Amazon.comが医療サービスベンダーに興味を示している。プライマリーケアサービスを全米展開するOne Medicalの買収を始めとする同社の動きと、その動きに関する専門家の見解を紹介する。
プライマリーケア(初期診療)のサービスを全米展開する1Life Healthcare(One Medicalの名称で事業展開)の買収、在宅健康診断サービスベンダーSignify Healthの売却案件への入札によって、Amazon.comは対面の医療サービスを提供する体制を整えようとしている――。調査会社Gartnerの医療アナリストでシニアディレクターのケイト・マッカーシー氏はこう指摘する。
One Medicalを買収することで、Amazon.comは診療所や医療従事者という物理的な医療資源を手に入れる。つまり「医療分野におけるAmazon.comのサービスの幅と奥行きが増すことになる」とマッカーシー氏は指摘する。
調査会社Forrester Researchでリサーチディレクターを務めるナタリー・シベル氏は、プライマリーケア分野に参入したAmazon.comが、コストの上昇や人手不足などの問題に悩む医療業界に新しい道筋を示すと考えている。「業界における既知のビジネスモデルはAmazon.comによって覆される」とシベル氏は指摘する。
医療業界では、それほど効率化が進んでいるとは言い難い。そのためAmazon.comや、大手ドラッグストアチェーンを運営するCVS Health、スーパーマーケットチェーンを運営するWalmartといった小売り大手が医療分野に進出し、各社が持つ「イノベーションの強み」によって、一般消費者と企業顧客にふさわしい医療サービスを提供する取り組みを始めていると、マッカーシー氏は説明する。同氏はこの動向を「医療市場に破壊的変化が起きている」とは解釈していない。むしろ小売業が今後、医療という産業分野にどの程度取り組むつもりがあるのかを見極めることが重要であり、それがどのような規模であれ「プライマリーケア分野に良い影響がもたらされることは確実だ」と同氏は考えている。
Signify Healthは、高齢になっても自宅で健康な生活を維持するための、一般消費者向け医療サービスだ。同サービスは、医療機関での治療ではなく自宅での健康増進に焦点を当てている。「Amazon Web Servicesのクラウド技術とSignify Healthのサービスを組み合わせることで、Amazon.comは患者の健康状態をおおまかに把握できるようになる」とシベル氏は話す。処方薬の配送データや、Amazon.comのへルスケア用ウェアラブルデバイス「Amazon Halo」で収集したデータを活用できるためだ。
「プライマリーケア分野に本当に参入したければ、こうしたヘルスケアデータの全体像を捉える視点が必要だ」とシベル氏は指摘する。「Signify Healthを買収できないのであれば、別の企業を狙うことになる。うまくサービスを展開している企業はたくさんある」(同氏)
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