行がしにくくなる。その半面、クラウドサービスは簡単に利用開始できる。つまり始めやすく、やめにくい特性がある。この点は、派生してコストの予測しにくさにつながる。どういうことなのかを解説しよう。
ユーザー企業は特定のクラウドベンダーの独自技術に依存すると、不利な立場に置かれる可能性がある。他のクラウドサービスへの移行が簡単ではないため、乗り換えをちらつかせて契約条件を交渉し、利用料金の低減を図ることが難しくなるからだ。
各クラウドベンダーは、システム設計において異なるベストプラクティスを持っている。ユーザー企業がそのベストプラクティスを採用すると、クラウドサービス間の移行や、複数のクラウドサービスを連携させることが難しくなる場合がある。それによって利用料金の交渉は一段と難しくなる。
クラウドサービスの利用開始が容易である、という特性によって、利用料金のコントロールは一段と難しくなる。ユーザー企業内の各組織はそれぞれ容易にクラウドサービスを契約できるため、IT部門が一元的に利用料金をコントロールするのは困難だ。
「クラウドサービスの導入が分散的に進む場合、ユーザー企業にとって重要になるのは利用状況の可視化だ」と、データ管理ツールベンダーCriblのディレクター、ニック・ヒューデッカー氏は語る。利用するクラウドサービスが分散すると、請求書を理解することが難しくなるとヒューデッカー氏は指摘する。
料金設定そのものにも問題がある。クラウドサービスの料金最適化サービスを手掛けるArchera.aiのCEO、アラン・カンナ氏は、クラウドサービスの料金設定は透明性が高いとは言い難いと指摘する。カンナ氏によると、「Amazon Web Services」(AWS)の料金設定はテキスト形式でダウンロードすることができるが、そのデータ量は膨大で、「Microsoft Azure」の料金表と比較することは簡単ではない。「大企業のクラウドサービス管理チームに、3、4人のデータサイエンティストがいるのはこのためだ。もはや表計算ソフトウェアの仕事ではない」(同氏)
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