Red Hatは「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)の無償版である「CentOS」を廃止し、「CentOS Stream」を提供開始した。CentOS Streamに移行する以外の選択肢はあるのか。
「CentOS」はOS「Linux」のディストリビューション(配布用パッケージ)を提供するプロジェクトだ。2004年にグレゴリー・クルツァー氏が立ち上げた。「CentOS Linux」は企業向けLinuxディストリビューション(配布用パッケージ)「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)の無償版として、世界中の個人や組織が利用してきた。2020年にRed Hatがメンテナンスを引き継ぎ、最終リリース版となる「CentOS Linux 8」(CentOS 8)を発表し、終わりを迎えることになった。
Red HatがCentOS Linuxの後継として発表したのが「CentOS Stream」だ。CentOSは、現行バージョンのRHELに基づいて開発されていた。一方でCentOS Streamでは、開発途中で安定性に欠ける可能性がある、RHELの次期バージョンを前もって利用することになる。これは大きな変化だと言える。RHELの無償版を求めるユーザーは、不安定な可能性があるCentOS Streamを使用するか、他のディストリビューションへの移行を検討しなければならない。
2019年にIBMがRed Hatを買収した後、IBMはCentOS Linuxを廃止する判断を下した。Red Hatは理由を詳細には説明しなかったが、一部のユーザーは「無料のOSが存在すると、企業向け製品であるRHELの利益を損なう可能性があったため」だと推測している。
CentOS Linuxの廃止は、新しいLinuxディストリビューションの誕生につながっている。クルツァー氏は「Rocky Linux」を開発した。商用Linuxディストリビューションを手掛けるCloudLinuxは、「AlmaLinux」を開発した(その後AlmaLinux OS FoundationがCloudLinuxからAlmaLinuxの開発・管理を引き継いだ)。これらのLinuxディストリビューションはいずれもRHELと互換性がある。
IBMとRed Hatは、RHELのソースコードを今後無料で公開することはないと宣言した。この決定は「オープンソースの本来の目的から逸脱している」とクルツァー氏は主張する。Rocky Linuxの公式ブログエントリ(投稿)によると、Rocky LinuxはパブリッククラウドのインスタンスやUBI(Universal Base Images)形式のコンテナイメージを通じて、RHELのSRPM(ソースコードを含んだインストール用パッケージ)を入手している。UBIは、Red Hatが提供するコンテナイメージの形式だ。
2023年7月、AlmaLinux OS Foundationの理事長であるベニー・バスケス氏は公式ブログエントリで「AlmaLinuxは今後、RHELと互換性を持つダウンストリームのリビルドにはなり得ない」と説明した。「Red Hatの方針変更により、AlmaLinuxの開発とビルドプロセスの見直しは必要となるが、AlmaLinux OS Foundationは開発プロセスに関する最新情報をブログで提供し続ける」とバスケス氏は述べる。
Linuxやオープンソースの開発者は常に前進する道を見つけてきた。CentOSからRocky LinuxやAlmaLinux、あるいは他のLinuxディトリビューションに移行するとしても、実現可能な選択肢が存在するはずだ。
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