SaaSの採用を広げた結果として、データのサイロ化に悩んでいる企業は珍しくない。分散したデータを統合するには、どのような戦略が必要なのか。
企業のIT部門がサイロ化(連携せずに孤立した状態になること)したデータを統合したい場合、従来はアプリケーションの統合に踏み切るものだった。しかし、そのような余裕のあるIT部門は、いまや“まれ”だろう。
クラウドサービスが普及するのに合わせて企業の利用するアプリケーション数は増加する傾向にあり、データはそれぞれのアプリケーション内に分散している。調査会社Gartnerは、そうした状況でガバナンスを確保するためであっても、IT部門が中央集権体制でアプリケーションを管理するのは早計だと警告する。
調査会社Gartnerでプリンシパルアナリストを務めるアンドルー・コメス氏によると、問題となるのは、管理能力と質の維持を重視するか、それともスピードを優先するかという点だ。「IT部門の役割を中央集権的な管理とすれば、そこが企業のIT活用におけるボトルネックになる恐れがある」と同氏は指摘する。
Gartnerは同社のクライアント企業に、データ統合戦略を実行するチームを構築するようアドバイスするケースがあるという。この体制でのIT部門の役割は、中央集権的な管理ではなく、事業部門のサポートだ。「この体制であれば、ITシステムのデリバリー(配備)のスピードを維持しつつ、強力なITガバナンスに必要なガードレール(制御機能)を、バランスの取れた形で提供することが可能になる」とコメス氏は語る。
実際にこのような戦略をとった事例としてDeutsche Bank(ドイツ銀行)がある。同行は、開発環境やアプリケーションの実行環境を用意する際に、「ランディングゾーン」を構築した。これはあらかじめクラウドサービス上に、セキュリティやガバナンス、コンプライアンス(法令順守)関連のツールを組み込んでおく設計やテンプレートのことだ。
Deutsche Bankは、アプリケーション開発者にガードレールを提供するためにHashiCorpのIaC(Infrastructure as Code:コードによるインフラの構成管理)ツール「Terraform Enterprise」を採用した。リソースの作成時に、指定したルールに基づいているかどうかを検証するプラグイン「Sentinel」も導入した。同行でクラウドサービスのデリバリー責任者を務めるキース・ケムズリー氏はSentinelを利用して、社内ポリシーに沿ってインフラストラクチャのモジュールやライブラリ(プログラムの部品群)を構築できた。
アプリケーション開発者は、これらのリソースを利用してシステムの基盤を構築することで、新しいソフトウェアやアップデートを安全に配信できるようになった。さらにケムズリー氏は次のように強調する。「これらのリソースは、3つの異なる環境にまたがってデリバリーしているサービスで再利用している。アプリケーションごとにカスタマイズ可能であり、開発速度の向上を実現している」
中編では企業が利用するアプリケーションの増加で、どのような課題が生じているかを説明する。
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