企業の人事部門がAI技術を利用し、その適用範囲を拡大する上で、リーダーはAIのデメリットを知っておかなければならない。具体的なデメリットを3つ紹介する。
企業の人事部門は、人工知能(AI)技術を活用することでさまざまなメリットを享受できる。そのためには、AI技術を活用することによるデメリットについても認識しておかなければならない。AI技術を活用することでどのようなことが起こり得るのかを知らずにAIを導入すれば、従業員の不信感や企業の法的リスクにつながりかねない。人事部門がAI技術を利用する際に注意すべきデメリットを取り上げる。
人事部門でAI技術を活用する上で、最大のデメリットが「採用プロセスにおけるAIモデルのバイアス(偏見)」だ。米雇用機会均等委員会(EEOC:Equal Employment Opportunity Commission)は2023年5月、「AI技術を用いた人事採用ツールを使用する雇用主は、潜在的な差別的雇用慣行に対して責任を負う」と発表した。
法律事務所Clark Hillの雇用弁護士ポール・スタークマン氏は人事部門のリーダーに対して、自社をリスクにさらさないAIツール(AI技術を活用したツール)を採用しているかどうかを確かめることを推奨する。「人事部門のリーダーは、ベンダーの決断と選択、自社が使用するAIツールに責任を持つことになる」とスタークマン氏は述べる。
人事部門のリーダーは潜在的なバイアスを見逃さないよう、AIツールの購入に際して、ベンダーに聞くべきことを聞いておかなければならない。「AI技術を売るベンダーを含め、ベンダーを吟味するための倫理的な調達基準を策定すべきだ」。ドイツのミュンヘン工科大学(Technical University of Munich)のInstitute for Ethics in Artificial Intelligenceに所属する研究員であるアレクサンダー・クリービッツ氏は、そう指摘する。
クリービッツ氏が言及する調達基準とは、ベンダーに対してAIモデルがどのように機能するのかを詳細に説明することを求めるものだ。AIツールを導入する企業においても、まず人事リーダーがテストを実施することを義務付ける。「テストの後、AIツールがどのように機能したのか、差別があったかどうかを、ベンダーが提供するデータではなく、自社のデータを基に確認する必要がある」とクリービッツ氏は言う。
AIツールが従業員からの定型的な問い合わせに応対することは可能でも、従業員は「この情報は正確なのか」と不安を抱く恐れがある。
コンサルティング会社PricewaterhouseCoopers(PwC)でワークフォースストラテジーパートナーを務めるジュリア・ラム氏の顧客企業は、従業員からの問い合わせ対応にAIチャットbot(AI技術を活用したチャットbot)を活用している。同社の事例では、従業員が情報の裏付けを取ろうとして人事部門に確認してくるため、AIチャットbotを導入しても人事部門のスタッフの仕事は減っていないという。「この顧客企業では、AIと人の間で信頼関係はまだ構築できていない」とラム氏は言う。
企業は、従業員や求職者が企業運営に安心感を抱けるよう、AIツールの活用方法を明確に伝える必要がある。スタークマン氏が共有すべき項目として挙げるのは以下の3つだ。
「もし従業員や求職者が、企業がAIツールを使っている状態を『ビッグブラザー』(監視する独裁者)だと捉え、『われわれは人ではなく機械に管理されている』と感じてしまうなら、雇用関係は敵対的なものになってしまう」(スタークマン氏)
AIツールの利用で鍵となるのは透明性だ。「もし企業のAIツールの活用における透明性がなければ、価値以上に大きな問題を引き起こすことになる」とスタークマン氏は警告する。
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