企業向けLinuxディストリビューション「RHEL」「SUSE」は何が違う?RHELとSLESの違い【前編】

主要な「Linux」ディストリビューションとして、Red Hatの「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)と、SUSEの「SUSE Linux Enterprise Server」(SLES)がある。稼働するアーキテクチャや関連サービスの違いとは。

2024年06月04日 08時00分 公開
[Damon GarnTechTarget]

関連キーワード

Linux | Red Hat Enterprise Linux | SUSE | OS


 Red HatとSUSEは、企業向けの「Linux」ディストリビューション(配布パッケージ)を提供するベンダーだ。Red Hatは「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)、SUSEは「SUSE Linux Enterprise Server」(SLES)を提供している。Linuxディストリビューションには共通のコマンド、フォルダ(Linux分野では「ディレクトリ」とも)構造、基本機能がある。その一方で、パッケージ管理ツール、コマンド、プリインストールソフトウェアなどに違いがある。それぞれのディストリビューションと、両社が提供する周辺ツールおよびサービスを、複数の観点から解説しよう。

違い1.動作可能なハードウェアアーキテクチャ

 Linuxディストリビューションを選ぶ際は、企業が運用しているデバイスで動作するかどうかは重要な要素だ。この観点は、IoT(モノのインターネット)、データセンター、組み込みシステムで特別なハードウェアを使用する可能性がある場合、特に重要になる。

 RHELのバージョン9は、以下のアーキテクチャで動作可能だ。

  • AMD(Advanced Micro Devices)またはIntel製の64bitのCPU
  • Armアーキテクチャベースの64bitのCPU
  • IBMのサーバ「IBM Power Systems」(リトルエンディアン方式)
    • リトルエンディアン方式は、メモリのデータ格納方式の一つ。
  • IBMのメインフレーム「IBM Z」(64bit版)

 SLESのバージョン15は、以下のアーキテクチャで動作可能だ。

  • AMDまたはIntel製の64bitのCPU
  • Armアーキテクチャベースの64bitのCPU
    • シングルボードコンピュータ(最低限の要素から成るコンピュータ)の「Raspberry Pi」を含む。
  • IBM Power System(リトルエンディアン方式)
  • IBM Z(64bit版)
  • IBMのLinuxサーバ「IBM LinuxOne」

違い2.サブスクリプションサービスとサポート

 Red HatとSUSEはどちらも、サポートサービスを含むサブスクリプション形式でLinuディストリビューションを提供している。追加特典として、各ディストリビューションに関するトレーニングも利用可能だ。

RHELのサブスクリプション

 Red HatによるRHELのサブスクリプションは、2種類の期間(1年または3年)があり、3種類のサポートプラン(プレミアム、スタンダード、セルフサポート)を選択できる。プレミアムとスタンダードは、Red Hatの技術サポートサービスを利用可能だ。セルフサポートでは技術サポートを利用できない。RHELユーザー用のポータルサイトや、RHELを実行しているシステムの分析ツール「Red Hat Insights」、インフラ管理ツール「Red Hat Satellite」などの追加サービスもある。

 サポートプラン別の価格は、1年分の場合プレミアムが年間1428.9ドル、スタンダードが年間878.9ドル、セルフサポートが年間383.9ドルだ(2024年5月時点)。プレミアムには、Red Hatが定める問題の重大度が1または2の問題に対する24時間365日のサポートと、重大度が3または4の問題に対する営業時間内のサポートが付属する。スタンダードでは、重大度が3または4の問題に対する営業時間内のサポートが利用できる。

SLESのサブスクリプション

 SUSEが提供するサブスクリプションには、1、3、5年の3つの期間がある。セキュリティアップデートや製品アップグレード、テクニカルサポートといったサービスが含まれ、使用するソケット数や仮想マシン(VM)数によって価格が異なる。

 サポートレベルはスタンダードとプライオリティーの2種類だ。応対時間はスタンダードが平日1日のうち12時間、プライオリティーが24時間365日となっている。


 次回は、トレーニングおよび認定資格の違いを取り上げる。

TechTarget発 エンジニア虎の巻

米国TechTargetの豊富な記事の中から、開発のノウハウや技術知識など、ITエンジニアの問題解決に役立つ情報を厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

製品資料 ゾーホージャパン株式会社

「特権ID管理」などのIT統制に関する課題を解決する2つのアプローチとは?

2006年に金融商品取引法にて規定された内部統制報告制度(J-SOX)では、「ITへの対応」が構成要素となっているが、IT統制の評価プロセスは工数がかかり、業務負担や監査コストが課題となっている。これらを解決する2つのアプローチとは?

製品資料 ゾーホージャパン株式会社

攻撃者が狙うActive Directoryパスワード、手間をかけずに管理を強化するには?

企業のActive Directory(AD)にアクセスするためのパスワードが攻撃者の手に渡ると、ポリシー変更や権限昇格のリスクが発生する。だが実際は、使いまわしや共有など、パスワードのずさんな管理も目立つ。これを解決するには?

製品資料 Splunk Services Japan合同会社

金融業界のイノベーションに、オブザーバビリティの向上が必要な理由

金融業界は常にイノベーションの創出が求められるが、これを実現する上では、オブザーバビリティの向上が鍵となる。本資料では、金融業界でのイノベーション創出に、オブザーバビリティの向上が必要な理由について解説する。

製品資料 グーグル合同会社

ユーザーデータを適切に保護、Chromeの拡張機能をまとめて安全に管理する方法

Google Chromeの拡張機能は、導入が容易であることからユーザーが独自にインストールしているケースも多く、セキュリティ面でのリスクが危惧されている。この問題を解消するには、拡張機能をまとめて管理者が安全に管理する方法が必要だ。

製品資料 グーグル合同会社

廃止予定のレガシーテクノロジーはなぜ危険? 4つのリスクと特定するコツとは

近く廃止される予定の Web 技術を使用している Web サイトは多数存在するが、それらを放置しておくことは、さまざまな問題につながるという。その4つのリスクを解説するとともに、レガシーテクノロジーを特定する方法を解説する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

繧「繧ッ繧サ繧ケ繝ゥ繝ウ繧ュ繝ウ繧ー

2025/04/16 UPDATE

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。