英国の精神医療機関は「プライベート5G」を導入し、実証実験を通じて病院の運営効率化に役立つシステムを共同開発した。病院職員の業務改善につながる5Gの活用法はどのようなものか。
英国の医療機関が、「5G」(第5世代移動通信システム)をプライベートネットワークで利用する「プライベート5G」(ローカル5Gに相当)を導入し、実証実験に取り組んでいる。
精神医療機関であるサウスロンドン&モーズリーNHS基金トラスト(SLAM:South London and Maudsley NHS Foundation Trust)は、運営する関連病院で、通信事業者VMED O2 UK(Virgin Media O2の名称で事業展開)の5Gサービスを軸にしたモノのインターネット(IoT)システムを構築。臨床医や薬剤師の業務改善につながるユースケースを検証している。この取り組みは医療従事者だけでなく、病院のIT担当者の業務改善も視野に入れている。
SLAMはITサポートの品質を向上させるために、VMED O2 UKが提供するリモート支援ツールを試験導入する。このツールを使うと病院のIT担当者は、AR(仮想現実)のヘッドセットを通じて、別の場所にいる専門家とのビデオ通話で技術指導を受けながら、複雑な作業を完了させることができる。例えば病院のネットワークやサーバを操作する際、現場のシステムエンジニアは他の場所にいる専門家のサポートを素早く受けられるということだ。
このプロジェクトで共同開発した人流解析システムの検証も開始する。病院内に設置した監視用の「CCTV」(閉回路テレビシステム)の映像をAI(人工知能)技術で分析し、それを基にヒートマップを作成すると、特定時間帯の行列や待ち時間、混雑する場所が分かる。これは病院の公共エリアの空間計画を改善するための重要な情報になる。この解析システムは情報を匿名で処理し、決して保存しない。VMED O2 UKの説明によれば、このプロセスは欧州連合(EU)における個人情報保護のための規則「GDPR」(一般データ保護規則)に準拠する。
調査会社CCS Insightのテクノロジーアナリストで、消費者および接続担当ディレクターを務めるケスター・マン氏は、SLAMの実証実験を「英国の通信および医療分野にとって画期的だ」と評価する。病院のプライベート5Gは、患者状態のリアルタイムモニタリング、遠隔サポート、薬や機器の動態の常時監視など、新しい用途への扉を開き得るものだ。「高速で低レイテンシの通信があれば、既存業務の効率とセキュリティ向上につながり、医療はよりスマートで正確かつ効果的なものになる」(マン氏)
SLAMはVMED O2 UKと提携して5Gインフラを整備した病院を作ることで、患者の転帰(治療の結果)を改善できるようになると見込む。同機関の最高情報責任者(CIO)代理を務めるスチュアート・マクレラン氏は次のように述べる。「患者やその介護者、家族に対して優れた精神医療を提供するという重要な戦略目標を追求する上で、最新の技術を活用することが支えになる」
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