ロケーション追跡を巡る訴訟をきっかけに、米国でプライバシー保護に関する議論が進んでいる。エンドユーザーのロケーションを追跡している企業にとって、どのような影響があるのか。
米国40州はGoogleに対して「ロケーション(位置情報)追跡はプライバシー侵害に当たる」との訴えを起こし、Googleが3億9200万ドルの和解金を支払うこととなった。この出来事は、企業に対してロケーション追跡の見直しを促す法律制定につながる可能性がある。
金銭的な制裁を科される懸念が浮上していても、ロケーション追跡技術を利用しているほとんどの企業は、この技術を使い続ける可能性がある――。調査会社Deep Analysisの創業者アラン・ペルツシャープ氏はこう考えている。「ほとんどの企業はやり玉に挙げられないことを願いながら、ロケーション追跡をし続けている」とペルツシャープ氏は説明。こうした企業は、もし制裁の対象になったら「謝罪するだけだ」と同氏はみる。
「データの収集・利用方法について企業に責任を問う上では、プライバシーに関する法律が役立つ可能性がある」。人権団体Fight for the Futureのキャンペーンおよびマネージングディレクター、ケートリン・シーリー・ジョージ氏はこう語る。
シーリー・ジョージ氏によると、Fight for the Futureは連邦議会に対して「米国データプライバシー保護法案」(ADPPA:American Data Privacy and Protection Act)を可決するよう働きかけている。「企業は信用できないからこそ、連邦議会は法案を可決する必要がある」と、シーリー・ジョージ氏は主張する。
「人々のプライバシーを尊重し、保護するための方法は、政策によって企業を動かすことだ」とシーリー・ジョージ氏は強調する。そのためにはプライバシーに関する連邦法が「早急に必要になる」とジョージ氏は主張。大手IT企業の独占による権利の制限を防ぐために、強力な反トラスト法(独占禁止法)も必要だと訴える。
幾つかの州はADPPAとは別に、プライバシーや個人データの扱いに関する州法を定めている。2022年に連邦法のプライバシー法案が立法化する可能性は低い。民主党も共和党も、こうした法律に盛り込むべき文言について、党内の意見がまとまっていないからだ。
後編は、ロケーションなどのエンドユーザーデータを収集する企業が、今回の訴訟から得られる教訓を整理する。
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