「Haskell」は、シンプルな構文ながらも強力な型システムを備えるプログラミング言語だ。Haskellが持つ4つの特徴「遅延評価」「不変性」「厳密な型」「モナド」を解説する。
不変データ構造とは、作成時以降は変更できないデータ構造を指す。不変データ構造は、数学的な関数を組み合わせたプログラミングである「関数型プログラミング」の重要な要素だ。「Haskell」や「PureScript」のような関数型プログラミング言語は、初めに変数を定義することで、変数の不変性によってよりバグの少ないソースコードを書けるようにすることを目指している。本連載は、HaskellとPureScriptの主要な特徴を紹介し、それぞれのプログラミング言語がどのようなタイプのプロジェクトに適するのかを見極めるための参考情報を提供する。
オープンソースのプログラミング言語であるHaskellでは、開発者は公開サーバを通じてさまざまなパッケージ(拡張機能)を利用可能だ。Haskellはソースコードに変数の型を明示する「静的型付け」を採用しており、構文が簡潔であるため、コンパイル時にエラーを検出しやすい。
Haskellの主な特徴を以下に挙げる。
値が実際に必要になるまで計算を実行しない仕組みが「遅延評価」だ。Haskellの遅延評価では、式の評価に必要な関数の呼び出しや値の評価をできる限り先延ばしにする。つまりHaskellプログラムは通常、結果を表示する必要性が生じるまで、操作の実行や型を推測しない。この仕組みを活用して、開発者は「if」文などの条件文において条件分岐や評価を遅延させ、複雑な制御構造を記述できる。
変数に一度値を割り当てると、その後変更することができない性質を「不変性」と呼ぶ。Haskellは不変性を特徴としており、標準でデータ構造は不変だ。開発者は不変データと「純粋関数」(同じ入力に対して常に同じ出力を返し、範囲外に影響を与えない関数)を組み合わせることで、特定の操作を実行するための処理の流れを記述できる。
関数を引数として受け取ったり返数として返したりする「高階関数」を使うことで、Haskellは複雑な処理をシンプルに表現でき、ソースコードの抽象化(ソースコードの複雑さを排除して再利用性を高めること)が容易になる。Haskellは、目的の結果のみを指定し、具体的な処理や手順は明示しない「宣言型プログラミング」に基づく。この特性により、開発者は出力のデータ型や構造、振る舞いを記述することで、求めたい結果を実現可能だ。
Haskellは型の整合性に厳密さを求め、シンプルで洗練された構文を持つ。そのため、ソースコードが正しくコンパイル(実行可能ファイルに変換)された場合、開発者はある程度確実にエラーなしでプログラムを実行できる。Haskellの主要なコンパイラ「GHC」(Glasgow Haskell Compiler)は、効率的なガベージコレクション(不要なデータを削除して空き容量を増やす仕組み)を提供する。基本的な操作やデータ型、抽象化を利用できる軽量な並行処理ライブラリも、プログラム実行時の処理速度向上に役立つ。
ただしHaskellでのプログラミングには、プログラムを関数の組み合わせとして捉える関数的思考や、数学に対する理解が重要だ。そのため初心者の開発者や、複雑な計算プログラミング(プログラムを使用して数値的な計算や数学的な処理を実行するプログラミング)の経験がない人にとっては、学ぶのが難しい場合がある。こうした開発者は、一般に公開されている、Haskellの実装用ソースコードの詳細部分を参照することで、学習に役立てることが可能だ。
Haskellは、複雑な計算の流れや規則を管理する仕組みである「モナド」と、既存のモナドに新しい機能を追加する仕組みである「モナド変換子」を重視している。開発者はモナドとモナド変換子を用いて、一連の手順として計算を記述したり定義したりすることができる。
次回は、PureScriptの概要を紹介する。
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