「ハイブリッドクラウド」のインフラやツールが進化している。ハイブリッドクラウドを採用することで得られるメリットや、ハイブリッドクラウドのトレンドを紹介する。
オンプレミスとクラウドサービスを併用する「ハイブリッドクラウド」の採用が加速している。ハイブリッドクラウドには、コストの最適化やリスクの分散といったメリットがある。だがそれだけではない。近年はハイブリッドクラウドやハイブリッドクラウドを運用するためのツールも進化している。ハイブリッドクラウドの10大トレンドのうち、6~10個目を紹介する。
「クラウドサービスの管理をシンプルにするため、プログラミング言語に依存しないオープンソースソフトウェア(OSS)の採用が進む」。こう話すのは、オープンソースソフトウェア管理団体Cloud Native Computing Foundation(CNCF)でエコシステム責任者を務めるテイラー・ドレザル氏だ。
インフラやツールが特定のプログラミング言語に依存しないということは、さまざまなアプリケーションやアーキテクチャを採用できる可能性があるということだ。開発においても、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)やIaC(Infrastructure as Code:コードによるインフラの構成管理)などの手法によって、既存のインフラへの統合がしやすくする。
「特定のプログラミング言語に依存しないツールを利用すれば『DevOps』(開発と運用の融合)チームがプロジェクトを跨いでアプリケーションをより効率的に開発して運用できるようになる」とドレザル氏は説明する。
サイバーセキュリティ対策を強化するために、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドを検討する企業がある。
金融サービスを提供するJPMorgan Chaseでグローバルテクニカルインフラ部門のCIO(最高情報責任者)を務めるダリン・アウベス氏は、次のように述べる。「サイバーセキュリティの脅威は複雑になる一方だ。複数のクラウドサービスで運用することで、単一のプロバイダーに脅威が集中するリスクを回避できる」
CIOが「DX」(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを進め、ハイブリッドクラウドへの投資を続けていく上で、クラウドサービスによる回復力を確保することが最優先になるとアウベス氏は考える。
ベンダーと機能の適切な組み合わせを見つけることは、クラウドサービスへの投資を最適化するのに役立つ。例えば、最新のx86プロセッサではなくArm製のプロセッサを使用することで、コスト削減につながる可能性がある。「オンプレミスのインフラでは選択肢が限られるが、パブリッククラウドならプロセッサを簡単に選択できる」とアウベス氏は考える。
「クラウド移行が有望であることを認識していながらも、効果的に移行する資金、人材、知識が不足しているCIOにとって、アプリケーションの近代化に伴うコストは依然として問題だ」。そう語るのは、コンサルタント企業Nucleus Researchでシニアアナリストを務めるアレクサンダー・ワーム氏だ。
ベンダーは、オンプレミスにおける既存のアプリケーションのサポートを続けながら、クラウドサービスでの今後の開発に集中できるように「run-anywhere」(どこでも動作する)モデルを優先し始めている。ワーム氏は、アプリケーションの近代化を効果的かつコスト効率よく図るため、クラウドネイティブの開発を優先しながら段階的にクラウドサービスに移行する計画を採用することをCIOに推奨する。
企業は、さまざまなアプリケーションニーズに対応するためにハイブリッドクラウドを選ぶようになっている。「画一的なアプローチでは不十分であることを認識し始めている」とコンサルティング企業Everest Groupのランジャン氏は話す。企業は、パブリッククラウドであろうと、レガシーなオンプレミスインフラであろうと、パフォーマンスが最適になる場所にアプリケーションを計画的に配置する必要がある。
レガシーインフラは、時間、コスト、アプリケーションのパフォーマンス、技術的な専門知識、データ損失の可能性など、移行にまつわる課題をもたらす可能性がある。新しいインフラや基盤への移行が望ましいが、そのためには企業がリソースを一元的に監視して、デプロイの自動化を実装し、異なるインフラや基盤の間でセキュリティとコンプライアンスのポリシーを一貫させる必要がある。
「ハイブリッドクラウドを採用する企業は、ハードウェア、コンプライアンス、規制、コスト管理に自信を持てるようになる」(ランジャン氏)
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